住宅ローン減税大幅拡充、本当に使える制度? - 資産運用・管理 - 専門家プロファイル

釜口 博
BYSプランニング ファイナンシャルプランナー
ファイナンシャルプランナー

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対象:お金と資産の運用

柴垣 和哉
(ファイナンシャルプランナー)

閲覧数順 2024年04月19日更新

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住宅ローン減税大幅拡充、本当に使える制度?

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知らないと損するかも…のお話し
ファイナンシャル・プランナーが天職! BYSプランニングの釜口です。

今回のコラムは住宅ローン減税の大幅拡充が本当に使える制度かどうか。
具体的に検証していきたいと思います。

ローンで家を買った人の所得税などを安くする住宅ローン減税が最大500万円(長期優良住宅の場合600万円)に拡充されました。

ところがローン残高や所得によっては、政府・与党の掛け声ほど、メリットを感じられないケースがあります。

今回はより多くの人が利用するとみられる一般住宅の500万円減税のケースを取り上げて検証していきたいと思います。

税制改革前のH20年までの住宅購入では、最大減税額は160万円。
税制改革後の減税額と10年で340万円、年間で34万円の差がありますから、政府・与党が「大幅拡充」と位置づけるのも理解できます。

しかし、これは5000万円以上の住宅ローン残高があることが前提の話しです。
しかも500万円という最大の恩恵を受けようと思えば、10年間に渡って5000万円以上の残高を有していなければいけません。

減税をフルに受けようとすれば、3%で35年ローン金利の元利均等返済で借りた場合、6500万円ほどのローンを組んでいなければいけません。
頭金を2割ほどと計算すれば、約8000万円の物件を購入した方であれば、今回改定後の住宅ローン減税の恩恵をフルに受けることができるわけです。


さらに、住宅ローン減税は税額控除(支払う税額を控除)ですから、減税額に見合うだけの税金を払っていなければそもそも意味がないのです。

毎年50万円の減税を受けるのに必要になる年収は、お子さん2名のご家族であれば、1000万円程度になります。

8000万円以上の物件を購入された年収1000万円以上の人しか、500万円という最大減税の恩恵は受けられないのです。

では上記の購入額とご年収以下の方は、実際はどれだけの減税額になるのかを試算してみました。

新築住宅購入者の住宅ローンの平均利用額は約3200万円(不動産流通経営協会の調べ)
男性サラリーマンの平均年収は540万円(国税庁調べ)という条件で税負担軽減額は10年間で120万円前後となります。
(夫:サラリーマン 妻:専業主婦 子:2人 ローン金利:3%で35年の場合)

最大500万円の減税額とはあまりにも大きな開きがありますね。

今回の減税額拡充の制度は、最大500万円の減税が実行されるのは、今年と来年の2年間だけです。
その後H25年まで控除額は逓減していきます。
H23年は400万円、H24年は300万円、H25年は200万円が最大減税額になります。

この点を考えれば、平均的なサラリーマンは、大幅拡充されると騒いでいるこの2年間に別に買い急ぐ必要はありません。

税制改革は経済政策の具として利用されることがあります。
今回の住宅ローン減税も「大幅拡充」という掛け声のもと、景気対策として住宅需要を刺激したいという狙いがあったと思わざるをえません。
 
購入住宅は一生ものです。
看板だけの優遇減税に惑わされず、住宅メーカーの甘いうたい文句に負けずに、しっかりと一生ものの住宅をお選び下さいね。