世界金融危機−その全貌 その2 - ライフプラン・生涯設計 - 専門家プロファイル

山本 俊樹
インテグリティ株式会社 
ファイナンシャルプランナー

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閲覧数順 2024年04月22日更新

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世界金融危機−その全貌 その2

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やさしい経済の話し 世界金融危機

バブル崩壊の始まり


サブプライムローンがおかしいと思われ始めたのは、2007年2月のことである。アメリカのサブプライムローンで人気だったのが、当初2年間については金利を固定で低く押さえ、3年目以降28年間は変動金利になるというローン(2−28ハイブリッド変動金利ローン)であった。2003年、2004年に借り入れたローンが、その変動金利に移行するタイミングが、2006年、2007年と原油高などインフレ懸念の台頭からの相次ぐ利上げのタイミングとちょうど重なってきたのである。

そして、急にローン金利が跳ね上がり、返済できない人が急増し、ローンのデフォルト率が上昇、サブプライムローン関連の商品で、ついにUBS傘下のヘッジ・ファンドが多額の損失を計上し閉鎖に追い込まれたのである。

これをキッカケに、今までAAAを付与してきた格付け機関も証券化商品の格付けの見直しに入り、その結果、ムーディーズが5月に62の証券の格下げ見直しが発表された。その影響で、サブプライムローン証券化商品の価格が急落し、6月にはベアースターンズ傘下のヘッジ・ファンドが証拠金積み増しができずに破綻した。証拠金積み増しとは、ファンドは債券を担保に金融機関から借入を行っているが、その債券の価格が下がると担保価値が下がり、金融機関は追加の担保(証拠金)差し入れを要求する。今回の場合、ヘッジ・ファンドはその要求にこたえられなかったため、保有する債券をすぐに投売りするしか方法がなかったが、そうした場合のマーケットに及ぼす影響が余りにも大きかったために、ベアースターンズはやむなく全てを買い取ったのである。

危機の始まり


2007年の5~6月にかけて、格付け機関は次々に証券化商品の格下げを発表する。他方で、アメリカの住宅市場が急激に状況が悪化。住宅ローン業者の大手、カントリー・ファイナンシャルが減益を発表。
サブプライムローン証券化商品の格下げや価格急落の影響は、すぐに他の証券化商品に波及した。まず銀行が持っていたABCP(アセット・バックCP)プログラム(詳細後述)が機能しなくなった。CPの担保として何が入っているかわからないということで、ABCPの発行が困難になったのである。
一番初めに破綻したのが、アメリカではなくドイツであった。2007年7月ドイツのIKBという銀行の運営するABCPプログラムのCPが発行できなくなったのである。IKBはプログラムに対してローンを実行できず、破綻に追い込まれてしまった。結局、ドイツ政府が民間と共同で、35億ユーロ(約550億円)の救済を行なった。

このように、アメリカのサブプライムローンの問題が、アメリカではなく欧州でまず影響が出たということから、如何に証券化がグローバルに浸透しているかがわかる。つまり、リスクは全世界にばら撒かれているのである。

さて、ここまでは、まだマーケットにはそれほど深刻には受け取られていなかった。マーケットの衝撃を与えたのは、2007年8月9日の二つの出来事である。
一つ目は、フランスの大手BNPパリバ銀行が、3つの投資ファンドに対して、担保貸出を停止したのである。その理由としては、証券化商品の評価が不可能になったためと発表している。証券化商品に信用がなくなった瞬間である。この発表をキッカケに、銀行間の資金融通が完全に止まってしまった。銀行は多くの証券化商品を保有していたため、多額の損失が発生するとお互い思い始めたからである。

二つ目は、この事態を受けて、ECB(欧州中央銀行)が950億ユーロ(約15兆円)の資金を銀行間の貸出市場に投入したのである。続いて、アメリカのFRBも240億ドル(2.4兆円)を市場に投入し、銀行間の資金の融通を正常化させようとした。

これが危機の始まりである。
その後も格付け機関は、銀行のSIV(後述)や多くの証券化商品の格下げを実行していった。当然、証券化商品の価格は暴落することになる。

2007年中に格付け機関は次々と格下げを実施したが、RMBS(モーゲージ担保証券)格付け別の格下げした比率は、AAAの証券で、格下げされたのはわずか0.3%であったが、AAで5.4%、Aで12.5%、BBBで24.6%、BBは40.0%、Bは35.5%もの証券が格下げされている。格下げされたトランシェのうちで、82%がサブプライムローンを担保にしたものであった。
CDOの格付けで見てみると、AAAのうちなんと45.2%が格下げとなった。AAは54.5%、Aで58.9%、BBBは73.8%、Bで86.1%が格下げの対象となった。

これだけをみても、格付け機関が如何に想定していなかった状況が発生したか、また、如何に格付け判断基準が甘かったことかがわかる。