顎関節症はほとんどの医院さんでは、症状がなくなれば「治った」となりますが、
本来はこういう考え方が正解だと考えています。
↓
顎の骨の再生はできませんので、顎関節症は完治するということはあり得ません。
ただ、症状が軽くなった、または、感じなくなったというだけであり、骨が元の形態に完全に治るということは顎関節症にはないとお考え下さい。
過去に骨の形態を復元させようと金属の関節を入れる手術が行われていましたが、10年以上経過すると半数以上が再発を起こしており、最近では手術で治療しようという傾向は少なくなってきています。
きちんとしたマウスピースを作製し、毎日装着し、顎の骨が溶けて磨り減っていくのを現状維持はできませんので予防し、いかに遅らせ続ける、という考え方です。
定期的に歯科医院に通い、顎の骨のレントゲン写真を撮影し、顎の骨の長さ、
形態の経過を定期的に追っていくこともとても大切です。
さて、少し話しを戻しますね。
私は、顎関節症では、ありません。
しかし、毎晩眠る時にはかならずマウスピースを装着してから
布団に入ります。
当院で治療を終えられた患者さんの多くは、治療後マウスピースを作製し、
夜眠る前には必ずマウスピースを装着してお休み下さい、
とお伝えしています。
スポーツ選手でもないのに?
顎関節症でもないのに?
ほとんどの方がそう、思われます。
それは、マウスピースの本来の使い方をご存知ないから、です。
当院が考えるマウスピースは、かみ合わせのバランス、つまり全身のバランスをこれ以上崩れないように
負担のアンバランスを整えるための道具です。
その理由を今からお話しますね。
私の医院では、マウスピースの種類は全部で7種類ございます。
患者さんの噛み合わせの状態を見ながら、どのタイプにするかを決めます。
まず、マウスピースを付けていただくと、「噛み合わせ」がズレます。
ズレると申しますか、歯が本来の位置に戻ろう戻ろうとします。
①「顎の骨」
②「関節」
③「筋肉」
④「歯」
噛み合わせを構成するこの4つが自分自身の楽な場所に戻ろうとします。
これは人間の持つ自然な性質です。
なのでその場所では、「噛みづらい」という状況が起こります。
でも、心配しないで下さい。
ほとんど、8割、9割の方は、マウスピースを外して30分、1時間もたてば、
また同じように食事が出来る様になります。
なぜだと思われますか?
人間は、そうやって状況に順応できるような構造になっているんです。
人間とはそういう意味では完全な仕組みで出来上がっていると私は診療をしながら
常々感動せずにはいられません。
そして、マウスピースをして、本来の場所に動いたから、そこで噛める様にすれば良いか?
と、思いがちなのですが、それだけでもないのです。
さて、ちょっと考えてみて下さいね。
皆さんは普段お食事をされる時に、右で噛みますか?左で噛みますか?
どちらかの方で良く噛まれていませんか?
こんな質問をされても「え?どういうこと?」と思われる方がほとんどだと思います。
実際に私も患者さんにお尋ねしますが、ほとんどの方が、
「そんなこと生まれてこのかた意識したこともないです」とおっしゃられます(笑)
前歯を治療した時にはじめて、自分が奥歯でものをかんでいなかった、
ということを自覚される方も多いです。
食事は無意識に前歯で噛み砕いていた、ということを
前歯を治療してみて前歯で噛めなくなってはじめて気がつくのです。
それほど、普段自分がどこの歯で咬んでいるか。当たり前になっていて考えたことも無いそうです。
ぜひ一度、お食事の時に、チェックなさってみて下さい。
右か左か、どちらか一方、かみやすい側で、噛んでいる方も多いと思います。
「私は右だ」「私は左だ」と、即答される方もいます。
ちなみに私は、両方で噛んでいます。
いつも両方の奥歯で噛んでいるっていう方は、OKです。
この様に、「右で噛む」「左で噛む」、という噛み癖が、習慣として無意識に人間にはついています。
その様な噛み癖がついている場合、マウスピースをして、正しい噛み合わせの位置にすぐ治せばいいか?
と思われますよね。
しかし、残念ながらこのような噛み癖で崩れている噛み合わせの場合は、
治していくのにとても時間がかかります。
私の医院にはプロスポーツ選手のような方もご相談に来られるのですが
そういった噛み合わせが身体の重心を支えることを身をもって体験している方が多いので、話がとてもストレートに伝わります。
例えば、テニスをしている方なら、すぐお分かりになるかと思います。
「右手」と「左手」、見比べていかがでしょうか?
筋肉の付き方、まったく違いますよね?
ラケットを持つ手が右手であれば、左手と比べて右手の筋肉がすごく強く太くなっていませんか?
つまり、噛み癖も同じで、右でよく噛んでいる方って、右の筋肉がすごく発達しています。
それに比べて左の筋肉は衰えてしまう。
それによって見た目も、大きく顎が曲がった様に変わってきたりするわけです。
この様に、右と左で筋肉が違う方の場合は、左の筋肉を鍛えてあげないと、
右での噛み癖の方の場合は、左で噛める様に、左の筋肉を鍛える必要があるのですね。
そういう事をマウスピースを調整しながらやっていきます。
医院でマウスピースの調整のために通院されたご経験のおありになるかたは実感がおありになるかと思います。
調整していくことによって、だんだん左で噛める様になっていきます。
それと共に、右はそこまでの筋肉を必要としなくなりますから、
右は少し筋肉の力が衰え、左の筋肉が出来る、その様になっていきます。
筋肉のバランスが取れてくるのです。
早い人ですと、3ヶ月もしない内に調整が終わる方もいらっしゃるのですが、
その様に噛み癖が、非常に長期間になっている方の場合は、半年、1年と調整をしなければ、
十分いい場所にまでズレを戻す事は出来ません。
姿勢まで良くなっていきます。
ここを慌てて、急いでしまいますと、せっかく正しいと思われていた位置が
またすぐにズレてしまいます。
あわてず、焦らず、参りましょう(笑)
ですので十分なマウスピースの調整には
①「調整する期間」
②「使う時間」
③「使う期間」
という条件がとても重要になってきます。
このマウスピースは、そのように使って頂くと、ものすごく楽な場所、
顎を楽に閉じた場所で、噛み合う場所を探す事が出来る訳わけなのです。
そして、マウスピースで探した「最適の位置」それが、私の考える
良い噛み合わせの第一段階での場所と、その様に考えています。
それでは次回は、この「全身を安定させるマウスピース」について詳しくお話してまいります。
噛み合わせ専門歯科医院 香川県高松市 吉本歯科医院
このコラムの執筆専門家
- 吉本 彰夫
- (香川県 / 歯科医師)
- 医療法人社団 吉翔会 吉本歯科医院 院長 歯学博士
噛み合わせ専門歯科。インプラント、矯正など質の高い治療を行う
香川県高松市にある歯科医院。四国ではかみ合わせ専門歯科医院の先駆け。インプラント治療に関しては世界3大メーカーのノーベルバイオケア社、スリーアイ社より、功績、実績をたたえトロフィーを授与。高度な医療を患者さんに提供するよう努めます。
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