足利事件、菅家さん釈放 その1(1) - 刑事事件・犯罪全般 - 専門家プロファイル

羽柴 駿
番町法律事務所 
東京都
弁護士

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対象:刑事事件・犯罪

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閲覧数順 2016年12月07日更新

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足利事件、菅家さん釈放 その1(1)

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連載「新・刑事法廷」

異例の釈放



6月4日、足利事件で無期懲役の刑が確定して受刑中の菅家利和さんが釈放されました。5日のテレビに出演した菅家さんは、17年半前の逮捕の時のニュース映像と比べると、すっかり老けてしまっているのが痛々しい限りです。

 無実を訴えて再審請求中の菅家さんですが、まだ再審開始決定すら出ていない段階で、検察官が刑の執行停止を決定して釈放したのですから、まさに異例です。裁判所がDNA鑑定をやり直した結果、犯人の体液のDNAと菅家さんのそれとが一致しない、つまり菅家さんは犯人ではないということが証明されたため、再審が開始されて無罪判決が下されることが確定的となり、それを検察庁も認めざるをえなくなったのです。

なぜえん罪が生まれたのか



 菅家さんは、身に覚えのない罪で逮捕され、否認したところ、取調べ刑事らから、証拠はあがっているんだ、お前が犯人なんだ、早くしゃべって(自白して)楽になれ、などと厳しく迫られ、髪の毛を引っ張られたり足を蹴飛ばされたりして、耐えきれずに嘘の自白をしてしまったというのです。

 菅家さんは起訴されましたが、裁判の途中から自分は犯人ではないと否認を始めました。しかし裁判官は自白調書やDNA鑑定などを元に菅家さんを犯人と断定し、一審二審とも無期懲役の有罪判決を下したのです。

 菅家さんはあきらめず最高裁へ上告しましたが、その上告も棄却され、無期懲役が確定し、刑務所に受刑囚として収容されてきたのです。

 科学的証拠として信頼されているDNA鑑定が、当時はおよそ800人に1人の割合で同じ型の人がいる程度の精度だったそうです。足利市だけでも人口10万人を超える都市ですし、周囲の市町村を合わせれば近隣には少なくとも数十万人が住んでいるのですから、DNAが同じ型の人物が少なくとも数百人はいた勘定になります。そのような鑑定に安易に乗っかった捜査・起訴・判決が今回の事態を招いてしまったのです。

 菅家さんは、当時の警察官・検察官を許さないと怒りの声を上げています。私から見ると、そこにもう一つ、菅家さんの無実の訴えに耳を傾けなかった裁判官も加えられるべきです。

 また逮捕当時は「DNA鑑定が決め手で犯人逮捕」と写真入り実名で書き立てたマスメディアが、こうなると態度を一変し、なんて酷い目に遭ったんだと菅家さんを悲劇のヒーロー扱いしています。逮捕イコール有罪と決めつける報道姿勢を自ら反省するのが先でしょう。
(次回へ続く)