乳酸菌おばけ - 体の不調・各部の痛み全般 - 専門家プロファイル

有限会社 木村爽健 代表
東京都
鍼灸師

注目の専門家コラムランキングRSS

対象:体の不調・各部の痛み

専門家の皆様へ 専門家プロファイルでは、さまざまなジャンルの専門家を募集しています。
出展をご検討の方はお気軽にご請求ください。

「この乳酸菌のサプリを飲めば大丈夫ですよ。」
病院のベッドに座っているA先生に、ある女性が小さな容器を差し出してこう言った。
この話は、10年近く前の話になります。
気功治療をしていたA先生は、重病患者の治療が連続したせいで、邪気をもらいすぎてしまい、体調がおかしくなっていました。
突然のお腹の痛みで病院に運ばれ、病名は急性胆のう炎。
胆のうが炎症を起こし、胆汁が流れなくなっていました。胆石があったようです。
手術の予定は次の日。
手術までの間は、一切の飲食は禁止されます。
これは、何かを胃に入れると消化する働きの一環として、胆のうの胆汁が分泌され、逆流するリスクがあるからです。最悪死亡してしまいます。
私はA先生から連絡があり、すぐに病院に駆けつけました。
急性胆のう炎による上腹の激痛は落ち着いていましたが、極度の疲労からかA先生からは血の気が引いていました。
その時、病室には私以外にもう一人いました。
それが先ほど出てきた女性です。
何ヶ月か前からA先生のところに出入りしていた、乳酸菌サプリを売っている女性。
青白い顔はやせ細り、ギョロっとした目は鈍い光を放ち、ぱっと見て健康そうには見えません。
私がその女性につけたあだ名は、乳酸菌おばけ。
あだ名の由来は、なんでもかんでも乳酸菌で治ると話し、本人は病的だったからです。
ひとしきり私とA先生の話が落ち着いた時、私とA先生の間に入ってきたその女性は、「先生、この乳酸菌サプリを飲んだら楽になりますよ。ほら、これ、飲んでください。」
すでに消灯時間を過ぎた病室は、A先生のベッド脇の読書灯だけがついて薄暗い状態。
手術まで飲食禁止という話をしていたにも関わらず、平気でサプリを進める女性。しつこく、サプリをA先生の顔近くまで持っていき、何が何でも飲ませようとしている。
薄明かりに照らされた女性の横顔を見ると、青白く頬骨がつきだし、目は炯々として明らかに死神の形相。
乳酸菌おばけは、あの世の使いだった。なんて、冗談を言ってる場合じゃない。
私は女性の後ろから、A先生に向かって全力で首を振り、「ダメ、ダメ、絶対ダメ。死んじゃう。」とサインを送りました。
「そのサプリを飲んだら、死んで楽になってしまう。」そんな嫌な予感がしていました。
そんな私の行動に気がついたA先生は、絞り出すような声で「今はつらくて飲めないから、後で飲むよ。」と、うまくごまかして事なきを得ました。
手術が終わり、医師から再度説明を聞いたA先生は、「飲んだら死んでましたよ。」と、医師に言われたそうです。
症状的にかなり重病だったので、あともう少し発見が遅れたら、命に関わる状態だったそうです。
それから、乳酸菌おばけは現れなくなりました。
おそらく、乳酸菌おばけは、今もどこかで乳酸菌サプリを売っているはずです。
夏の怪談のような体験でした。


 |  コラム一覧 | 

カテゴリ このコラムの執筆専門家

(東京都 / 鍼灸師)
有限会社 木村爽健 代表

お手伝いできることはありますか?

 体に不調が出る原因は、ご本人だけでなく環境も大きく影響してきます。単純に目の前の困っている症状に対処するだけでなく、どのようにすれば体質改善して病気を予防できるかについてもお話させていただきます。一緒に健康を取り戻しましょう。