第2章 「カーキ色」は何色か? - 民事事件 - 専門家プロファイル

羽柴 駿
番町法律事務所 
東京都
弁護士

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対象:民事家事・生活トラブル

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第2章 「カーキ色」は何色か?

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連載「刑事法廷」
第2回

 その後、私はSの仲間に話を聞いてみましたが、どうやらSの言うことは事実のようで、店に残ったSが、何分も先に店を出た仲間の中に初めから入っていることはありえないことと思えました。Sの人相風体はM巡査の挙げた乙のそれと似てはいましたが、当時の学生としてはよくある格好だったので、私は誤認逮捕ではないかと考えました。私はこのような事情を検察官にも伝えましたが、聞き入れてもらえず、結局Sは公務執行妨害罪・傷害罪で起訴されました。
 
 東京地方裁判所での証人尋問において、M巡査はSが乙に間違いないと断言しました。その根拠は、Sが乙の特徴である肩章つき「カーキ色」の上着を着用していたこと、髪型が中央から分けた長髪であること、身長が165センチメートルくらいであること、人相が悪いこと等を挙げていました。とりわけ、上着の色については一貫して「カーキ色」であったと断言し、第3回公判において証言した際には、Sがたまたま持参していた上着をわざわざ指さして、そういう色だったとまで証言しました。
 この他に重要な証言となったのは、現場の商店の店主である目撃者Tのものでした。この証言は混乱しがちで不明確な部分が多いものであり、私及び一緒に弁護人をしていたA弁護士、裁判官、検察官も繰り返し問いただして正確な証言を求めようとしましたが、最後まで混乱は続きました。

(次回に続く)