01-2:砂漠の家(1) - 住宅設計・構造設計 - 専門家プロファイル

野平 史彦
株式会社野平都市建築研究所 代表取締役
千葉県
建築家

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対象:住宅設計・構造

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01-2:砂漠の家(1)

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住宅断熱基礎講座 01.日本の住宅、その過ちの歴史
砂漠の家(1) 

 「西欧は石の文化」であり「日本は木の文化」であるとよく言われます。確かに、日本の家屋は木を巧みの使いこなし、様々な工夫を凝らしながら柱梁造によって「開放的な」空間を作り出しています。それに対して西欧では、石や煉瓦で分厚い壁を建ち上げる組積造で、二階以上の床や屋根は構造上、木造で組まれていましたが、壁自体でその二階の床や屋根を支えなければならないこともあって、必然的に開口部の小さい「閉鎖的な」作りになっています。

 こうした西欧と日本の住居の対比を鈴木秀夫の「森林の思考・砂漠の思考」に当てはめてみることができます。西欧は勿論、砂漠ではありませんが、砂漠で生まれた一神教を受け入れていった土地です。尤も、ギリシャやローマは元々多神教であり、そこに砂漠の思想が後から覆い被さってゆくことになる訳ですが、その土地が持つ自然と人間の関係の中に一神教を受け入れる土壌があったと考えることができます。

 一神教的世界観とは自然と人間、善と悪といった二項対立的世界観であるのに対し、森林の思考とされる日本では仏教が伝えられてからも多くの神々が同居し、人間も自然と共にありました。

 宗教がその形を成す遙か昔から人類は自然と対話し、家を築いてきた訳ですが、自然が人々の思想や世界観といったものを育み、「家」はそうした人間の内面にあるものを形にしたものとも言えます。
 
 例えば、西欧の家を「砂漠の家」、日本の家を「森林の家」と捉え、西欧の家は「面」でできており、日本の家は「線」でできている、と言い直せば、西欧の「面」=「壁」は自然と人間を分かつものであり、内と外を明確に区別するものです。

 それに対して「線」=「柱梁」で囲まれた家は、領域を意識できるものではあっても内と外を明確に分かつものではなく、そこには常にどちらともつかない曖昧性が介在しています。

 アメリカ映画お得意の正義が悪を滅ぼすという単純明快なストーリーは正に砂漠の思考そのものであり、また、日本語の「分からない」という言葉のそもそもの意味が「分けられない」という仏教的な物事の根本認識の態度に発生している、というのは妙に納得のいくものがあり、開放的な日本の家屋にもそうした森林の思考が脈々と流れていることが分かります。

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