- 茅野 分
- 銀座泰明クリニック 院長
- 東京都
- 精神科医(精神保健指定医、精神科専門医)
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あらゆる精神疾患と同様に「傾聴」「共感」「受容」を基本とする。境界性パーソナリティー障害 Borderline Personality Disorder(BPD)の患者さんは治療者との間に「転移」「逆転移」を頻繁に生ずるこがあるため、注意を要します。
転移:患者さんが幼少期に両親などへ抱いて感情を治療者へ再現すること
親愛のような「陽性転移」と憎悪のような「陰性転移」とがある
逆転移:治療者が患者さんへ無意識的に転移感情を抱くこと
「中立原則」に基づき「逆転移」の感情を制御しなけばならない
「禁欲原則」に基づき安易な共感や承認を行わない
「匿名原則」に基づき安易に私的情報を公開しない
治療者は自分と患者さんとの関係性を常に「客観視」する必要あり、それが困難な場合な時は、上司や先輩から「監督 Supervision」していただく必要があります。特に、初級の治療者や治療者・自身がBPDの場合、精神病理を少なからず抱いているこがあり、患者さんに対して、過剰な援助を行ったり、必要な援助を怠ったりするなど、一貫性ない治療を行うことがあります。
市橋秀夫医師は入院病棟のような治療構造において、人間関係はさらに錯綜・複雑になりやすいため、下記のような提案を行いました(1989年)。
「ボーダーラインシフト Bordeline Shift」
1. なにかをしてあげてはいけない
2. 医師の指示以外のことを行ってはならい
3. 話を聴いてよいが、入れあげない
4. 他の職員に対する批判を真に受けない
自分に対する陰性感情は「症状」の一つと割り切ること
5. 問題を起こしたら、自分で責任を引き受けさせる
6.「大丈夫」と保証する
7. お互いに情報を綿密に交換する
8. 自殺企図など深刻な行動化を起こしても、冷静に対応する
9. 患者さんの冗談やユーモアの才能を引き出す
10. 待つこと、我慢させることが治療になる
「ボーダーラインシフト」は絶対ではなく、混沌した状況における、一つの指針です。最も大事なことは、冒頭に挙げた、あらゆる精神疾患と同様に「傾聴」「共感」「受容」を基本とすることであり、これは境界性パーソナリティー障害や精神疾患に限らず、対人援助、もしくは、人としての「基本」と言えるでしょう。
このコラムの執筆専門家
- 茅野 分
- (東京都 / 精神科医(精神保健指定医、精神科専門医))
- 銀座泰明クリニック 院長
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