01-1 家は自然の呼吸に合わせて - 住宅設計・構造設計 - 専門家プロファイル

野平 史彦
株式会社野平都市建築研究所 代表取締役
千葉県
建築家

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対象:住宅設計・構造

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01-1 家は自然の呼吸に合わせて

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住宅断熱基礎講座 01.日本の住宅、その過ちの歴史
「家」は人類が自然の脅威から身を守るために利用していた洞窟を離れ、木や土た石などを加工して自らの手でつくりだした最初の建築であると言えます。

 それは雨や風、寒さから身を守り、安全に眠ることのできる場所として造られたシェルターであり、現在に至るまでその基本的な目的は変わるものではありません。

 「家」はその土地の気候・風土、環境条件に対応して様々なかたちで発展してきました。家を建てるために用いられる素材やそれらを巧みに使いこなす技術、それらは、人間が何世代にも渡って自然から学び取った貴重な財産であると言えます。
 
 世界各地を旅してその地域に古くから残る集落を見ると、自然に対する人間の深い洞察力と英知に感銘を覚えます。

 集落は自然発生的に無秩序に生まれたもののように混沌としていますが、集落は家の延長であり、よく見るとそれらは相互に密接な関係を保ちながら緻密に計算された形をしており、家や集落の形には必ず何かしらの意味があることが分かります。

 それは、時にはその土地の宗教や社会構造を映し出すものである場合もありますが、基本的にはその土地の気候条件がその家や集落の形態や仕様を特徴付けているとも言えます。

 例えば、日本の住居の「庇」は太陽高度が高く日照時間の長い夏の暑い陽射しを遮り、逆に太陽高度が低く日照時間は短いが晴天率の高い冬の陽射しを取り込むことができる様にその長さは計算されていて、夏の日射による熱を遮る茅葺き屋根と共に深い庇は伝統的な日本の家屋にその機能性と共に独特の美しさを与えています。

 作家である和辻哲朗の著作の中に次のような一文があります。
「たとえば、着物、火鉢、炭焼き、家、花見、花の名所、堤防、排水路、風に対する家の構造というごときは、もとより我々自身の自由により我々自身がつくりだしたものである。しかし我々はそれを寒さや炎暑や湿気というごとき風土の諸現象とかかわることなく、つくりだしたのではない。」

 さらに、東京大学教授で建築家の原広司はその著書「集落の教え100」の中で、「自然の呼吸に合わせて、集落や建築の呼吸を計画せよ」と語っています。このように「家」は与えられた自然の問いかけに対して人間が応えた「姿」をしているのです。

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