都市計画法に関する最高裁判例(平成元年以降) - 民事家事・生活トラブル全般 - 専門家プロファイル

村田 英幸
村田法律事務所 弁護士
東京都
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都市計画法に関する最高裁判例(平成元年以降)

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相続

都市計画法に関する最高裁判例(平成元年以降)

○違法性
 小田急線連続立体交差事業認可処分取消,事業認可処分取消請求事件
 平成18年11月2日  最高裁判所第一小法廷  判決
棄却、 民集 第60巻9号3249頁
【判示事項】
 都知事が行った都市高速鉄道に係る都市計画の変更が鉄道の構造として高架式を採用した点において裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法であるとはいえないとされた事例
【裁判要旨】
 都知事が都市高速鉄道に係る都市計画の変更を行うに際し鉄道の構造として高架式を採用した場合において,(1)都知事が,建設省の定めた連続立体交差事業調査要綱に基づく調査の結果を踏まえ,上記鉄道の構造について,高架式,高架式と地下式の併用,地下式の三つの方式を想定して事業費等の比較検討をした結果,高架式が優れていると評価し,周辺地域の環境に与える影響の点でも特段問題がないと判断したものであること,(2)上記の判断が,東京都環境影響評価条例(昭和55年東京都条例第96号。平成10年東京都条例第107号による改正前のもの)23条所定の環境影響評価書の内容に十分配慮し,環境の保全について適切な配慮をしたものであり,公害対策基本法19条に基づく公害防止計画にも適合するものであって,鉄道騒音に対して十分な考慮を欠くものであったとはいえないこと,(3)上記の比較検討において,取得済みの用地の取得費等を考慮せずに事業費を算定したことは,今後必要となる支出額を予測するものとして合理性を有するものであることなど判示の事情の下では,上記の都市計画の変更が鉄道の構造として高架式を採用した点において裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法であるということはできない。
【参照法条】
 都市計画法(平成4年法律第82号による改正前のもの)13条1項,都市計画法(平成4年法律第82号による改正前のもの)21条2項,都市計画法(平成11年法律第87号による改正前のもの)18条1項,公害対策基本法19条,東京都環境影響評価条例(昭和55年東京都条例第96号。平成10年東京都条例第107号による改正前のもの)23条


○違法性
事業認可処分取消請求事件
 平成18年09月04日 最高裁判所第二小法廷  判決
 破棄差戻し、  裁判集民事 第221号5頁
【判示事項】
 建設大臣が林業試験場の跡地を利用して設置される公園に関する都市計画を決定するに当たって上記試験場の樹木の保全のためには上記試験場の南門の位置に上記公園の南門を設けるのが望ましいという前提の下に南門と区道との接続部分として利用するため国有地ではなくこれに隣接する民有地を上記公園の区域に定めたことについて裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものということはできないとした原審の判断に違法があるとされた事例
【裁判要旨】
 建設大臣が,林業試験場の跡地を利用して設置される公園に関する都市計画を決定するに当たって,上記試験場には貴重な樹木が多くその保全のためには上記試験場の南門の位置に上記公園の南門を設けるのが望ましいという前提の下に,南門と区道との接続部分として利用するため,上記試験場と区道とに挟まれた土地のうち,国家公務員宿舎の敷地として利用されている国有地ではなく,これに隣接する民有地を上記公園の区域に定めたことについて,南門の位置を変更し上記民有地ではなく上記国有地を上記公園の用地として利用することにより上記試験場の樹木に悪影響が生ずるか,悪影響が生ずるとしてこれを樹木の植え替えなどによって回避するのは困難であるかなど,建設大臣の判断が合理性を欠くものであるかどうかを判断するに足りる具体的な事実を確定することなく,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものということはできないとした原審の判断には,違法がある。
【参照法条】
 旧都市計画法(昭和43年法律第100号による廃止前のもの)3条,都市計画法18条1項


○違法性
 建築物撤去等請求事件
 平成18年3月30日  最高裁判所第一小法廷  判決
 棄却、 民集 第60巻3号948頁
【判示事項】
 1 良好な景観の恵沢を享受する利益は法律上保護されるか
2 良好な景観の恵沢を享受する利益に対する違法な侵害に当たるといえるために必要な条件
3 直線状に延びた公道の街路樹と周囲の建物とが高さにおいて連続性を有し調和がとれた良好な景観を呈している地域において地上14階建ての建物を建築することが良好な景観の恵沢を享受する利益を違法に侵害する行為に当たるとはいえないとされた事例
【裁判要旨】
 1 良好な景観に近接する地域内に居住する者が有するその景観の恵沢を享受する利益は,法律上保護に値するものと解するのが相当である。
2 ある行為が良好な景観の恵沢を享受する利益に対する違法な侵害に当たるといえるためには,少なくとも,その侵害行為が,刑罰法規や行政法規の規制に違反するものであったり,公序良俗違反や権利の濫用に該当するものであるなど,侵害行為の態様や程度の面において社会的に容認された行為としての相当性を欠くことが求められる。
3 南北約1.2kmにわたり直線状に延びた「大学通り」と称される幅員の広い公道に沿って,約750mの範囲で街路樹と周囲の建物とが高さにおいて連続性を有し,調和がとれた良好な景観を呈している地域の南端にあって,建築基準法(平成14年法律第85号による改正前のもの)68条の2に基づく条例により建築物の高さが20m以下に制限されている地区内に地上14階建て(最高地点の高さ43.65m)の建物を建築する場合において,(1)上記建物は,同条例施行時には既に根切り工事をしている段階にあって,同法3条2項に規定する「現に建築の工事中の建築物」に当たり,上記条例による高さ制限の規制が及ばないこと,(2)その外観に周囲の景観の調和を乱すような点があるとは認め難いこと,(3)その他,その建築が,当時の刑罰法規や行政法規の規制に違反したり,公序良俗違反や権利の濫用に該当するなどの事情はうかがわれないことなど判示の事情の下では,上記建物の建築は,行為の態様その他の面において社会的に容認された行為としての相当性を欠くものではなく,上記の良好な景観に近接する地域内に居住する者が有するその景観の恵沢を享受する利益を違法に侵害する行為に当たるとはいえない。
【参照法条】
 (1~3につき)民法709条,憲法13条,景観法2条1項,東京都景観条例(平成9年東京都条例第89号)1条,国立市都市景観形成条例(平成10年国立市条例第1号)1条,都市計画法(平成12年法律第73号による改正前のもの)12条の4,都市計画法(平成12年法律第73号による改正前のもの)12条の5第3項,建築基準法(平成14年法律第85号による改正前のもの)68条の2,国立市地区計画の区域内における建築物の制限に関する条例(平成11年国立市条例第30号。平成12年国立市条例第26号による改正前のもの)7条(3につき)建築基準法(平成14年法律第85号による改正前のもの)3条2項


