内部統制の文書化をめぐる大きな誤解(3) - 会計・経理全般 - 専門家プロファイル

原 幹
株式会社クレタ・アソシエイツ 
東京都
公認会計士

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対象:会計・経理

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内部統制の文書化をめぐる大きな誤解(3)

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内部統制 内部統制ブームって結局なんだったの

「まず業務記述書から書き始める」の誤解



前回は、内部統制導入にめぐる誤解として
・3点セットの文書化が強制されている(そんなことはない)
・とにかく文書化からはじめればよい(そんなことはない)
について書かせていただいた。

今回は「まず文書化すべき文書はどれなのか」に関した誤解、またはそれをきっかけとした内部統制構築の方向性についてお伝えしたい。

内部統制関連文書として代表的な3つの文書、すなわち
・業務フロー
・業務記述書
・リスクコントロールマトリクス(RCM)
があある。どれから作らなければいけない、というルールは特にないが、読者の皆さんはどの文書から着手しただろうか?

「内部統制導入以前にも、業務マニュアルなどの社内文書があるためこれらを流用すればいい。マニュアルも更新できて一石二鳥だ。」

そう考えて「業務記述書」の作成から着手していなかっただろうか?

「業務記述書」から着手することそれ自体は間違いではない。しかし、内部統制構築の作業全体からみると遠回りなアプローチである。

「業務記述書」を作るときには、とかく「業務の現状」についてそのまま表現する結果になりがちだ。特に既存文書を流用した場合はその記述に引きずられる。これは業務記述書が主に文章により表現されることや、現在行われている仕事の方法をまずは表現しなければならないという要請などによる、仕方ない一面といえる。

「業務記述書」から着手しはじめると、往々にして現状の業務を文書化してそれで終わってしまうケースに陥りがちだ。(または、文書化をがんばりすぎて息切れになる)

「内部統制の構築=現状をそのまま文書化すること」で終わりだろうか?

しかも、内部統制には本来「業務の有効性・効率性」を高めるという大事な目的があったはず。一方では会社の「業務の現状」には、多くの課題や改善ポイントを抱えた状態で運用されている。せっかく会社の内部統制を構築する機会なのに、現状の業務をそのまま表現するだけでは少しもったいなくはないだろうか?

「業務フロー」から書き始める理由



ではどうすればよいか?

ここでは現状をそのまま表現するだけのアプローチから少し背伸びして、業務の改善ポイントを見つけるために
「現状の業務フローから書き始める」
「現状の業務フローにもとづいて業務の改善点を見つける」
「改善された業務フローにもとづいて業務記述書を作成する」
というアプローチをすすめたい。

内部統制の構築にあたっては、業務の一部は何らかの形で変更を迫られる。「業務記述書」についてもまた同様だ。せっかく書いた大量の文書をあとから全面的に手直ししないですむようにして「手戻り」を防ぎ、かつなるべく手間をかけないように進めるのが上記のアプローチである。

業務フローから書き始めることのメリットは大きく3つある。
「業務の全体像をイメージすることができる」
「業務の役割分担を再確認することができる」
「業務における課題識別の出発点に使える」

「業務フロー」は視覚的に表現されるので、業務の全体像をつかみやすいのが特徴である。これをもとに、現状の業務におけるボトルネックや改善ポイントを見つけ、より効率的な業務を実現する「改善された業務フロー」を作成してみよう。(専用ツールで表現することにこだわる必要はない。まず手描きで作成し、フローが完成したらツールで更新するのがよい)

「改善された業務フロー」にもとづいて「業務記述書」に着手すれば、いきなり「業務記述書」を作成してからあとで更新するより近道になる。

もっとも、せっかく表現された「改善された業務フロー」が実際に行われていないのではまったく意味がない。上記のアプローチは、いわゆるBPR(業務プロセス改革)とあわせて内部統制構築を進める方法なので、
「初年度に突貫工事で文書化をすすめてしまったが品質面で疑問が・・」
と考えられる読者の方は、上記のアプローチをもとに再度自社の業務フローを見直し、定着させるきっかけにしてみてはいかがだろうか。

内部統制構築を
「やらされているだけの面倒な作業」
ではなく
「業務を改善する絶好の機会」
と位置づけてみると、味気ない日々の作業も少し違った見え方になろうかと。

文書化における誤解はまだまだある。次回は「業務において識別すべきリスク」にまつわる誤解についてお伝えしたい。(つづく)