その解答は、一般的な規格品の住宅にはありません。窓の大きさ、天井の高さ、お風呂をどこに持ってくるか、すべて自由な発想のもとに組み立てるべきなのです。使う人が「こんなのがあったらいいな」「気持ちいいだろうな」とストレートに感じられる家とは何かを考え、今までありそうでなかったものを形にする。そのうえで、住むほどにその家のことが好きになる、10年後も20年後も愛されるような家にするために、もっともよいと思われるデザインを追究していく。それこそが私たち建築家にとって何よりも大切な使命だと思います。
日本人は休日になると出かける人が多いですが、本当に気持ちのよい家に住むと、みんな休日に家から出なくなってしまうものです。「ホーム」とか「我が家」というのは、本来ずっといたい場所であるはず。以前、クライアントから「この家ができたら、あとは何も欲しくなくなった」と言われたことがありました。つまり本当に快適な我が家があって、おいしい食べ物るさえあれば他に何かを補充する必要はない。それが本来の家の在り方だと思うのです。
このコラムの執筆専門家
- 手塚 貴晴
- (建築家)
- 株式会社手塚建築研究所
建て主の“夢”を引き出し形にするのが建築家の役割
「設計テーマをどこから導き出されたのですか?」という質問を受けることがありますが、それはクライアントの頭の中にあるのです。話を聞き、突き詰めていくと、必然的な形が見えてくる。そんな夢を引き出し、形にするのが建築家の役割だと思っています。
「手塚貴晴の建築コラム」のコラム
建築家ブームの裏にあるもの(2005/12/01 00:12)