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米国特許判例紹介:KSR 最高裁判決後の自明性判断基準(第17回)
~2010KSR ガイドライン~
河野特許事務所 2011年2月4日 執筆者:弁理士 河野 英仁
6.その他の基準:証拠の考慮基準
(1)審査官は、自明か否かを再評価する場合、出願人が提出した反論証拠・二次的考察を考慮しなければならない。先行技術の組み合わせにより自明とされるクレームの場合、出願人は、発明の効果が予期できないことを示す証拠を提出することができる。
(2)Hearing Components事件[1]
(i)判決骨子:適時に提示された証拠は考慮される。商業的成功に関する証拠は、当該製品の成功とクレームされた発明との間の結びつき(nexus)が明確に示される場合に採用される。
(ii)背景
Hearing Component(以下、原告という)は、U.S. Patent No. 4,880,076(以下、076特許という)を所有している。076特許は、補聴器の一部分を覆い、また外耳道(耳の穴の入り口から鼓膜に達するS字状の管)に挿入される使い捨て保護カバーに関する。カバーは必要なときにユーザにより容易に交換することができる。参考図26は076特許の図4である。耳栓41は、弾性のあるリカバリーフォーム43内に挿入される。
参考図26 076特許 参考図27 Carlisle 参考図28 Killion
(iii)争点
地裁において、被告は、原告特許はU.S. Patent No. 2,325,590(以下、Carlisleという)及びU.S. Patent No. 4,677,679(以下、Killion)の組み合わせにより自明であると主張した。参考図27はCarlisleの図3、参考図28はKillionの図1である。
Carlisleは補聴器が挿入される使い捨てカバーを開示している。またKillionはスローリカバリーフォーム8を開示している。CarlisleにKillionのスローリカバリーフォーム8を組み合わせて、本発明が自明といえるか否かが問題となった。
(iv)CAFCの判断
CAFCは、二次的考察に係る証拠をも考慮して自明でないと判断した。
CAFCは、Carlisleは本発明と異なり、外耳道に挿入されるものではなく、耳の外部に挿入されるものであり、また、Killionはスローリカバリーフォーム8を開示しているものの、補聴器ではなく、プロ向けの医療器具であることから、自明ではないと判断した。
原告は、本発明に係る使い捨てカバーのライセンス費が、特許権消滅と共に半額となったことを示す証拠を提出した。CAFCはこの証拠を考慮し、製品の商業的成功と特許との間の結びつき(Nexus)を認め、非自明と判断した。
(v)まとめ
二次的考察に関する証拠は、規則1.131(先発明についての宣誓供述書又は宣言書)または1.132(拒絶又は異論を反駁する宣誓供述書又は宣言書)における宣誓書等で、審査官に提出することができる。審査官は、当該証拠を考慮するが、全ての証拠が考慮されるわけではなく、本事件の如く「クレームされた発明と提供された証拠との間の結びつき」により証拠の重み付けを決定する(MPEP § 2145)。
[1] Hearing Components, Inc. v. Shure Inc., 600 F.3d 1357 (Fed. Cir. 2010)
(第18回へ続く)
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