都立高校の推薦入試を受けるべきか? - 高校受験対策 - 専門家プロファイル

後藤 高浩
株式会社ジー・エス 代表取締役
東京都
塾講師

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大澤 眞知子
大澤 眞知子
(カナダ留学・クリティカルシンキング専門家)
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閲覧数順 2024年04月26日更新

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都立高校の推薦入試を受けるべきか?

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来春の都立高校の推薦入試は、今までに較べて受験者が減るはずです。今までは、(小論文を実施する一部のトップ校を除いて)ほとんどの高校で形だけの面接だけで受験ができたので、とりあえず願書出しとけという「なんちゃって受験組」が多かったのです。実質内申点だけで決まっていたので、合格の目安が分かりやすかったこともあります。結果として、都内の中3生の40%、都立高校志望者の60%が推薦入試を受験するという事態になっていました。
ところが、来春の入試からは、入試が2日間に渡って行われること、すべての高校で小論文(作文)と面接・集団討論が実施することになったため、とても負担が大きくなりました。当日の負担だけでなく、小論文や集団討論の対策にかなり時間と労力を取られるため、受験生たちは敬遠モードです。少なくとも、「とりあえず受けとけ的な層」はいなくなるので、受験者が大きく減ることは間違いないでしょう。本当にその高校への思い入れが強く、どんなことをしても合格したいという生徒たちの争いになることと、学力以外の多様な要素で入学者を決めるという、推薦入試本来の趣旨に見合った入試になるので、そう意味では都教委の思惑通りなのかもしれません。

しかし、私はちょっと違う見方をしています。今までを振り返ってみても、このような大きな改革が行われる初年度は、蓋を開けてみたら意外な展開になることが多いのです。みんなが敬遠するので、倍率はかなり下がるでしょうし(昨年までは人気校は4倍・5倍の競争率は当たり前だった)、内申点の比重が50%と下がり、小論文や面接・集団討論でも差をつけるようにするということは、しっかり準備した生徒は一発逆転が狙えるようになります。結果としては、あの子が受かるなら、自分もチャレンジしておけばよかった…というケースが出てくることも十分に考えられると思っています。
問題は、「しっかり準備すれば…」の部分なのですが、昨日も書いた通り、小論文と集団討論の対策は塾の(教師の)力量によって大きく左右されます。この2つの項目で入試の点数の半分の配点があるのです。しかも、差をつけると言っているのです。ここで勝たせなくては、推薦入試合格はあり得ません。
暴論かもしれませんが、初年度はきちんとした対策をしてくる生徒はそう多くないのです。(2年目からは情報も出回り、対策本も発売されたりするので、みんなそれなりに対策を立ててきます) だから私は、初年度は狙い目だと考えているわけです。

まず、正確な情報をきちんと収集することが重要です。その上で、この状況でも推薦入試にチャレンジするのかどうかを決めなくてはなりません。現実的には、11月末~12月頭の三者面談で、確定内申点が伝えられるので、その時点で判断することになります。内申点の比重が(下がったとは言っても)50%はあるので、全然内申が足りなければまず中学校の先生がウンと言わないでしょう。
内申点を踏まえた合格の可能性と、小論文・面接・集団討論の対策をどの程度やらなくてはならないのかを理解した上で、最終的には生徒本人が判断するべきです。昨年までとは違って、12月中旬までには最終結論を出して動き出さないと、対策が間に合いません。

