早わかり中国特許:第34回 中国特許民事訴訟の基礎 - 特許・商標・著作権全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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対象:特許・商標・著作権

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早わかり中国特許:第34回 中国特許民事訴訟の基礎

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早わかり中国特許

~中国特許の基礎と中国特許最新情報~

2014年5月2日

執筆者 河野特許事務所

弁理士 河野英仁

(月刊ザ・ローヤーズ 2014年3月号掲載)

 第34回 中国特許民事訴訟の基礎

 

1.概要

 第33回に引き続き中国における特許民事訴訟について解説する。

 

2.公開審理

 前回述べた証拠交換及び質証を経て、人民法院は開廷審理を行う。人民法院は、審理を行う場合、国家秘密と個人のプラバシーに及ぶ事件又は法律に別な定めのある事件を除き、全て公開して行わなければならない(民事訴訟法第134条)。

 

3.審理の手順

 開廷後以下の手順により法廷調査が行われる(民事訴訟法第138条)。

①当事者の陳述

②証人の権利義務の告知、証人の証言及び未だ出廷していない証人証言の読み上げ

③書証、物証及び視聴覚資料の提示

④鑑定結論の読み上げ

⑤実地調査記録の読み上げ

 次いで法廷弁論が以下の順序で進められる(民事訴訟法第141条)。

①原告及び原告訴訟代理人の陳述

②被告及び被告訴訟代理人の陳述

③第三者及び第三者訴訟代理人の陳述又は答弁

④相互答弁

 以上の①~⑤と①~④を経て法廷弁論を終結した場合、裁判長は、原告、被告、第三者の順序で各者の最終陳述を求める。

 

4.審理の終結

 法廷弁論における最終陳述を経て審理は終了する。事前の証拠交換によりある程度争点が絞られていることから、通常は、公開審理は1日で終了することが多い。この法廷弁論が終結した場合、もはや主張する請求項を変更することは認められないため[1]、当初主張していなかった請求項についても権利行使を必要とする場合は、公開審理前までには主張の変更を完了しておく必要がある。

 

5.審理終結までの期間

 裁判提起から判決までの期間は日米と比較すると短い[2]。人民法院は、第一審においては、原則として6ヶ月以内に審理を終結しなければならない(民事訴訟法第149条)。ただし、特段の理由がある場合は、さらに6ヶ月延長される。発明特許のように技術内容が複雑な場合、又は、復審委員会への無効宣告請求により審理が中断される場合は、6ヶ月を大幅に超えることとなる。

 第二審にあっては、原則として3ヶ月以内に審理を終結しなければならない(同法176条第1項)。第二審では争点が絞られているからである。このように中国では判決までの期間が立法化されていることから、諸外国に比べ早期に結論を得ることができるという特徴を有する。

 ただし、渉外事件に関しては翻訳期間及び証拠提出等に多くの時間を要するため、例外的に期間の定めはない(同法270条)。

 なお、行政訴訟の場合、中級人民法院は原則として3ヶ月以内に第一審判決を作成しなければならない(行政訴訟法第57条)。また行政訴訟第二審において、高級人民法院は原則として2ヶ月以内に終審判決をなさねばならない(同法第60条)。

 

6.判決

 人民法院は、公開により判決を言い渡す。判決書は判決言い渡しから10日以内に送達される(民事訴訟法第152条)。判決書に記載される事項は以下のとおりである。

 

①事件概要、訴訟における請求、争いの事実及び理由

②判決の認定事実、理由及び根拠法律

③判決結果及び訴訟費用負担

④上訴期間及び上訴法院

 

 なお、判決文は各地の人民法院のHP[3]に公開されているが、一部に過ぎない。件数が日本と比較して多すぎるため、また判例主義を採用しないことが理由であると思われる。ただし、2013年11月28日最高人民法院は、「人民法院によるインターネットでの裁判文書公開に関する最高人民法院の規定」を公布し、2014年1月1日より施行すると述べた。本規定によれば、所定条件以外の案件は全て判決文をインターネット上で公開するものである。

 

 ただし、国家秘密、プライバシーに係わるもの、未成年者犯罪に係わるもの、調停により結審されたもの、又は、その他の公開に適さないものは公開されない。ここで、、「公開に適さないもの」については裁判官又は合議法廷が書面で意見及び理由を述べ、関連部門の審査を経なければならない。今後は各人民法院のHP等を通じて判決文が公開されるであろう。

 

7.上訴

 当事者は第一審判決に不服がある場合は、判決書の送達の日から15日以内に、一級上の人民法院に上訴することができる(民事訴訟法第164条)。ただし、中国の領域内に住所を有しない当事者は、判決書の送達の日から30日内に、一級上の人民法院に上訴することができる(民事訴訟法第269条)。

 日本企業が当事者となる一般的なケースにおいては、第一審たる第一中級人民法院による判決書送達日から30日以内に高級人民法院へ上訴することとなる。また、訴額により第一審が高級人民法院となった場合は、最高人民法院へ上訴する。

 なお、行政事件に関しては、復審委員会がなした決定に対しては3ヶ月(専利法第41条第2項及び専利法第46条第2項)以内に、北京市中級人民法院へ上訴することができる。第一審である北京市中級人民法院の判決に対しては、15日(在外者は30日)以内に北京市高級人民法院へ上訴することができる(行政訴訟法第58条)。

 

8.判決の確定

 上訴期間に上訴しなかった場合、上訴することができない場合[4]、及び、最高人民法院が判決をなした場合、判決が確定し、法的効力が生じる(民事訴訟法第155条)。

 


[1] 司法解釈[2009]第21号第1条

  人民法院は権利者が主張する請求項に基づき、専利法第59条第1項の規定により特許権の技術的範囲を確定しなければならない。権利者が一審の法廷弁論終結前に主張する請求項を変更した場合、人民法院はこれを認めなければならない。

[2] 日本の地方裁判所における平均審理期間は2012年度で15.7ヶ月である。また、日本の知的財産高等裁判所における平均審理期間は2012年度で7.1ヶ月である。知的財産高等裁判所HP(http://www.ip.courts.go.jp/documents/statistics/index.html)より

[3] 例えば北京人民法院審判情報網(http://www.bjcourt.gov.cn/)

[4] 中国は2審制であることから、第二審の人民法院の判決が終審の判決となる(民事訴訟法第155条)

 

 

→続きは、月刊ザ・ローヤーズ2014年3月号をご覧ください。




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