米国特許判例紹介:機械分野における明細書の記述要件(第2回) - 特許・商標・著作権全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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米国特許判例紹介:機械分野における明細書の記述要件(第2回)

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米国特許判例紹介:機械分野における明細書の記述要件(第2回)

~課題に対する解決手段が複数存在する場合の取り扱い~

河野特許事務所 2011年7月22日 執筆者:弁理士  河野 英仁

   Crown Packaging Technology, Inc., et al.,

                       Plaintiffs Appellants,

                v.

    Ball Metal Beverage Container Corp.,

                       Defendant- Appellee.

(ii)従来技術に対する第2の手段

 参考図3は826特許の缶端を示す断面図である。

参考図3 826特許の缶端を示す断面図

 従来は参考図1に示すように、缶底には符号Dで示すU字形状の強化ビードが設けられていた。しかしながらチャック5の圧力により、チャック5の突起部が強化ビードD内に入り込み、強化ビードDが損傷するおそれがあった。

 このことから、826特許ではチャック5の先端が強化ビードに突入することを防止すべく強化ビード25の幅を制限した。なお、強化ビード25の幅は、好ましくは「ビード幅1.5mm」とする点開示されている。強化ビード25幅を狭めることにより、参考図3に示すとおりチャック30が強化ビード25内に入り込まなくなる。

 

(2)訴訟の経緯

 Ball Metal(被告)は原告と同じく飲料水業者向けに缶端および缶体を販売するビジネスを行っている。原告は被告が特許を侵害するとしてオハイオ州連邦地裁に提訴した。

 争点となったクレームは826特許のクレーム13および14[1]、並びに、875特許のクレーム50および52である。以下では、826特許のクレーム13および14の一部を抜粋する。

クレーム13

金属缶端において、・・・

前記カバーフック23から内部および下方に伸びる壁24とを備え、・・・

前記中央パネル26に垂直な軸に対して30度から60度傾斜している。

クレーム14

・・・前記壁24に接続される環状補強ビード25をさらに含み、前記環状補強ビード25は前記壁24を前記中央パネル26につなぐことを特徴とするクレーム13の缶端。

 クレーム13は第1の手段であるチャック壁24の傾斜を権利化しており、クレーム14は第2の手段である強化ビード25について権利化している。

 地裁は、金属の使用を低減するには、チャック壁24の傾斜に加えて強化ビード25が必要であると判断した。その上で、地裁は、クレーム14は強化ビード25の位置について限定しておらず、チャック3による押さえが強化ビード25の内側または外側のいずれかで行われるところ、明細書には缶端の強化ビード25の外側でチャックを押さえる形態しか記載されておらず、サポートを欠くと判断した。地裁は、争点となったクレームは、明細書の記述要件違反により無効であると判断[2]した。

 原告はこれを不服としてCAFCへ控訴した。


[1] 826特許のクレーム13および14は以下のとおり。

13. A metal can end for use in packaging beverages under pressure and adapted to be joined to a can body by a seaming process so as to form a double seam therewith using a rotatable chuck comprising first and second circumferentially extending walls, said first and second chuck walls forming a juncture therebetween, said can end comprising;

a peripheral cover hook, said peripheral cover hook comprising a seaming panel adapted to be formed into a portion of said double seam during said seaming operation;

a central panel;

a wall extending inwardly and downwardly from said cover hook, a first portion of said wall extending from said cover hook to a first point on said wall, said first wall portion adapted to be deformed during said seaming operation so as to be bent upwardly around said juncture of said chuck walls at said first point on said wall, a second portion of said wall extending from said first point to a second point forming a lowermost end of said wall, a line extending between said first and second points being inclined to an axis perpendicular to said central panel at an angle of between 30° and 60°.

14. The end according to claim 13, further comprising an annular reinforcing bead connected to said wall at said second point, said annular reinforcing bead connecting said wall to said central panel.

[2] Crown Packaging Tech., Inc. v. Ball Metal Beverage Container Corp., 662 F.Supp. 2d 939 (S.D. Ohio 2009)

(第3回へ続く)

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