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対象:特許・商標・著作権
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寄与侵害の適用要件
~侵害誘発に対する主体的要件とマーキングトロールの出現~ (第4回)
SEB S.A., et al.,
Plaintiff/ Counterclaim Defendant-Cross Appellant,
v.
Montgomery Ward & Co., Inc., et al.,
Defendant/ Counterclaimant-Appellant.
河野特許事務所 2010年7月19日 執筆者:弁理士 河野 英仁
3.CAFCでの争点
被告が現実に係争特許を知っていた事が必要とされるか否か?
米国特許法第271条(b)の規定は、「積極的に特許侵害を誘発した者は、侵害者としての責めを負う」と規定するのみで、具体的な適用要件は規定していない。
CAFC大法廷は2006年DSU事件において、主体的要件として、被疑侵害者が、自身の行為により特許侵害を誘発することを「知っていた」または「知っていたはず」であることが必要とされると判示した。ただし、DSU事件ではこれ以上のことは何ら議論されなかった。
P社は、寄与侵害が成立するためには、312特許を「知っていた」ことが必要とされるところ、自身は312特許を現実に知らなかったから、DSU事件の判例に照らし、寄与侵害が成立するとした地裁の判断は誤りであると主張した。
侵害者が現実に係争特許を知っていたことの証拠を特許権者が提示していない場合に、寄与侵害が成立するか否かが争点となった。
4.CAFCの判断
「意図的な無関心」は「現実に特許を認識していた」事の一形態である。
CAFCは、被告が特許を現実に知っていたという直接の証拠を、原告が有さない場合でも、被告の「意図的な無関心(deliberate indifference)」を証明できた場合、寄与侵害が成立すると判示した。
CAFCは最高裁が民事事件において用いる主観的基準「意図的な無関心」*6は、「現実に特許を認識していた」事の一形態であると判示した。つまり、被疑侵害者が意図的に係争特許に対して無関心を装ったと認定された場合、結局それは、現実に当該特許を認識していたものと判断され寄与侵害が成立する。被疑侵害者はこの「意図的な無関心」に係る認定を覆すためには、明らかなリスクでさえ本当に気付かなかった事を証明する必要がある。
本事件においては、P社は原告製品を購入し、模造した上でM社等にFOBにより提供した。またP社は米国弁護士に特許調査を依頼したが、その際イ号製品を製造する際に原告製品を模造した事実を伝えなかった。これでは米国弁護士が312特許の調査漏れを起こすこととなる。さらに、P社の代表Sham氏は29ものUS特許を取得しており、米国特許制度には精通しており、またSham氏と原告との間には、P社の特許に係る蒸し器についてビジネス上の取引もあった。
CAFCは、以上の事実を総合的に勘案し、P社は意図的に312特許に対する侵害のリスクについて無関心を装ったと判断した。原告は被告の意図的な無関心を証明し、一方被告は、明らかなリスクさえ本当に気付かなかった事を立証できなかったことから、被告が312特許を知っていた事実が存在しなくとも、CAFCは被告の寄与侵害を認めた。
(第5回へ続く)
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