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河野 英仁
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インド特許法の基礎(第14回)(3)~特許の譲渡及び実施許諾~

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インド特許法の基礎(第14回)(3)

~特許の譲渡及び実施許諾~

 

2014年8月26日

執筆者 河野特許事務所 

弁理士 安田 恵

.権原登録の効果等

(1)特許庁における登録

 長官は、登録申請があった権原の証拠に基づいて、申請者が特許又はその持ち分を取得する権原を有するものと認められる場合、その申請者を特許の所有者又は共有者として登録簿に登録し、譲渡に係る証書の明細等を登録簿に記入する(第69条(3)(a))。また長官は、登録申請があった権原の証拠に基づいて、申請者が特許についての何らかの権利を取得する権原、例えば実施権、譲渡抵当権等を取得する権原を有するものと認められる場合、その申請者の権利の通知を登録簿に登録し、証書の明細等を登録簿に記入する(第69条(3)(b))。

 具体的には、特許登録簿には「………に関して受理された申請に従い,………年………月………日付にて,当事者………と相手方当事者………との間で締結された譲渡証書/ライセンス証書/譲渡抵当証書等によって,特許所有者/実施権者/譲渡抵当権者等として登録された。」といった様式で記入される(規則92)。

 申請者が申請に係る権原を有するものと認められない場合、当該申請は拒絶される。

 

(2)譲渡及び実施許諾等の効力発生要件及び効力発生時期について

 譲渡及び実施許諾の効力発生時点としては、①譲渡等の合意があった時点(契約締結前段階)、②譲渡等の契約締結時点、③権原の登録時点が考えられる。第68条には譲渡等の権利の設定は、書面により適法に締結されていない限り、効力を生じないと規定されているため、上記①の段階では譲渡等の効力は発生していないと考えられる。

 インド特許法には権原の登録が効力発生要件である旨は規定されておらず、複数当事者の権利関係と、登録の先後との関係を規定した条項も見あたらない。第69条(3)には権原の登録が権原の証拠に基づいて行われる旨、権原の帰属について当事者間の争いがある場合、判決が確定するまで登録を行わない旨が規定されており、譲渡等の登録は、その譲渡等の効力が発生していることが前提になっていると考えられる。また特許に係る権原に影響を及ぼす契約書を特許庁で保管する旨が規定され(第69条(4))、権原の登録申請があった際、登録簿に記入される証書の明細として契約締結年月日が規則92に規定されているが、登録日を記載する旨は明記されていない。以上のことから、権原等の登録は譲渡等の効力発生要件では無く、上記②の契約締結時点で譲渡等の効力が発生するものと解される。

 

 二重譲渡[1]等が行われたような場合、いずれの譲渡が有効であるかは、譲渡等の効力が契約締結によって生ずると考えると、各譲受人による登録申請の前後では無く、契約の内容及び契約締結日等に基づいて判断されると考えられる。

 

(3)公開

 登録簿は公衆の閲覧に供するものであり(第72条(1))、実施許諾の権原登録によって実施許諾の条件の詳細も原則として閲覧可能になる。しかし、実施許諾の条件を開示しないことを求める申請があった場合、長官は当該実施許諾の条件を開示しない(第69条(4))。

 

(4)権原を証明する証拠として認定可能になる

 登録簿に登録された譲渡契約書、実施許諾契約書等の書類は、特許又は実施権等の権原が存在する証拠として、長官又は裁判所により認定され得る状態になる(第69条(5))。

 

(5)登録簿の更正

 登録簿の記載に瑕疵があった場合、被害者は登録簿の更正を審判部に申請することができる(第71条)。インド特許法には登録簿の更正申請を行うべき期限が規定されていないが、瑕疵ある登録がなされたときから3年以内に更正申請を行わなければならない旨の判断が示された判例[2]がある(出訴期限法第137条)。権原の登録申請を行った者は、登録内容に不備が無いかを確認し、不備がある場合、登録から3年以内に更新の申請を行うべきである。

 なお、上記判例は特許権者が登録更正の申請を行う場合の申請期限を判断したものである。登録簿の瑕疵を知り得ない他の被害者の更正申請も、瑕疵ある登録がされてから3年と解釈することは、被害者に酷であり、瑕疵ある登録を知り得ない第三者の更正申請の期限はこれに限られないと考えられる。ただ特許の譲渡又は実施許諾によって特許の持ち分又は実施権を取得しておきながら、登録を行わずに3年以上も放置していたような場合、権原登録の申請を行えば発覚し得た登録の瑕疵を放置していたことになり、登録の更正申請が認められない可能性もあり得ると思われる。特許に係る何らかの権利を取得した場合、その権利が正当な権原に基づくものであっても未登録の状態のまま放置しておくと、権原登録に支障が生じる可能性もあるため、遅滞なく権原の登録申請を行うべきと考えられる。

 

(6)登録簿に登録された権利と抵触するような他の権原登録の排除

 正当な権原を有する者が特許の所有者又は実施権者として登録簿に登録された場合、その権利と抵触するような譲渡又は実施許諾が後に行われ、権原登録の申請があっても、その登録を排除できると考えられる。例えば、実施権を取得した後、特許権が第三者へ譲渡されるような場合、実施権の登録を行っていると、実施権者の権利が害されるような形での権利移転は行われないと考えられる。特許権者の特許を処分する権限は、「登録簿に通知の登録があるその他の者に属する権利に従うことを条件として」(第70条)行使することができるためである。

 

以上

 

 



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[1] 先の譲渡の後に行われた譲渡は実体のある権利譲渡では無いと考えられ、正確には二重譲渡と言えないと考えられるが、説明の便宜上、二重譲渡とした。

[2] Bayer Aktiengesellschaft Of Leverkusen Federal Republic of Germany vs Controller Of Patents, Government of India, AIR 1982 Cal 30.

 当該判決は2002年改正法前になされたものである。2002年改正では審理機関が「高等裁判所」から「審判部」に変更されたが、改正後の第71条に対しても当該判決は適用し得ると考えられる。

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