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3分で読める!社労士コラム ~労使のバランス・オブ・パワー~第3回(就業規則)

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  1. キャリア・仕事
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 就業規則は、使用者が一方的に作ることができます。従業員の過半数を代表する者(労働組合あるいは選挙で選ばれた個人)の意見を聴くことになっていますが、「聴く」だけでいいわけです。そして、就業規則に違反する(基準を満たさない)個別の契約はできないという、いわゆる「最低基準効」がはたらくことになっていますので、それなりに力があるわけです。

 もちろん、就業規則が法的な力を与えられるためにはこれだけではダメで、
「周知している」という要件、そして「内容が合理的」という要件を満たせば、それが従業員にとって不利益な内容であってもかまわないわけです。

 そんな強力な就業規則を、金庫や担当者の机やロッカーに何年も放置してしまうということは今でも珍しいことではないのですが、就業規則よりも大事(と思っている)なルールが存在するということなのでしょう。このルールを、とりあえず「みえない就業規則」とでも表現しておきましょう。

 このように使用者は、みえようがみえまいが就業規則を一方的に作成して適用するというパワーをもっているわけです(みえないほうに法的な効果はありませんが)。

 では、労働者には対抗する手段がないのかと言えば、そんなことはなく、労働組合を結成して、使用者との間に「労働協約」を締結すれば、就業規則を一切無視したルールを作ることが可能です。もちろん、法令は無視できませんが、こんなふうに、労使のルール作りという点では労使のパワーバランスを調整する仕組みがあるわけです。

 さて、この「労働協約」の仕組みですが、この当事者となれるのは「労働組合」であって、「過半数代表者」ではないのです。実際には、過半数代表者を選出するよりも労働組合を結成する方がはるかに簡単なのですが、労働組合に加盟したこともないという人が圧倒的多数な現代ではこういう発想自体が出てこないので、このあたり、せっかくの仕組みが死文化していることから、就業規則~個別契約という使用者側の方に偏ったパワーによって会社が運用されているのが、多くの会社の現実でしょう。

 しかし、そういう状態がすべて悪いとかいうのではなく、それで会社がうまくまわり、従業員としても取り立てて言うほどの不満が無ければ、違法状態ではあっても、民事なので第3者には関係のない話なのです。労基署がたまたま調査に来てしまった場合は、そうはいきませんが。

 これまでお読みいただいたところで、就業規則は使用者だけの武器だという認識を持たれたかもしれませんが、労使が話し合って就業規則を作ってもかまわないわけですし、むしろそれが理想的な姿でしょう。社労士の実務では、作成や改訂作業は従業員である人事労務のご担当者様と打合せながら行う場合も多く、決裁で経営者のOKが必要としても全部を読まれることはあまりないので、社労士という外部の専門家が関与することで、労使が共に就業規則を作る・改訂するという姿に近づけるのではないかと思います。

 法律で、労使のパワーバランスを調整する仕組みを担保している、しかし現実は使用者に偏っている、それは労と使のみの関係を予定しているからそうなるのであって、それならば労・使・社の3者という形をとることによって、いくらか本来の調整機能を担保できるのではないか、そんなふうに私は思いますし、それが社労士のパーパス(存在意義)なのではないかと信じています。

 次回は、「給与」から労使のパワーバランスについて考えてみたいと思います。

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