「金がないから」は、借りる理由にならない - 財務・資金調達全般 - 専門家プロファイル

金 成一
有限会社エスワン経営研究所 コンサルティング会社 代表取締役
飲食店コンサルタント

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対象:財務・資金調達

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「金がないから」は、借りる理由にならない

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あけましておめでとうございます。

新年を迎え、3月決算が近付くと、私のところにも都や区等が実施している

制度融資や銀行などの金融機関からの借り入れの相談が増えてきます。

その際は借入理由の提示が求められます。記入欄に「お金がないから…」、

「資金不足のため…」などと書かれてある書類を目にすることがありますが、

これでは借入の理由にはなりません。

お金が足りないからお金を借りるのは当たり前なのですが、

何でお金がないのかを分析しておくことが必要です。

 

借入の種類は一般的に「設備資金」と「運転資金」に分類されます。


「設備資金」は、事業拡大のための投資に必要な資金で、

一般的には回収まで中長期にわたるものをいいます。

車両の購入や内装など、固定資産を取得する際の資金と考えてもよいでしょう。

新規開業資金をよく「開業資金」と呼びますが、分類的には設備資金的な性格になります。

「運転資金」は、お金の投資と回収のタイムラグによって必要となる資金のことです。

資金投下から資金回収までの期間が長引くことにより必要になる資金のことをいいます。

商品を現金で仕入れ掛で販売すると一定期間お金がなくなります。

しかしその間も企業存続のためにはお金が必要です。

また、支払条件や回収条件に変更がなくても、事業規模が大きくなるにしたがって

運転資金も多く必要になります。その必要なお金のことを運転資金といいます。

よく赤字が続いたことにより資金不足に陥り「運転資金を借りたい」との相談受けますが、

これには注意が必要です。

資金とは人の体でたとえるならば血液です。

血液がどこから流れ出しているのか、もしくは体のどこで滞って血流が悪くなっているのか、

これが分からないといくら輸血をしても症状は改善されません。

傷口から出血が起きているなら止血を施すべきですし、

体のどこかで血流が悪くなっているなら血栓を取り除くといった治療になります。

状況によって治療方法はまったく違ってくる訳です。


さて、企業の資金に話を戻しましょう。

企業が赤字体質なのか、もしくは資金の投下から回収までの

期間が長くなっているのかを見極める必要があります。

運転資金を借入れる場合、技術的な問題で製造日数が長引いて

資金回収までの期間が延びたのか、または取引先の条件が厳しくて

売掛金の回収に時間がかかり過ぎなのか、

もしくは仕入先の支払条件が厳しくて仕入代金の支払い期間が短くなったのか、

はたまた事業規模の急激な変化のため運転資金が必要になったのか――。

理由を明確にした上で資金の借入を行わなくてはなりません。

理由を明確にした上で、それぞれの場合における解決策を検討し、

その解決のために必要な借入金額を導き出していかなくてはなりません。

もしあなたの企業が上記以外の理由で資金不足に陥っているとしたら、

それは運転資金不足ではなく、赤字体質により慢性的に資金流出が起きていることになります。

その場合、運転資金を借入れてその場を凌ぐのではなく、何処から資金が流出ているのかを診断し、

その症状を克服しなければなりません。

たとえば人件費のかかり過ぎにより資金不足を起こしているのであれば、

人員削減に対応できるシステムの導入を検討し、導入に必要な設備資金の借入を検討していくべきでしょう。

いくらお金を借りてもただ借りるだけでは慢性的な「資金不足病」は改善されず、

支払利息等の増大による利益の圧迫で、経営は徐々に厳しくなっていきます。

健康管理も企業経営も、自分を正確に診直すことから始めなくてはならないのです。

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