キャノン工場建設で口利き、2.9億円脱税容疑で逮捕 - 会計・経理全般 - 専門家プロファイル

平 仁
ABC税理士法人 税理士
東京都
税理士
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キャノン工場建設で口利き、2.9億円脱税容疑で逮捕

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雑感
10日3時3分YOMIURI ONLINE記事はこう報じた。

大手精密機器メーカー「キャノン」が大分市に開設した工場などを巡り、
同市のコンサルタント会社「大光」などグループ3社が2006年までの
3年間に、工事を受注した大手ゼネコン「鹿島」などから得た
仲介手数料や裏金などを含む計30億円の所得を隠していた疑いが強まり、
東京地検特捜部は9日、一部の脱税工作に関与したコンサルタント会社
社長・難波英雄容疑者(61)(兵庫県宝塚市)ら5人を法人税法違反(脱税)
容疑で逮捕した。

特捜部では、大光の大賀規久社長(65)についても容疑が固まり次第、
逮捕する。

3社は、大光とコンサルタント会社「ライトブラック」(大分市)、
内装工事会社「匠」(東京都千代田区)で、いずれも大賀社長が
代表取締役を務めている。
発表などによると、難波容疑者らは大賀社長と共謀、所得隠しの
疑いがある30億円のうち、ライトブラックの06年5月期までの2年間の
所得約9億7600万円を隠し、法人税約2億9200万円を脱税した疑い。


この件について、10日1時30分時事通信社ネット記事はこう報じた。

キャノンの工場建設をめぐる脱税で、大賀規久社長(65)と同郷に知人で
日本経団連会長の御手洗富士夫キャノン会長は9日の定例記者会見で、
「事件そのものの関与は全くなく、私のあずかり知らないところで
行われた」と述べた。

大賀社長が建設業者の選定で影響を与えたかに関しては
「鹿島に一括発注しており、その先について、うちがどうこう
言うことはあり得ない。
彼(大賀社長)がどういう行動を取ったかも知らない」と説明。
その上で、「うちの人間がやっていないことは、調査の結果、」
確認されている」と述べ、キャノンの関与を改めて否定した。



キャノンの御手洗会長も誤解されかねない位置にいる事件だけに、
今後の動向が気になるところですが、
そもそもなぜ脱税する動機が生まれるのか。
建設業界の悪しき慣習である「裏金」の存在抜きには考えられない。

今回の事件も、ライトブラック社は「キャノン関係の工事を
あっせんした謝礼の趣旨で鹿島などから裏金を受け取ったという」。
(9日22時49分asahi.comネット記事)

おそらくは大賀社長と御手洗会長が同郷で知人関係にあることを
担当者は知っていたのであろう。
ビジネスとはいえ、担当者は人間である以上、上司の覚えめでたく
ありたいと思うのは当然のことであろう。
見積もり自体が適正なものであるならば、上司の覚えめでたく
なるような人脈を作ろうと、関係者に落札させても不思議ではない。
それも、今回のケースでは、見積もり自体は鹿島からである。

そういう意味では御手洗会長のあずかり知らないところで起きた
事件と言うこともそうだろうなと思う。

ただ、裏金を受け取ったとしても表に出せない金であれば、
それは脱税犯として断罪されるべきである。
バックマージンを含め、表に出せないのであれば、
経費であれば、使途秘匿金として、損金不算入。
もらった側が面に出さなければ、それは脱税ですから、
もらった側は益金算入しなければならないものでしかない。

建設業界における悪しき伝統は、政界の悪しき伝統にも
繋がっているように思う。

裏金を益金算入せず、申告しないというのは、不透明な政治資金と
何が変わろうか。

残念ながら、申告納税制度の本質が理解されていないわが国において、
我々税理士が記帳代行をベースに食っていること自体、
悪しき伝統なのかもしれません。

私も記帳代行をやらないとはいいません。
ただ、帳簿をつけていれば税法上の特典として青色申告を認めますよ、
という制度自体が、申告納税制度の本質が理解されていない
証左でもあるのですね。

裏金を捻出可能な今の制度は既に制度疲労を起こし、
時代にそぐわないものになってきている。

脱税自体は絶対に許せないとんでもない「犯罪」でしかありませんが、
それを生む温床を根絶していく努力をしていかねばなりません。

これを国に任せておけないのであれば、それこそ、
民間のプロフェッショナルである税理士や公認会計士が中心になって、
行動を起こす必要があるのではないでしょうか。