- 野平 史彦
- 株式会社野平都市建築研究所 代表取締役
- 千葉県
- 建築家
対象:住宅設計・構造
nLDK という住宅の考え方は、1951年、東大の鈴木成文教授による公団住宅51C型に始まりますが、このnとは個室の数で、家族の人数マイナス1となります。即ち、夫婦は2人で一部屋ということです。
しかし、現在、夫婦が別室で就寝するという若い家族が増えてきています。
私が設計したあるお宅では、実際に計画中は主寝室として夫婦の寝室を求めていながら、後で訪ねてみると、夫は客間として設けた部屋を自分の部屋として使用していました。
夫婦別室は老夫婦の家などではよくあることですが、若い夫婦が計画の段階で別室を設計条件として要求するケースは以前はまずありませんでした。
それでいて、実際の生活では夫婦がお互いに別々の部屋で生活しているのです。
それは、「夫婦は一緒の部屋で寝るものだ」という社会の規範に反するものだから、それは言えない、という心理が働いていたのかもしれません。
それを知った時、私は相手の内なる要望をきちんと引き出してあげる事のできなかったことを反省させられました。
設計者というのは、家族に社会的な規範を守らせるものではありません。
しかし、最近はハウスメーカーでもそうした家族の動向を捉え、積極的に夫婦別室の提案を行なう様になってきています。
夫婦別室が増えて来た要因は様々あり、単純にイビキがうるさくて安眠できないといった理由もありますが、社会学の専門家たちの間では、女性の社会進出による自立、晩婚化を背景に、少子化、セックスレス化の進行と共に繁殖のための夫婦寝室の重要性が薄れて来た、という見方がなされています。
しかし、これは夫婦崩壊を意味するものではありません。
夫婦がお互いにより自立した<個>としての存在を認め合う関係になって来た、という見方ができるのかもしれません。
nLDKのnが、家族の人数−1から、家族の人数そのものを表すようになってきたと言えるのかも知れません。
そして、すでに家族はnLDKの枠の中で捉えることができなくなっているのです。
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