- 宮本 陽
- And EM アンド・エム 代表
- 兵庫県
- カメラマン
対象:写真・ビデオ
- 宮本 陽
- (カメラマン)
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カルチャーカメラ教室よりフィードバック:単焦点レンズの魅力って何だろう?
【初めはWズームキットを購入するのが良いのでしょうか?】
初めて一眼レフカメラを購入する場合には、多くの方が「Wズームレンズキット」と呼ばれる、広角域と望遠域の2本のズームレンズがボディとセットになっている商品を入手されることが多いのではないでしょうか?「初めてだから...ワイドも望遠も一式楽しめるセットがいいよね!」という考え方でメーカーや販売店が初めからセットにして販売している商品です。
手探り状態の入門者であればこれを手に入れて、まずは何か撮ってみる...というプロセスを踏むのも一つの方法だと思います。ですが、カルチャーカメラ教室の門を叩き、人とは違った魅力的な写真が撮れるようになりたい!と考えていらしゃる方には以下のような選択肢もあります。
それは「50mm単焦点レンズを初めから入手する」方法です。Wズームに更に単焦点を追加するには予算的にも大変、ということであれば、Wズームではなく18mm-200mmなどの広範囲を1本でカバーする高倍率ズームと50mm単焦点、にしても良いでしょう。(尚、webでは「短焦点」の文字記述も多く見られますが、単一の焦点距離を持つレンズという意味ですので「単焦点」が本来の記述のように思われます。)
ズームレンズ自体はフィルム時代から存在し、画角(写真として写る範囲のこと)を自由に変化させることができるメリットがあります。現在ではケイタイカメラでもズームできるのは当たり前なので、単一の画角しか撮れない単焦点レンズはどこかネガティブな印象をお持ちになるかもしれません。ですが、むしろそれは反対で、侮れない高画質と無二の結果をもたらしてくれます。
【ズームが当たり前の今だからこそ単焦点を体験してみたい】
単焦点を体験するメリットとしては、以下のような内容が挙げられます。開放f値など、専門語句については教室ではお伝えさせていただくのですが、字数の限られたコラムでは説明の機会をあらためたく思います。
1.開放f値がズームに比べ小さく明るいため、ボケ表現に大変優れた効果が期待できる
2.開放f値が小さいため、絞り込むほどに画質向上が期待できる
3.技術的に完成しているため製造面でのコストダウンにより、安価に入手できるモデルが存在する
4.ズームの機能が必要とされないため、軽量・コンパクトなレンズになる
5.画角が固定なので、自分が動いて構図を決めるという感覚を体験することができる(但し装着するボディによっては画角が中望遠になる)
といった点があります。デメリットは上記項目のすべて反対になりますが、画角が変わらないこと以外にネガティブ要因は見当たりません。
【なぜ50mmなのでしょう?】
現在もっとも多く販売されている機種となる、APS-Cセンサーを搭載したモデルでは、焦点距離が約1.5倍~1.6倍相当の画角になるためフィルム換算で約80~85mm程度の範囲しか写りません。これでは中望遠の範疇になるので、フィルム換算で50mm前後になるようにするためには、逆算し35mmのレンズが必要なのでしょうか?-----この答えは"No"です。
今、体験しようとしているその目的は「50mm単焦点レンズが持つ特性を使うこと」であるので、35mmレンズが備える広角域の特性ではこれが実現しません。50mm単焦点レンズは、被写体と背景の距離の取り方次第で、望遠寄りのようなボケ具合や広角寄りの広がり感、強調感など、さまざまな表現要素を提供してくれるところに価値があります。昔から標準レンズと呼ばれる所以です。 35mmといった広角寄りのレンズでは、こうした特性を得にくいため、35mmではなく50mm単焦点を選択する訳です。但し、画角は装着するボディによって中望遠になる=本来の50mmの画角ではない、ことを知っておいてください。
【あまり語られない「絞り込みの効果」と勘違い】
少し難しいかもしれませんが、上記メリットの2.の項目。レンズは開放から絞り込むほど画質向上する特性があります(限界を超えて絞りすぎると逆に劣化することにも注意)。
画質向上とは、解像性能や滲み・収差といった、歪に類する要素を低減し改善する方向に変えることです。開放f5.6のレンズを開放で使った場合の画質と、開放f1.4のレンズをf5.6まで絞って(4段分)使った場合では、その写真のキレや空気感が大きく異なることを体感できるはずです。ピントが合っている部分は大変シャープで解像感に優れた再現をしてくれます。
また、待望の50mm/f1.4単焦点を入手され、f1.4だからいつも開放f1.4で撮っている...使いこなしが難しい!と仰る方もありましたが、それでは「ボケ過ぎ」「被写界深度が浅すぎ」「ピント位置が定まらない」という弊害に悩まされることになります。レンズは開放で使わなくてはならない、という決まりはどこにもありません。
単焦点レンズはピントの合っていない部分がボケ過ぎるから使いにくい、と仰る方も似たようなところに陥っている可能性があります。ズームはもともとf5.6あたりまでしか開かないのですから、単焦点でも同じようにf5.6まで絞れば、同じ焦点距離で比較する限り似たような被写界深度となり、同程度のボケ具合になるはずです。
いかがでしょうか。今回は少し難しい内容だったかもしれません。メーカー、モデルによっては、50mm/f1.8の単焦点レンズが9千円程度で入手できます。教室ではこうしたモデルを入手し、新たな世界を体験なさっている生徒さんもいらっしゃいます。是非チャレンジなさってみてください。
【2009年5月のblogもどうぞ】 http://and-em.com/blog/index.php?mode=res_view&no=2159
(次回コラムは、「手ブレ補正機能を過信しないようにしたい」を予定しています。お楽しみに。)
「メルマガ:平成のデジタルフォト通信」でも色々なお話をお伝えしています。
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