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米国特許判例紹介:KSR最高裁判決後の自明性判断基準(第8回)

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米国特許判例紹介:KSR最高裁判決後の自明性判断基準(第8回)
~2010KSRガイドライン~

河野特許事務所 2011年1月4日 執筆者:弁理士  河野 英仁

 

参考図12 ロッド18及びスクリュー21の取り付け状態を示す説明図
 ロッド18に連結される複数のスクリュー21は参考図12に示す如く骨に埋め込まれる。スクリュー21を骨に埋め込んだ後ナット25,27で固定台座23を締め付ける。ここで、注目すべきは、参考図11に示す如く、Punoはスクリュー21を押し込む圧縮部材を備えず、またスクリューヘッド30と固定台座23とが離れるよう設計されている。
 このような構成により、骨が器具に融合する前の段階において「衝撃吸収効果」を生じさせ、骨への負荷がかかることを防止するものである。
 これに対し、Andersonは圧縮部材を開示している。参考図13はAndersonに開示された固定用留め具の断面を示す断面図である。

参考図13 Andersonに開示された固定用留め具の断面を示す断面図
 Andersonが開示する固定用留め具は、腕または脚等の長い骨を固定する為の装置である。スクリュー19の締め付けにより、ブロック20及びロッド8が下方向に移動する。ロッド8は圧縮部材15,15’を介してボール14及びボルトシャンク13を下側へ押し込む。スクリュー19の締め付けにより、ボール14は圧縮部材15,15’により強固に固定される。被告はAndersonに開示された圧縮部材15,15’をPunoのスクリューヘッド30上に組み合わせるのは自明であると主張した。
 CAFCは、PunoはAndersonの圧縮部材を組み込むことを阻害しており、自明でないと判断した。KSR最高裁判決においては、
公知の方法に係るありふれた構成要件の組み合わせは、予見できない効果を奏さない限り、自明である。
と判示された。その上でCAFCは、
先行技術が組み合わせのための阻害要因となる場合、自明でない。」と述べた。
 複数の先行技術を組み合わせてクレームに係る発明に想到するためには、当業者が、これら先行技術を組み合わせるための理由付けが必要となる。この理由付けが弱い場合、阻害要因が発生しているといえ自明と結論づけることはできない。
 本件において、Andersonの圧縮部材をPunoの器具へ追加することは、Punoの器具が目的とする「衝撃吸収効果」を低減または除去することになる。つまり、圧縮部材を仮に採用した場合、器具を介して骨へ直接衝撃が加わり、器具と骨との融合に失敗する可能性がある。以上のことからCAFCは組み合わせのための阻害要因が存在することから、自明でないと判断した。
 続いて、CAFCはGraham最高裁判決において判示された二次的考察について検討した。二次的考察とは、自明性の判断において副次的に用いられるものであり、以下の事項を検討する。
商業的成功,長期間未解決であった必要性, 他人の失敗,模倣等
 CAFCは本事件において、「被告の失敗」及び「模倣」を認定し、本件特許の非自明性をより確固たるものとした。被告は678特許の出願前にスクリューを設計していた。被告はスクリューヘッドに対する圧力を付与するために、圧縮部材ではなくロッドを用いていた。ロッドでは強固にスクリューヘッドを保持することができないため、被告の開発チームは他の解決方法を模索していた。
 そして678特許が登録された後、被告の開発チームは突如方向性を変え、ロッドとスクリューヘッドとの間に圧縮部材を挿入する設計を採用した。そしてこの製品がイ号製品である「Vertex(登録商標)」となったのである。CAFCは以上のことから、自明性の判断にあたり、被告の失敗及び被告による模倣が存在したと認定した。
 CAFCは以上述べたとおり、先行技術の組み合わせに関する阻害要因、他人の失敗及び模倣行為等を総合的に勘案し、クレームは自明でないと判断した。

(v)まとめ

 本事件の如く、先行技術の記載により複数の引用文献を組み合わせるための理由付けが弱体化される場合、非自明との推定が強化される。さらには、他人の失敗及び他人の模倣という二次的考察により非自明との推定がより強化される。組み合わせに阻害要因があるとの主張は有用であるといえる。 

(第9回へ続く)

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