大地の芸術祭が生んだ森の学校「キョロロ」 - 住宅設計・構造設計 - 専門家プロファイル

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大地の芸術祭が生んだ森の学校「キョロロ」

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作品紹介
2003年夏、新潟県の越後妻有で開催された「大地の芸術祭 アートトリエンナーレ」。23カ国、157組のアーティストが参加してつくりあげたこの芸術エリアの一画、越後松之山の棚田に建築したのが自然科学館・森の学校「キョロロ」です。
人は自然の中を散策するとき、ときどき立ち止まってはまわりの風景や自然を観察していきます。そこで、森の学校「キョロロ」は棚田の道筋に沿って建て、角を曲がるごとに大きな開口部をつくることで、来館者が歩きながら自然そのものを観察できるように設計しました。

160mの細長い建物の外壁と屋根には、コールテン鋼という特殊な素材を使い、冬場は最深部で10mの雪に埋もれることになるため、ジョイント部分から雪水が浸み込まないよう全溶接しました。また、この「重さ2000トンの鉄の塊」は、夏と冬の温度差により約20cm伸び縮みするため、建物の3箇所にピン止めをして、同じ場所で伸び縮みする尺取虫のような形にしました。

キョロロの側面には、強度の強いアクリルを使った大小さまざまの窓がありますが、一番大きい窓は14m×7mで、一枚窓としては世界最大のものです。来館者はこれらの窓から四季の移り変わりを見ることができ、とくに冬は積もった雪の断面や雪を通した光を窓から見られるようになっています。氷と化した雪を通してブルーの光が差し込むさまは、じつに美しい。そうした厳しい美しさもまた、大自然の素晴らしさの一部だと思うのです。

私たち建築家が建物をつくるとき、形よりも「この建築で何ができるのか」に重心を置くべきだと思うのですが、森の学校「キョロロ」はそんなメッセージを込めた建築物のひとつになっていると思います。

(photo (c) Katsuhisa Kida)

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建て主の“夢”を引き出し形にするのが建築家の役割

「設計テーマをどこから導き出されたのですか?」という質問を受けることがありますが、それはクライアントの頭の中にあるのです。話を聞き、突き詰めていくと、必然的な形が見えてくる。そんな夢を引き出し、形にするのが建築家の役割だと思っています。

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