- 大澤 眞知子
- Super World Club 代表
- カナダ留学・クリティカルシンキング専門家
対象:子供の教育・受験
「大学入試」を変えねば!
この国の若者に世界レベルの実力がついてない!
という大号令の元、主におじいさんやおじさん達がずら〜っとメンバーに顔を連ねた「改革会議」とやらの報道が最近多いです。
本日の日経新聞には「高大接続システム改革会議」の報道。
大学「新テスト」問題例が公表されたんだそうです。
記述式の問題です。
「知識や技能を踏まえた統合的な思考力・判断力・表現力を評価できる」問題が出来たんだそうです。
しかし。
大きな問題があるんだそうです。
「採点の公正性の確保と作問・採点に関する教員の負担増」
「質の高い問題を何年も作り続けることが可能か」
無理ですね。
「入試」自体を諦めるしかないと思います。
「大学入試」を変えねば!騒動をクリティカル・シンキングの基本から紐解いてみましょう。
STEP 1 : Define your terms. 問題になっていることを定義する。
What is “大学入試”?
「大学入試」とは、大学に入れる実力があるかどうかを選抜するテスト。 ですか?
もちろん大学で学問するためには、基本的な学力はもちろん、物事を論理的に分析出来る能力は必須です。
大学での学問は専門的な知識を探求し、社会でプロとして活用出来る能力・スキルをつける所です。
そのためには、「このなんちゃら会議」でも問題にしている「統合力な思考力・判断力・思考力」が絶対的に必要です。
早い話がクリティカル・シンキング能力が絶対必要です。
物事を「論理的、科学的、客観的、批判的に考え、分析し、判断する」のがクリティカル・シンキング思考法ですから。
「入試!」で図ること自体無理ではないですか?
STEP 2 : Ask questions? 「なぜ?」を考える。
「なぜ大学入試が必要ですか?」
大学に入るのに日本のような「一発!!」入試を行っている国は少ないです。
私が留学生を送っているカナダには入試はありません。
そこから考えてみましょうか。
「。。だって、選抜しないといけないから。。。」
その選抜方法は「入試」でないとダメですか?
高校の成績、卒業資格ではダメですか?
特に「統合的な思考力・判断力・表現力」能力を入試の基準にするのであれば、時間をかけた訓練と、長い期間の能力の観察と進歩の記録が絶対必要なはずです。
そんな能力を「入試」に入れようと思ったこと自体「教育改革」をやっているおじいさんやおじさん達にこそ「知識や技能を踏まえた統合的な思考力・判断力・表現力」が欠如しているようです。
この国のいわゆる「大学入試改革」の議論の中に、なぜ「入試止めよう!」が出てこないんでしょうかねぇ。
この国のいつもの習いで、「大学入試」で食べている人達がずいぶんいるんでしょうね。
憐れな子供たちを置き去りにした「誰が儲ける」式裏の世界がまずありきなのでしょうか。
大きな疑いがふつふつと湧いて来ます。
STEP 3 : Examine the evidence. 証拠を調べること。
世界に目を向けると。
世界的に教育レベルが高く注目されているフィンランド。
同じく高校卒業への試験があります。
クリティカル・シンキングの総おさらいと大学への準備が出来ているかを問うテストです。
合格すると大学に進めます。
大学のレベルが世界的にも高いカナダは入試はありません。
高校までの成績で大学が決まります。
高校卒業にはEnglish, Social Studies, Science, Math の主要科目で州の試験に合格する必要があります。
それまでに訓練して来たクリティカル・シンキングの能力を問われるテストです。
すべて合格した場合に大学に進学出来ます。
州の試験は不合格の場合は再挑戦(再々、再再再。。。。)が可能です。
カナダで仕事をして大きく感じたこと。
大学教育を受けている人とそうでない人のレベルの差がかなり大きいです。
それだけ大学教育が機能しているということだと思います。
大学に行く意義が目で見えるレベルです。
日本は?
みなさんの方がよくご存知ですよね。
なぜ「入試」にこだわりますか?
STEP 4 : Analyze your assumption. 思い込みしてないですか?
