- 羽柴 駿
- 番町法律事務所
- 東京都
- 弁護士
対象:刑事事件・犯罪
- 羽柴 駿
- (弁護士)
- 羽柴 駿
- (弁護士)
いまさら戻らない17年半
菅家さんの両親は、息子が凶悪犯人であるという濡れ衣を着せられたまま亡くなっています。菅家さん自身、今後の刑事補償、国家賠償で幾ら金銭の補償をされても、身柄を拘束された17年半は今さら戻ってこないのです。このように、えん罪は取り返しのつかない悲劇を生みます。
私から見ると、菅家さんのような立場に置かれた場合、えん罪を晴らすことが出来ずに誤った有罪判決を受けることは、現在の日本の刑事司法制度の下では決して例外的なことではありません。菅家さんの場合は、「幸いにも」17年半で済みましたが、えん罪に問われて今でも服役している人は他にも間違いなくいるでしょう。
えん罪で死刑?
さらに、恐ろしいことですが、これまでの日本でえん罪で死刑判決を受け、実際に処刑されてしまった人が一人もいなかったと考える根拠は何もありません。
しばらく前のことですが、免田事件など死刑が確定した事件が3件立て続けに再審で無罪となったことがありました。このような事実も上記のような考えを裏付けていると言えるでしょう。
そうだからこそ私たちは、今回の菅家さんの事件を一回限りの例外的なえん罪と考えるのではなく、えん罪を生んだ原因の検証と刑事司法制度の徹底的な改革が必要であることを真剣に認識する必要があります。このような悲劇を繰り返さないために。
次回はその点についての私の考えをお話します。