米国特許判例紹介:米国における共同侵害成立要件(第3回) - 特許・商標・著作権全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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米国特許判例紹介:米国における共同侵害成立要件(第3回)

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米国特許判例紹介:米国における共同侵害成立要件(第3回)

~成立要件は厳格化へ~

河野特許事務所 2011年4月11日 執筆者:弁理士 河野 英仁

   Akamai Technologies, Inc., et al.,
                     Plaintiff Appellant,
             v.
      Limelight Networks, Inc.,
                 Defendant-Cross Appellant.

(2)被告の行為

 原告及びLimelight(以下、被告という)は共にCDNサービスマーケットを運営し、競合関係にある。被告のサービスは、コンテンツプロバイダの埋め込みコンテンツを、CDNから配信している。顧客であるコンテンツプロバイダと被告との間の契約によれば、被告のCDNサービスを使用するために、コンテンツプロバイダは、いくつかのステップを実行しなければならない。

 

 最初に、コンテンツプロバイダは、被告のCDNから提供を希望する埋め込みオブジェクトを選択する。コンテンツプロバイダは、被告に指示に従い、選択されたオブジェクトのURLにタグ付けをしなければならない。被告はタグ付けされた埋め込みオブジェクトを、いくつかのまたは全てのホスティングサーバ上に複製する。埋め込みオブジェクトに対するユーザの要求に応じて、最適な被告のホスティングサーバへ導く処理を行う。

 

(3)訴訟の開始

 2006年6月23日原告は被告が3つの特許権を侵害するとして、マサチューセッツ州連邦地方裁判所に提訴した。争点となったのは703特許のクレーム19及び34である。これらのクレームは、埋め込みオブジェクトに対する要求が、コンテンツプロバイダのドメイン以外のドメインに転換されるよう、コンテンツプロバイダのウェブページにおいて埋め込みオブジェクトに対するタグ付けを要求すると共に、要求されたウェブページを提供する点を権利化している。

 

(4)クレーム19及び34の内容

 コンテンツ配信サービスと称するクレーム19[1]は以下のとおり。

19.コンテンツ配信サービスであり以下を含む:

コンテンツプロバイダのドメイン以外のドメインにより管理されるコンテンツサーバの広域ネットワークにわたって一組のページオブジェクトを複製し、:

コンテンツプロバイダドメインから通常提供される所定のページのために、ページオブジェクトの要求が、コンテンツプロバイダドメインの代わりに、前記ドメインに転換するよう、前記ページの埋め込みオブジェクトをタグ付けし、

コンテンツプロバイダドメインにて受信した前記所定のページへの要求に応答して、前記コンテンツプロバイダドメインから、前記所定のページを提供し、:

前記コンテンツプロバイダドメインからとする代わりに、前記ドメインにおける所定のコンテンツサーバから前記所定のページの少なくとも一つの埋め込みオブジェクトを提供する。

 

 コンテンツ配信方法と称するクレーム34[2]は以下のとおり。

34.コンテンツ配信方法であり、以下を含む;

コンテンツプロバイダドメイン以外の、ドメインにより管理されるコンテンツサーバのネットワークにわたって、一組のページオブジェクトを配信し、前記コンテンツサーバのネットワークは一連の領域に構成されており:

コンテンツプロバイダドメインから通常提供される所定のページのために、ページオブジェクトの要求が、コンテンツプロバイダドメインの代わりに、前記ドメインに転換するよう、前記ページの少なくともいくつかの埋め込みオブジェクトをタグ付けし、

前記ページの埋め込みオブジェクトに対するクライアントの要求に応えて、:

前記クライアントの要求を、前記要求及び現在のインターネットトラフィック状況を所定領域に特定する前記クライアント装置の位置機能として転換し、:

前記埋め込みオブジェクトをホストし、過剰とならない前記所定領域内で所定の一の前記コンテンツサーバのIPアドレスを、前記クライアントに戻す。

 

 下線を付したタグ付け処理は、顧客であるコンテンツプロバイダが実行していることから、被告がクレームの全てのステップを実施していないことについては当事者間で争いはない。そのため原告はクレーム19及び34に対する共同侵害を主張したが、地裁は被告の顧客に対する指示または管理がなかったとして特許権非侵害の判決をなした。原告はこれを不服としてCAFCへ控訴した。


[1] 19. A content delivery service, comprising:

replicating a set of page objects across a wide area network of content servers managed by a domain other than a content provider domain;

for a given page normally served from the content provider domain, tagging the embedded objects of the page so that requests for the page objects resolve to the domain instead of the content provider domain;

responsive to a request for the given page received at the content provider domain, serving the given page from the content provider domain; and

serving at least one embedded object of the given page from a given content server in the domain instead of from the content provider domain.

[2] 34. A content delivery method, comprising:

distributing a set of page objects across a network of content servers managed by a domain other than a content provider domain, wherein the network of content servers are organized into a set of regions;

for a given page normally served from the content provider domain, tagging at least some of the embedded objects of the page so that requests for the objects resolve to the domain instead of the content provider domain;

in response to a client request for an embedded object of the page:

resolving the client request as a function of a location of the client machine making the request and current Internet traffic conditions to identify a given region; and

returning to the client an IP address of a given one of the content servers within the given region that is likely to host the embedded object and that is not overloaded. なお、争点となった個所に下線を付した。

(第4回へ続く)

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