対象:住宅設計・構造
はじめまして。
新築を検討している者です。現在家族が気に入り契約しようとするHMの構造ですが、
外壁・通気層・透湿防水シート・合板・ロックウール55mm・石膏ボード
となっています。合板は耐震強度を高めるために筋かいの代わりに張ると説明されました。
インターネットなどで調べたところ、結露を防ぐには透湿抵抗は内壁側>外壁側がセオリーで、外壁側に透湿抵抗の高い合板を張ると湿気が逃げなくなり、内部結露が発生するとあり、心配になりました。
*合板を貼って、ロックウールの袋のみでの防湿層で内壁>外壁の透湿抵抗が実現できますか?
*また、対策として内壁側に防湿フィルムを貼る方法があるようですが、軸組み工法では柱などが邪魔して完全施工は難しく意味が無いという意見もありましたが、それでも張った方が無難でしょうか?
*知り合いの工務店の人に内側に防湿フィルムを張ると内部結露は防げるかもしれないが、室内に結露が発生するのでやめたほうがいいと言われましたが、ダクト式の24時間換気システムを常時運転してもダメなんでしょうか?
ちなみに居住しているのは山梨県で寒暖の差はありますが、割と乾燥している土地です。
以上教えて頂ければとても嬉しいです。
宜しくお願いします。
ゆうなおさん ( 山梨県 / 女性 / 37歳 )
回答:3件
ポイントは断熱材です
文面拝見しました。いろいろと調べられていて思いが伝わってきました。
まず結論から言うと、ロックルールの断熱材では壁内結露をする可能性が拭い去れないでしょう。なぜなら、ロックルールという素材自体が全く調湿作用が無いからです。また防湿フィルムも使い方がシビアです。本当に理解して使わないと、カビだらけになります。
24時間換気は必須です。
※24時間換気は法的に義務付けられているので当然必要ですが。
そういった意味でも合板が結露に関わるかというと、素材が木なのでロックルールの比ではないでしょう。逆に合板構造は耐震的にも面で支えるためしっかりしやすいのが特徴です。
壁内結露を防ぐには大きく2つの方法があります。
一つは調湿性の断熱材を選ぶ事、一つは内装に無垢の木や珪藻土などを活用するという方法。
調湿性のある断熱材としてはウール断熱とセルロースファイバーが代表的です。
HMで対応が可能かどうか?はありますが、一度話を出してみるのも手でしょう。
ちなみに乾燥している土地かどうか?ではなく、内外の温度差とその湿度を調整する機能がポイントになりますよ。
参考になりましたら
八納啓造 拝
評価・お礼
ゆうなおさん
早速の回答ありがとうございます。
調湿性のある断熱材を使うと良いのですね。勉強になりました。
予算の都合もありなかなか全て思い通りにできないのが現実ですが、現在の状況の中でベストな方法が見つかると良いと思います。
回答専門家
- 八納 啓造
- (建築家)
- 株式会社G proportion アーキテクツ 代表取締役
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構造用合板の仕様
軸組み工法において、筋交いに代わり構造用合板が使われ出したのは十数年ほど前とまだ新しい工法と記憶しております。
当時はツーバイフォーと軸組みの両方の良い面を持ち合わせたものとして、トステムのスーパーウォール工法とセキスイのシャーウッドが先駆者だったと思います。
私もトステム関連で構造用MDFを使用しておりましたが、断熱材はロックウールではなく発砲ポリウレタン仕様でした。これはツーバイフォーの弱点である壁体内結露によるロックウール腐敗防止と壁内空間を出来るだけ無くし気密性を高める効果として有効です。
(参考画像はトステムさんより)
断熱材をロックウールとし壁体内の通気を加味されるなら、合板仕様より筋交いにされたほうが無難かと思いますが、ご契約されるHMさんに開発時の実験資料やカタログなどあるかと思いますので再確認されてはいかがでしょうか。
ご参考まで
やすらぎ介護福祉設計 斎藤
評価・お礼
ゆうなおさん
回答ありがとうございます。
早速HMに問い合わせしています。
ありがとうございました。
回答専門家
- 齋藤 進一
- (埼玉県 / 建築家)
- やすらぎ介護福祉設計 代表
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野平 史彦
建築家
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合板と内部結露の問題について
ちょっと問題を整理して、お答えさせて頂きたいと思います。
まず、使用されるロックウールが袋詰めされているものであれば、部屋内側が防湿フィルム、外側が透湿フィルムになっているのが一般的かと思われます。このタイプのものは、柱・間柱間にセットして防湿フィルムのハネの部分を柱・間柱の上に重ねて留め、その上に石膏ボードで押さえつけることで気密層を形成しようというものです。これがきちんと施工できれば、構造用合板より防湿フィルムの透湿抵抗の方が遥かに大きいので、内部結露の心配は少ないと言えます。但し、それはあまり期待できません。
