- 茅野 分
- 銀座泰明クリニック 院長
- 東京都
- 精神科医(精神保健指定医、精神科専門医)
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前回は「女子の発達障害」と題して「どうして私ばかりが・・・」と副題を提示しました。話をうかがっていると、ご本人は「不当な仕打ち」に遭っており、ご自身のみが攻撃を受けたり、集団から疎外されたりする理由が分からないようなのです。これは、自分を客観視する「セルフモニタリング」の障害と言えるでしょう。
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このため、彼女らは「良心の呵責を覚えられない」「他人を思いやれない」「自分の利益・目先の利益を優先する」といった行動を生じがちです。自分が窮地に陥っていると感じたら、まずは、おとなしく、ほとぼりが冷めるまで、反省すべきでしょう。にもかかわらず、彼女らは反省する「振り」もせず、「自らの言動はなかったかのように」、権利や利益を求めます。あからさまに行う場合もあれば、こっそり行う場合もありますが、いずれにしても周知され、集団の反感を買ってしまうのです。
彼女らは“Psychopath”のような計画的な犯行はせず、時には「思いやりのある言動」も行います。その落差に周囲は理解に苦しみます。一般の人々は「彼女の気持ちを素直に受け取って良いのか、何か下心や魂胆があるのではないか」と邪推してしまいます。
しかし、このような一面も彼女らの姿であり、良心の呵責は覚え「られない」、他人を思い「やれない」というという言動は、発達障害・自閉症スペクトラム障害における「前頭葉、前頭前野」の機能障害と考えるべきでしょう。この脳部位は、前述のようにセルフモニタリングはじめ、「他者との関係、集団における自己の存在意義、その結果、導かれる適切な言動」などを司ります。
男子の場合、不適切な言動が行われると、先輩からすぐ注意を受けます。「体育会系」ともなれば、運動競技より普段の「立ち居振る舞い」「一挙手一投足」に気を付けなければ、「鉄拳制裁」は現在ないでしょうが、どやされることは間違いないでしょう。
女子の場合、良くも悪しくも、お互いの尊重し、傷つけあうような言動を直接、行うことはありません。それゆえ「陰」にこもる傾向あり、気づくと修復不能なほど、亀裂は著しくなっており、大事件として扱わざるをえないことも少なくありません。
このような言動は、本人もさることながら、同胞や両親などにも同様に認められることがあります。発達障害の9割が遺伝性と考えられていますので、それは当然と言えるでしょう。ただし困ったこととして、本人の起こした問題を償わせることなく、逆に「否認」したり「正当化」したりと、我が子可愛いさ故かかばってしまう「共依存」を生じ、結果、根治治療の妨げとなることです。
本人のため思えば、時宜をとらえ、同胞・家族も含めた「厳しい直面化」「根治治療への導入」が求められます。それが「本当の愛情」ではないでしょうか。
このコラムの執筆専門家
- 茅野 分
- (東京都 / 精神科医(精神保健指定医、精神科専門医))
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