中国商標判例紹介:中国における機能性意匠の類否判断(第1回) - 特許・商標・著作権全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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中国商標判例紹介:中国における機能性意匠の類否判断(第1回)

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中国商標判例紹介:中国における機能性意匠の類否判断(第1回)

~最高人民法院による機能性意匠と装飾性意匠の評価~

河野特許事務所 2013年9月24日 執筆者:弁理士 河野 英仁

 

国家知識産権局専利復審委員会

                   再審請求人(一審被告、二審上訴人)

v.

張迪軍

                           再審被請求人(一審原告、二審被上訴人)

 

1.概要

 物品に表れるデザイン(設計)は、機能に基づき必然的に定まる機能性設計と、機能とは別に装飾を目的として設計される装飾性設計との2つに大別される。

 

 外観設計特許(日本の意匠に相当)は現有設計[1](先行意匠)に近似していないことが必要とされる(専利法第23条)ところ、現有設計との相違点が機能性設計に基づくものである場合に、どのように設計が近似しているか否かを判断するのかが問題となる。

 

 本事件ではエンコーダスイッチの外観設計が、現有設計に近似するか否かが問題となり、特にこれらの相違点が機能性設計によるものか、或いは、装飾性設計によるものかが問題となった。

 

 最高人民法院は、相違点は機能性設計によるものであることから、これらの設計は相近似すると判断し、当業者であれば差異を識別でき全体的視覚効果に顕著な影響を与え近似しないと判断した北京市第一中級人民法院[2]及び北京市高級人民法院[3]の判決を取り消した。

  

2.背景

(1)特許の内容

 張迪軍(以下、原告)は、2006年8月4日「ロジックプログラミングスイッチ(SR14)」と称する外観設計特許出願を国家知識産権局に申請した。国家知識産権局は2007年6月6日公告を行った。特許番号は200630128900.0(以下、900特許という)である。

 

(2)無効宣告請求

 2009年5月31日、鑫隆公司は2000年改正専利法第23条の規定(先設計との近似)に反するとして、復審委員会に無効宣告請求を行った。主引例は2000年10月25日に公告された00302321.4号中国外観設計特許(以下、先設計という)である。参考図1は900特許及び先設計の対比図である。

 

 

 

参考図1 900特許及び先設計の対比図

 

 2009年9月2日復審委員会において口頭審理が行われた。復審委員会は相違点として以下の2点を認定した。

 

相違点1:先設計の太柱には矩形上の凹槽が設けられている点で、当該凹槽が設けられていない900特許とは相違する(点線青色矢印参照)。

相違点2:900特許の下部ピンは一側面に5本配置されている点で、下部一側面に3本対向する側面に2本ピンが配置されている先設計とは相違する(実践赤色矢印参照)。

 

 復審委員会は、900特許は先設計において凹槽デザインを簡略化したにすぎず、全体形状からすれば単に局部的な微細変化でしか無く、かつ、両者のピン位置の差異は、連接機能により限定される局部位置の変化に属し、共に両者の全体外観設計は顕著な影響を有さないと判断した。そして、両者の主要形状構成の具体設計及びその結合方式は共に同一または類似のものであり、近似する外観設計に属すると判断し、専利法第23条違反であるとして無効宣告決定をなした[4]。原告はこれを不服として北京市第一中級人民法院へ控訴した。

 

(3)北京市第一中級人民法院及び北京市高級人民法院の判断

 北京市第一中級人民法院は、外観設計が同一または近似であるか否かを判断するには、関連領域の判断主体が、判断結論の客観認定に対し、重要な作用を有すると述べた上で、900特許と先設計は共に、電気設備部品であり、その関連消費者は電気製品専業の生産者及び購入者と認定した。つまり近似か否かの判断主体は、一般消費者ではなく、電器製品専業の生産者及び購入者と認定した。

 

 そして、900特許と先設計との2つの相違点を比較すれば、本領域に関連する消費者は、この種の商品を選択する際、当該商品の2つの相違点に比較的大きな注意力を与えて判断する。北京市第一中級人民法院は、2つの相違点は、全体視覚効果に対し顕著な影響を与え、両者に混乱誤認を与えず近似しないことから、復審委員会がなした第13912号決定を取り消した。

 

 復審委員会は当該判決を不服として北京市高級人民法院に控訴したが、北京市高級人民法院は同様の理由により、北京市第一中級人民法院の判決を支持した。復審委員会は北京市高級人民法院の判決を不服として最高人民法院に再審請求を行った。

 

 

3.最高人民法院での争点

争点1:外観設計を機能性設計と装飾性設計に区分することができるか否か

 物品に対する外観設計を評価する際に機能性設計と装飾性設計とに区分して評価することができるか否かが問題となった。

 

争点2:2つの相違点は機能性設計か装飾性設計か

 900特許と先設計との相違点は機能性設計か、または装飾性設計であるかが問題となった。

 

争点3:900特許と先設計とが同一または近似するか否か

 最終的に900特許と先設計とが近似するか否か問題となった。



[1] 専利法第23条第3項 本法にいう現有設計とは、出願日前に国内外で公衆に知られている外観設計をいう。

[2] 北京市第一中級人民法院判決 (2010)一中知行初字第533号

[3] 北京市高級人民法院2011年3月17日判決 (2010)高行終字第1459号

[4] 専利復審委員会2009年9月15日決定 第13912号

 

 

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