おっしゃる様に、室内側に改めて防湿フィルムを貼ればいいのですが、やはり完全に貼るのは無理があります。私は、かつて北海道の大学で高気密・高断熱工法の開発現場にいたのですが、当時はグラスウールを使い、やはり室内側の防湿フィルムをどうやったら上手く貼れるのか、ということが一番の問題で、結局、一番問題となる柱・梁の接合部に「先張りシート」を挟み込む、という方法で解決しました。これが今でも公庫の仕様となっていますが、高気密・高断熱を知らない本州の施工者では無理な話しかと思われます。
さて、防湿フィルムがあまり期待できないとして、内部結露の問題はどうなのか、ということになりますが、お調べになった様に、結露を防ぐには透湿抵抗は内壁側>外壁側、がセオリーです。
それは、簡単には、断熱材の外面を境に外壁を構成する材料の透湿抵抗の比で表す事ができます。この話しはちょっと難しいので,簡単に言いますと、
山梨県はIV地域ですので、透湿抵抗の内外比が2:1以上あれば、内部結露の心配は少ないと言えます。
それで、お宅の場合をちょっと計算してみますと、5.41:10.72 だいたい 0.5:1
ということになり、明らかに結露する、という結果になります(石膏ボード上の仕上げは考慮していません)。
(字数制限により追記)
補足
セルロースファイバーは、この内外比を1:1にできる優れものですが、構造用合板を用いているとやはり、条件をクリアできないので、結露の問題は解決されません。
では、どうするか、という話しになりますが、
構造用合板の透湿抵抗が大きすぎるので、これを透湿性があって面剛性のあるものに替えなければなりません。
値段も高くなってしまっては困るでしょうから、この条件に合うものは、
構造用MDFで、透湿抵抗が2.6(m2・h・mmHg/g)以下の製品を探してもらって下さい。
ダイライトやモイス、ケナフボードもいいですが、値段がちょっと高いでしょう。
合板の問題が解決されれば室内側の仕上げは何でも良いですが、透湿抵抗を高める方がより安全側になりますから、漆喰や珪藻土といった自然素材よりもビニルクロスを貼った方が、内部結露に対しては有利に働く事になります。
最後に、総論として、ロックウール55mmではいずれにしろさほど断熱効果は期待できませんが、壁の中に半分残った空気層で結露しては乾き、結露しては乾き、何とか25年〜30年もってきた典型的なこれまでの日本の住宅の姿がここにあるような気がします。25年も経てば施工者も瑕疵責任はありませんから、石油化学建材による湿気の抜けない家づくりがまかり通って来たのかもしれません。
最近流行っている「外張り断熱」も、実は充填断熱が難しいから、という施工者側も理由によるところが大きいのです。しかし、ここで丁度良いこの事例に見る様に、防湿しなくても室内の水蒸気が自然と抜け、かつ結露を起こさない断熱法が可能なのです。これを私は「透湿断熱工法」と呼び、高気密・高断熱後はこのような、より自然な断熱法に移行してゆくだろうと考え、実践しています。
さて、こうした現在の家づくりの問題については、木の家マニアの駆け込み寺で取り上げておりますので、参考にして頂ければ幸いです。
評価・お礼
ゆうなおさん
早速の回答ありがとうございます。
やはり合板の種類(材質)を考えなければならないという結論ですね。対応できるかメーカーに相談してみます。とても詳しく教えて頂きありがとうございました。
ゆうなおさん
詳しいご説明ありがとうございます。
2008/07/04 00:20大変詳しく教えて下さり、ありがとうございます。
壁内結露の観点からみると現在選択しようとしている工法には問題がありそうな事が良くわかりました。
しかし家族がとても気に入っており、この問題について相談しましたが、「結露の危険性にばかりこだわる必要があるのか?」と言われてしまいました。予算的な事もあり、外断熱などの別の選択は難しいかもしれません。現状でベストな方法を探したいですが、合板をMDFに替えられなかった場合、
*野平さんが計算してくださった抵抗数値ですが、防湿フィルム付きロックウール+石膏ボードは5.41という事ですが、これにビニールクロスを防湿層として合わせて考えるということはできますか?
*グラスウールを90mmに厚くして断熱性能を高めた場合何か影響はありますか?
もう合板をやめて筋かいにした方がいいかと思いましたが、家族が合板を貼って耐震性を高めたいと言うので、どちらを優先させるべきかわからなく、悩んでいます。
ゆうなおさん (山梨県/37歳/女性)
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