安全配慮義務違反による損害賠償請求は弁護士費用を請求できる - 労働問題・仕事の法律全般 - 専門家プロファイル

村田 英幸
村田法律事務所 弁護士
東京都
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安全配慮義務違反による損害賠償請求は弁護士費用を請求できる

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・安全配慮義務違反による損害賠償請求と弁護士費用

 

最2小判平成24224判時214489頁,判タ136863頁・裁判集民事 第240111頁、ジュリスト平成24年重要判例解説73頁

 労働者が,使用者の安全配慮義務違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償を請求するため訴えを提起することを余儀なくされ,訴訟追行を弁護士に委任した場合には,その弁護士費用は,事案の難易,請求額,認容された額その他諸般の事情を斟酌して相当と認められる額の範囲内のものに限り,上記安全配慮義務違反と相当因果関係に立つ損害というべきである。

本判決の理由は、

労働者が、具体的事案において、使用者の安全配慮義務の内容を特定し、義務違反に該当する事実、損害の発生とその額を主張立証しなければならず( 最判昭和56・2・16民集35巻1号56頁)、労働者が主張立証すべき事実は、不法行為に基づく損害賠償請求と同様である。

労働者が裁判上請求する場合には、弁護士に委任しなければ十分な訴訟活動をすることが困難な類型である。

 

[従来の判例と本判決の関係]

弁護士費用の請求ができないとした 大判大正4・5・19民録21輯725頁(売主の追奪担保責任(判例は法定責任説)の事例)、

債務不履行責任について、民法419条に基づいて請求した弁護士費用を否定した最判昭和48・10・11判例時報723号44頁

安全配慮義務違反による損害賠償請求について、弁護士費用を認めた原審判決を是認した 最判平成6・2・22民集48巻2号441頁(ただし、同判決の判決要旨は、以下のとおりであって、弁護士費用については、要旨とされていない)。

一 雇用者の安全配慮義務違反によりじん肺にかかったことを理由とする損害賠償請求権の消滅時効の起算点
二 慰謝料額の認定に違法があるとされた事例

 最判平成21・11・9民集63巻9号1987頁は、過払金返還請求訴訟について、貸金業者に不法行為が成立しない限り、借主は弁護士費用を請求できないと、判示している。

本判決について、責任の法的性質ではなく、弁護士に委任しなければ訴訟活動が困難かどうかを基準としていると評価する論者(上記平成24年度重要判例解説)もいるが、本判決が「不法行為に基づく損害賠償請求と同じであること」を理由づけにしていることからすると、そのようには断定できないであろう。

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