中国特許判例紹介:中国における方法発明の解釈(第2回) - 特許 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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中国特許判例紹介:中国における方法発明の解釈(第2回)

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中国特許判例紹介:中国における方法発明の解釈 (第2回)
~方法クレームの権利範囲は記載した各ステップの順序に限定されるか~

OBE工業有限公司(ドイツ)
再審申請人(一審原告、二審被上訴人)
v.
浙江康華眼鏡有限公司(中国)
被再審申請人(一審被告、二審上訴人)


 
河野特許事務所 2010年11月2日 執筆者:弁理士  河野 英仁

 

 参考図3は眼鏡のつる部分を示す説明図*4である。本発明に係るバネヒンジは眼鏡のつる(耳にかける部分)の基部の内部に実装される部品である。



参考図3 眼鏡のつる部分を示す説明図


 バネヒンジはサイズの小さな数多くの部品から構成されるため、組立、部品間のアライメントが繁雑であり、また各工程間での部品の運搬も面倒であるという問題があった。

 本発明は金属帯481に複数のヒンジ部材11を連接させた状態で各工程を実施することにより、アライメントが不要であり、容易に組立、運搬できるようにしたものである。

 参考図1を用いて製造工程を説明する。
ステップI:チタン等の金属帯481を準備する。ヒンジ部材11外形にほぼ一致する区域(粗ハッチング部分)を切断する。当該工程では、凸肩9の基本形状と、当該凸肩9に連接し、後にヒンジ孔15が形成される領域497が生じる。なお、ヒンジ部材11は依然として金属帯481に連接されている。
ステップII:二つの半円形のエンボス加工工具を用いて、凸肩9に所望の丸みを与える。
ステップIII:二つの隣接する凸肩9,9間にある金属帯領域(細ハッチング部分)を、押し抜き工具を用いて押し抜く。
ステップIV:領域497において押し抜きによりヒンジ孔15を形成する。
ステップV:押し抜き工具を用いて、ヒンジ孔15上側領域(細ハッチング部分)を押し抜き、ヒンジ部材11を金属帯481から切り離す。

(2)イ号方法
 浙江康華眼鏡有限公司(以下、被告という)も同様にヒンジ部材を製造している。問題となった製造方法(以下、イ号方法という)は以下のとおりである。
ステップ1:金属帯を提供し、
ステップ2:人手で金属带材を押し抜き機に送り、ヒンジ部材を押し抜いて切り離し、
ステップ3:人手でペンチを用いてヒンジ部材前部を挟み,鍛圧機を用いてヒンジ部材後部を丸く加工し、
ステップ4: 人手でペンチを用いて、ヒンジ部材前部を挟み,ヒンジ部材を、打孔機に挿入し、孔を開ける。

(3)北京市第一中級人民法院への提訴
 原告は2002年6月24日、被告のイ号方法が123特許の請求項1を侵害するとして北京市第一中級人民法院へ提訴した。原告は被告に対し、侵害行為の即時停止、公開方式による謝罪、製造に供した金具・工具の破棄、損害賠償請求415万元、原告が負担した合理的支出(弁護士費用、出張費、調査費用等)の支払いを求めた。

 被告は2004年8月10日対抗手段として復審委員会へ無効宣告請求を行った*5。被告は123特許の請求項1は新規性及び創造性を欠如すると主張した。復審委員会は、2005年4月11日、被告の主張を退け特許を維持する決定をなした*6

 請求項1に係る方法と、イ号方法とにおける製造工程を比較すれば以下のとおりである。


ステップ 請求項1 イ号方法
1 ヒンジ部材(11)を形成するのに
用いる金属帯(481)を提供し、
金属帯を提供し、
2 ヒンジ部材(11)外形に
ほぼ一致する区域を切断し、
人手で金属带材を押し抜き機に送り、
ヒンジ部材を押し抜いて切り離し、
3 ヒンジ部材(11)の凸肩(9)を
形成すべく押し抜きにより
円形部分を形成し、
人手でペンチを用いてヒンジ部材
前部を挟み,鍛圧機を用いて
ヒンジ部材後部を丸く加工し、
4 ヒンジ部材(11)のヒンジ孔(15)
を開ける。
人手でペンチを用いて、ヒンジ部材
前部を挟み,ヒンジ部材を、
打孔機に挿入し、孔を開ける。



 北京市第一中級人民法院は、請求項1の方法とイ号方法とは均等*7であり、イ号方法は、請求項1に係る発明の技術的範囲に属すると判断した。請求項1に係る発明は、金属帯の所定領域を切断した後に、押し抜き、孔開けを行う。これに対し、イ号方法はヒンジ部材を押し抜き、ヒンジ部材を金属帯から切り離し、孔開けを行う。すなわち、切断と押し抜きの順序が前後相違する。北京市第一中級人民法院は、両者の加工方法に実質的な相違はなく順序を変えたところで新たな効果を奏さないため、均等であると判断した。これに対し、被告は北京市高級人民法院へ上訴した。

(第3回へ続く)

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