執行猶予率と起訴猶予率 - 書類作成・申請 - 専門家プロファイル

今林 浩一郎
今林国際法務行政書士事務所 代表者
東京都
行政書士

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執行猶予率と起訴猶予率

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平成20年度の検察統計年報によると 、全犯 罪における起訴率が31 .8%、起訴猶予率が6 0.2%、その他(嫌 疑不十分・嫌疑なし・ 罪とならず)が8%です 。次に、執行猶予率は 59.3%です。そこ で、検察庁に送検又は送致された被疑者の 0.318×0.59 3=0.188574 (18.86%)が実 刑になる計算です(逆に81.14%が実刑を受けない訳です)。ここで注意しなければならないのは、検察庁に送検又は送致され た被疑者の92%は前科又は前歴ありとされ、犯歴として記録に残ることです(起訴猶予は前科ではありませんが、前歴としてカウントされます )。すなわち、定義上、不起訴処分理由の中で「嫌疑不十分」「嫌疑なし」「罪とならず」は、公判維持に必要な証拠がない場合で起訴が物理的に不可能な場合ですが、「起訴猶予」は公判維持に必要な証拠は存在するが検察官が被疑者の情状を考慮し、訴追裁量権により起訴を見送る場合です。定義上は以上の通りですが、実際の運用上は、公判維持に必要な証拠が存在しなくても、不起訴処分理由を「起訴猶予」とするケースが相当に存在するようです。

ところで、日本の第一審の有罪率は99.9%(無罪は1000件に1件)であり、被疑者・被告人が実刑を免れて刑務所送りにならないためには、無罪よりも起訴猶予又は執行猶予が刑事弁護の現実的な目標となります。仮に被疑者が否認し続ければ、検察官が証拠不十分で起訴猶予にしない限り、一度起訴された場合、裁判官は被告人を実刑にする可能性が高くなります。本当に身に覚えがなければ被疑者が犯行を否認するのは当然ですが、一度起訴された場合、裁判所は被告人の否認を改悛の情がない証拠と解する可能性が高いのです(痴漢冤罪事件でもこの点が問題となっています)。これは日本の司法が法曹一元制度を採っており、弁護士も検察官も裁判官も同じ司法試験に合格し同じ司法研修所で研修を受けているので、裁判官は特に同じ法曹官僚である検察官を信頼するからです。そこで、実刑にならないために被疑者はやってもいない事件を自白して起訴猶予又は執行猶予を勝ち取ろうとする傾向が生じ、これが冤罪を生み出す温床となります。

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