ローコスト住宅の考え方9 - 住宅設計・構造設計 - 専門家プロファイル

増井 真也
建築部門代表
建築家
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ローコスト住宅の考え方9

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家作りのコツ
最近の大工さんは住宅というものがひとつの商品として扱われ始めた時代以降に大工としての仕事を始めた人が多い。昭和40年代、都市部の急激な人口の増加にあわせて大量に住宅を供給しなければいけない時代があった。いくら建てても間に合わない時代の人手不足のなか、現場での大工さんの負担を減らすためにありとあらゆるものが既製品として売り出されたのである。扉と枠はセットになって売られた。巾木もMDFなどの基材に付板や木目模様のビニールを貼られ、現場では長さをきって、ボンドでつけるだけの商品として売り出されたのである。このような商品があることが当たり前の時代に仕事を覚えた大工さんの多くは、本来当たり前のように行ってきた材料の加工や墨付けをやらせてもらうことが出来ない。そして、今、それをやってもらおうと思っても、そうした大工さんは加工のための道具も持っていなければ、そうした経験も無いのである。
いまでも、ますいいリビングカンパニーでは当たり前のようにこうした加工を行っている。でもそうした大工さんはお父さんが大工さんをやっている2代目ないしは3代目大工さんである。全体の中の割合では非常に少ないパターンであるが、親父の背中を見て育つ、親が大工さんだからという理由でその職に付く職人さんは結構いるものだ。そしてそういう大工さんは、親父の世代から引き継いだ加工機や加工場を持っていることが多い。まだ土地が安かった時代に、整えた設備と工場。それを引き継いでいる数少ない大工さんだけが今の時代になっても現場に合わせた材料を加工できる条件を持つ。それが今の建築業界の状況なのだ。
バブル崩壊以降、住宅の着工件数は一時期の年間120万棟をピークにだいぶ減ってきた。減ったといえそれでもまだ年間35万棟程度の住宅が造られ続けている。そもそも、ハウスメーカーという業態は住宅を大量供給しなければならなくなった高度成長期に、政府の要求によって作られたものである。それまで、材料メーカーや電気製品メーカーだった大企業が続々と、自社の製品を利用する特色ある商品化住宅を作り出し、住宅産業に乗り込んできた。今のハウスメーカーはその当時の業態を引き継いでいるに過ぎない。そうした大量生産、大量消費社会のスタイルのなかで、一人の職人さんの腕や設備などの状況に頼るようなものは取り入れることは出来ない。ゆえにこうした商品化住宅の現場で用いることの出来る部材というのは、工場生産することの出来る画一化されたものに限られてしまうのである。