「なんちゃら会議」や政府のおじいさんやおじさんたちは、小さな小さな箱の中で、外を見もしないで子どもたちの未来を決めようとしていますね。
大きな「思い込み」に気がつかないで。
Cause & Effect 「原因と結果」もう一度おさらい。
「原因」 日本の大学生の質の低下
「結果」 だから「入試改革」なのかな?
じゃぁ、もうひとつ掘り下げて。
日本の大学生の質の低下の「原因」は?
「原因」 入試が悪い?
同じところを堂々めぐりしてしまいます。
そもそも「日本の大学の劣化」は教育全体の劣化の現れ。
「原因」 小学校・中学校・高校の教育が機能していない
「結果」 大学教育が機能していない。
入試を記述式にするだけで、日本の教育全体が機能するようになりますか?
塾で受験勉強して「知識や技能を踏まえた統合的な思考力・判断力・表現力」付けさせますか?
記述式問題を採点する人、また作成する人たちは「知識や技能を踏まえた統合的な思考力・判断力・表現力」を備えていますか?
機能していない日本の教育を受けた人たちなのに。
学校の教師は「知識や技能を踏まえた統合的な思考力・判断力・表現力」が子供たちに育つようプロセスを踏んで指導出来ますか?
同じく機能していない日本の教育を、いわばかなり従順に受けた人たちなのに。
ほらほら、入試改革どころの騒ぎではないと思います。
STEP 5 : Don’t oversimplify. 物事を単純化しないこと。
「知識や技能を踏まえた統合的な思考力・判断力・表現力」を作るのが日本の教育の目的であるならば、現在の教育制度をすべて解体してやり直すしか方法はないと思います。
「入試」を変えたら日本の教育はよくなる!
なんて、まさか考えていないでしょうね。
ALT(英語授業の補助をする外国人)を入れたら日本の生徒の英語力が上がる!
な〜んて Oversimplify した結果、多額の税金を投入して始まったプログラム。
「英語力上がりましたか?」
STEP 6 : Consider other interpretations. 違う見方をしてみること。
「入試」を変えると騒いでいるわけですから、今の「入試」はよくないと認めていることですよね。
それなら、いっその事廃止!
詰め込みの丸暗記受験勉強しなくてもいい!
学校行事が入試に左右される。。。なんて気の小さい悩みも一挙解決!
子どもたちも塾漬けから開放され、本当の勉強である「本」を読んで想像する時間が出来る!
「入試」を廃止したら教育現場は一挙に変わるはず。
大混乱も予想出来ますね。
まず教師達が右往左往ですか。
「覚えさせる」以外の指導をしたことないから。
しかし「入試」がなくなったら指導も変わらざるを得ないのは必至。
教師の質が前面に出て来てかなりの淘汰が始まるでしょうね。
それは子供たちにとって非常に望ましいこと。
日本の病巣でもある「受験塾」も消えるはず。
STEP 7 : Tolerate uncertainty. 不確実でも前に進むこと。
そんなぁ!
「入試」を廃止してうまくいく保証はあるんですか?!
「ないです。」
人間相手の実社会の事柄に100%保証出来ることなんてありません。
一番いいと思われることをやってみる。
これだけ。
うなくいかなかったらやり直す。
スピードも大切。
子供は毎日成長しているんですから。
今の悪い制度の犠牲になる子供をひとりでも減らしたいと思いませんか。
おじいさんやおじさんの会議なんてどん臭くで話にならない。
一番いいと思えることを実行し、実際に起こることに合わせて変化させながら進める。
「うまくいかなかったら?」
その時は、またクリティカル・シンキング のSTEPをたどり考えてやり直す。
定義し、なぜを考え、思い込みはなんだったかを分析し。
これがクリティカル・シンキングです。
これが「大学で学ぶ」のに必須の能力です。
「入試」止めれば?
このコラムの執筆専門家
- 大澤 眞知子
- (カナダ留学・クリティカルシンキング専門家)
- Super World Club 代表
カナダにいらっしゃい!
カナダ 在住。パンデミック後のNew Normal 留学をサポート。変わってしまった留学への強力な準備として UX English主催。[Essay Basics] [Critical Thinking] など。カナダから日本に向けての本格的オンライン留学準備レッスン・カナダクラブ運営。
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