- 小林 良
- 一級建築士事務所 DESIGN-SPEC 代表
- 東京都
- 建築家
対象:住宅設計・構造
『家は「道具」だ』というタイトルでありながら、なかなかそのような話にならないがご理解いただきたい。まず、前置きとして、「消費主義感覚に凝り固まった意識をほぐす」必要があるのだ。
さて、そんなわけで前回の続きである。
「家づくりは難しい。」
なぜか?一言で言えば、
「家を考える時点では、家を決定づける要因があまりにも乏しいから」である。
つまり、これからその家で生活していくであろう方達のイメージが、あまりにも乏しいのである。
「明るく開放的なリビングで」
「自然材料を使用して」
「高気密・高断熱は絶対条件です」
などなど、要望として出てくることが、どこかのメーカーや雑誌で推薦しているようなことばかりである。
しかも、悲しいことに、「それが本当にいいのかどうか」の判断を、自分の感性で判断することができない。
結局は、メーカーや雑誌の評価や口コミを信じて、それが「あたかも自分の意見であるかのように錯覚して」
判断しているのである。
さらに、ここにはもう一つ、大きな問題が隠されている。
それは、メーカーや雑誌の評価や口コミなどの「情報」を収集して、自分が知識を得たと「勘違い」して、あたかも専門家であるかのように、それらの有用・無用を判断していることである。
「自分の家なんだから、自分が有用・無用を取捨選択して、何が悪い」
という声が聞こえそうだが、それにはこう答えたい。
「コインの裏と表、どっちも見せたい。でもコインは一枚しかない。あなたならどうしますか?」
この問いに、すんなり答えられるようであれば、何も言うことはない。思う存分、ご自身の取捨選択を設計者や施工者に伝えていただきたい。きっとすばらしい空間ができるはずである。
しかし、この問いに躊躇するようであれば、自分で判断して(いると錯覚して)取捨選択するのは、やめた方がいい。
(4)につづく。
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