- 増井 真也
- 建築部門代表
- 建築家
対象:住宅設計・構造
いまでも、ますいいリビングカンパニーでは当たり前のようにこうした加工を行っている。でもそうした大工さんはお父さんが大工さんをやっている2代目ないしは3代目大工さんである。全体の中の割合では非常に少ないパターンであるが、親父の背中を見て育つ、親が大工さんだからという理由でその職に付く職人さんは結構いるものだ。そしてそういう大工さんは、親父の世代から引き継いだ加工機や加工場を持っていることが多い。まだ土地が安かった時代に、整えた設備と工場。それを引き継いでいる数少ない大工さんだけが今の時代になっても現場に合わせた材料を加工できる条件を持つ。それが今の建築業界の状況なのだ。
バブル崩壊以降、住宅の着工件数は一時期の年間120万棟をピークにだいぶ減ってきた。減ったといえそれでもまだ年間35万棟程度の住宅が造られ続けている。そもそも、ハウスメーカーという業態は住宅を大量供給しなければならなくなった高度成長期に、政府の要求によって作られたものである。それまで、材料メーカーや電気製品メーカーだった大企業が続々と、自社の製品を利用する特色ある商品化住宅を作り出し、住宅産業に乗り込んできた。今のハウスメーカーはその当時の業態を引き継いでいるに過ぎない。そうした大量生産、大量消費社会のスタイルのなかで、一人の職人さんの腕や設備などの状況に頼るようなものは取り入れることは出来ない。ゆえにこうした商品化住宅の現場で用いることの出来る部材というのは、工場生産することの出来る画一化されたものに限られてしまうのである。