住宅断熱基礎講座/エアサイクルとは何か? - 住宅設計・構造設計 - 専門家プロファイル

野平 史彦
株式会社野平都市建築研究所 代表取締役
千葉県
建築家
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住宅断熱基礎講座/エアサイクルとは何か?

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住宅断熱基礎講座 04.高気密・高断熱は様々な工法へと向かう
04-3:エアサイクルとは何か?
 
 北海道の高気密・高断熱がグラスウール内断熱で如何に内部結露をなくすかという問題に真っ正面から取り組んでいた時に、本州以西では内部結露の問題は内断熱そのものにあると考え、日本の家屋が伝統的に培ってきた構法を活かすアイデアを考えていました。

 木造在来工法では床下と壁、小屋裏が空間として繋がっており、エアサイクルの考えの基本はこの繋がった空間に積極的に空気を循環させることで内部結露を防ごうということにあります。それも設備に頼らずに建築的手法で自然エネルギーを巧く活用しようというものです。

 従って、軸組内を空気の循環層として空洞にしておく必要がるので断熱は必然的に外断熱へ向かうことになります。本州以西での高気密・高断熱に外断熱傾向が強いのはこのエアサイクルの流れがあるからだとも言えるでしょう。

 エアサイクル工法はエアサイクル産業のPAC(パッシブエアサイクル)にはじまり、その後、フクビエアサイクル(エアサイクルホームシステム)とヘルシーハウス(ヘルシーハウス協会)等が開発されました。


<エアサイクルの原理>

 エアサイクルの原理は(PACの場合)、まず木造軸組の外側に硬質発泡ウレタンのボード状の断熱材を外張りします。外壁仕上材とこの断熱材の間に隙間を開けて通気層としますが、この通気層はエアサイクル層と呼ばれ高気密・高断熱の通気層とはその役割がちょっと違っています。

 まず、PAC住宅では開閉できる床下換気口と小屋換気口(共にエアサイクラーと呼ばれる)が設けられ、夏にはこれらが開けられ、冬は閉じられます。冬場は日中に日射面の外壁と屋根が暖められるとエアサイクル層で上昇気流が起こり、床下の空気を引き上げることで北側の空気が床下に引っ張られることになります。

 つまり、こうして壁体内空洞と小屋裏、床下空間に空気を循環させることにより北側の壁内の温度を高めて全体的に温度差をなくすことにより内部結露を防止ししようというものです。

 しかし、夜になるとこれまで日射を受けていた壁面も冷えて下降気流が起きてしまい、逆に結露の危険性が高まることになります。そのためPACでは逆止弁付きのダンパーが下部に取り付けられています。こうしてエアサイクル層の中で静止した空気はそれ自体の断熱効果を発揮し室内の温度低下を防ぎます。

 夏のエアサイクルの原理は、冬とは逆にエアサイクラーが開放され、床下から取り入れられた外気を床下の地熱冷気で冷却し、その冷気を壁体内空洞を通して小屋裏から排出します。冷気で家全体を包み込むことで涼しさを得ようというものです。この涼房効果は単なる高気密・高断熱では範疇外のことであり、本州でエアサイクルが受け入れられやすいひとつの利点であると言えます。