推薦入試を受験するかどうかを検討するにあたり、もう1つ考えなくてはならないファクターがあります。
1月末(27~28日)に入試があり、合格発表が2月1日に行われます。そこで合格してしまえばもちろん(辞退はできないので)受験は終了になりますが、問題は不合格になった時です。いくら事前に「ダメモトだよ」と言い聞かせておいても、第一志望校の掲示板を見に行って自分の番号がないという経験はとても辛いので、ショックを受けて落ち込んでしまい、その後しばらく勉強が手につかなくなってしまうようなことが起こってしまうのです。私の経験だと、特に(普段は気の強い)女子生徒に多いですね。昨年まではほとんど内申点で決まっていたので、比較的割り切ることができたのですが、今回からは、小論文や面接・集団討論で学力以外の人物を見られる部分が大きくなっているので、もし内申がそこそこあるのに不合格だったりすると、自分の人間性を否定されたような気分になってしまう生徒も出てくるでしょう。実際、大学生の就職戦線では、不合格が続いて「うつ」になってしまったり、そのことが理由で自殺してしまう学生も増えてきています。
2月10日から私立高校の入試が始まりますし、23日の都立高校の一般入試に向けても、推薦入試不合格の影響が出る可能性がある生徒は、慎重に判断した方がいいのかもしれません。

また、推薦入試に不合格になった場合(特に小論文や面接・集団討論で変なことを書いたり、言ったりしてしまうと)、一般入試でも不利になってしまうと考える生徒もいるかもしれませんが、実際はそんなことは一切ありません。そこで失敗したことにより推薦入試の方で不合格にされることはありますが、一般入試の方は完全にリセットとなり、再度一からの勝負です。もちろん、推薦入試を受けたからと言って有利になることもありません。
結論としては、対策を本気でやって受かりに行くつもりがなければ推薦入試はやめた方がいいでしょう。ましてや本来志望する高校のレベルを落として受験するというのは、まったくナンセンです。受験する場合も、結果はあまり期待しないで、2月23日に一般受験をするつもりで準備を両方並行して進めるべきでしょう。推薦入試の対策をしているからといって、一般入試の勉強のペースを落とすのは最悪だと思います。だから、推薦入試を受験する生徒はとても負担が大きくなるのです。

推薦入試を受験する以上、もちろん我々としては合格させるつもりで対策を行います。前述した通り、生徒には「ダメもとだからな」と言い聞かせて進めますが、対策授業の最中は少しでも合格の確率を上げるために全力を尽くします。
しかし、例え不合格になったとしても、大きなメリットが2つあると私は考えています。(何度も言いますが、一般入試用の勉強のペースを落とさないという条件付きです)
1つ目は、一般入試に向けて予行練習ができることです。憧れの第一志望校で、一般入試と同じ校舎・建物で事前に一度緊張感を味わえるのです。このメリットは大きいでしょう。実際、毎年推薦入試不合格者は、一般入試ではあまり緊張せずに受験できる生徒が多いようです。(稀に、一度不合格の経験をしてしまったことにより、またダメだったらどうしよう…という不安が出てきてしまう生徒もいます) 特に本番で緊張してしまうことが不安な生徒は、一般入試の「場慣れ」的な考え方で、推薦入試にチャレンジしてみる手もあるということです。
2つ目は、ちょっと大局的な話になってしまいますが、高校入試の枠を越えて将来のことを見据えた時に、推薦入試を受験するメリットがあると感じるのです。大学の推薦入試やAO入試、さらにその後の就職試験において、小論文や面接・集団討論がとても重視されるようになってきています。最近は、筆記ペーパーテストよりも、こちらの方を重視しているところが多いくらいです。また社会に出てからも、文章をまともに書けない者、きちんと話ができない者、集団の中でコミュニケーションを取れない者は、とても損をすることが多いのです。(私も身近にそういう人をたくさん見てきました) その視点で考えた時に、中学生は小論文や面接・集団討論に真剣に取り組む機会がほとんどないので、高校入試の際に経験しておくことが、将来の役に立つのではないかと思うのです。私は、あまり中学受験を真剣に考えていないご家庭も、都立中の受験(受検)は前向きに検するべきだと考えていますが、これも同じ理由です。小5・小6という将来の学力の基礎を決定する時期に、小論文やプレゼン・グループワーク等に真剣に取り組んでおくことが、将来必ずプラスになると考えているからです。(私立中を受験する場合は、それとはまた別のメリットがあります)
推薦入試を受験しようかどうか迷っている生徒・保護者は、この2点も頭の隅に置いた上で検討してもらえるといいと思います。

中3生は、そろそろ最終結論を出さなくてはならない時期となりました。

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