○補償請求権
市道区域決定処分取消等請求事件
 平成17年11月1日  最高裁判所第三小法廷  判決
 棄却 、 裁判集民事 第218号187頁
【判示事項】
 昭和13年に決定された都市計画に係る計画道路の区域内にその一部が含まれる土地に建築物の建築の制限が課せられることによる損失について憲法29条3項に基づく補償請求をすることができないとされた事例
【裁判要旨】
 昭和13年に旧都市計画法(昭和43年法律第100号による廃止前のもの)3条に基づき決定された都市計画に係る計画道路の区域内にその一部が含まれる土地が,当初は市街地建築物法の規定に基づき,後に建築基準法(昭和43年法律第101号による改正前のもの)44条2項に基づいて建築物の建築等の制限を課せられ,現に都市計画法53条に基づく建築物の建築の制限を受けているが,同法54条の基準による都道府県知事の許可を得て建築物を建築することや土地を処分することは可能であることなど原判示の事情の下においては,これらの制限を超える建築物の建築をして上記土地を含む一団の土地を使用することができないことによる損失について,その共有持分権者が直接憲法29条3項を根拠として補償請求をすることはできない。
【参照法条】
 都市計画法53条,旧都市計画法(昭和43年法律第100号による廃止前のもの)3条,市街地建築物法7条,市街地建築物法9条,市街地建築物法26条,市街地建築物法施行令30条,建築基準法(昭和43年法律第101号による改正前のもの)44条2項,憲法29条3項


 裁決取消請求事件
 平成14年10月24日  最高裁判所第一小法廷  判決
 破棄自判 、 民集 第56巻8号1903頁
【判示事項】
 行政処分が通知ではなく告示をもって画一的に告知される場合における行政不服審査法14条1項にいう「処分があったことを知った日」の意義
【裁判要旨】
 行政処分が個別の通知ではなく告示をもって多数の関係権利者等に画一的に告知される場合には,行政不服審査法14条1項にいう「処分があったことを知った日」とは,告示があった日をいう。
【参照法条】
 行政不服審査法14条1項,都市計画法(平成11年法律第87号による改正前のもの)59条1項,都市計画法(平成11年法律第87号による改正前のもの)62条1項


○訴えの利益
 開発行為許可処分取消等請求事件
 平成11年10月26日  最高裁判所第三小法廷  判決
 棄却 、 裁判集民事 第194号907頁
【判示事項】
 市街化区域内における開発行為に関する工事が完了し検査済証が交付されたが予定建築物についていまだ建築確認がされていない場合における開発許可の取消しを求める訴えの利益
【裁判要旨】
 市街化区域内にある土地を開発区域として都市計画法(平成四年法律第八二号による改正前のもの)二九条による許可を受けた開発行為に関する工事が完了し、当該工事の検査済証の交付がされた後においては、右開発区域内において予定された建築物についていまだ建築基準法六条に基づく確認がされていないとしても、右許可の取消しを求める訴えの利益は失われる。
【参照法条】
 行政事件訴訟法9条,都市計画法(平成4年法律第82号による改正前のもの)29条,建築基準法6条


○訴えの利益
開発許可処分等取消
 平成5年9月10日  最高裁判所第二小法廷  判決
 棄却 、 民集 第47巻7号4955頁
【判示事項】
 工事が完了し検査済証が交付された後における開発許可の取消しを求める訴えの利益
【裁判要旨】
 都市計画法29条による許可を受けた開発行為に関する工事が完了し、当該工事の検査済証の交付がされた後においては、右許可の取消しを求める訴えの利益は失われる。
【参照法条】
 行政事件訴訟法9条,都市計画法29条,都市計画法81条1項1号


○処分性
大阪都市計画事業等事業計画決定取消
 平成4年11月26日 最高裁判所第一小法廷  判決
 棄却 、 民集 第46巻8号2658頁
【判示事項】
 都市再開発法に基づく第二種市街地再開発事業の事業計画の決定と抗告訴訟の対象
【裁判要旨】
 都市再開発法51条1項、54条1項に基づき地方公共団体により定められ公告された第二種市街地再開発事業の事業計画の決定は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。
【参照法条】
 行政事件訴訟法3条2項,都市再開発法51条,都市再開発法54条1項