先月、埼玉県東松山市にある「原爆の図 丸木美術館」へ行ってきました。
この美術館のことはラジオ深夜便で知り、以前から訪れたかった美術館でした。
私が知ったのは昨年なのですがこの美術館が開館したのは1967年ということで、知らないということはおそろしいことだとあらためて思いました。
美術館の名前にある「丸木」というのは丸木位里(まるき いり 1901-1995)と丸木俊(まるき とし 1912-2000)の画家の夫妻のことです。
「原爆の図」はお二人の共同制作「原爆の図」という絵、絵というにはあまりにも大きな作品ですが。
ご夫妻がここにさえ来れば誰でも見ることができるようにという思いを込めて建てた美術館です。
当時、東京に住んでいた広島出身の位里が「広島に新型爆弾が落とされた」という知らせだけを聞き、すぐに現地へ向かいました。
そこで位里が見たのは何もない焼け野原。
その光景を目にしながら二人で救助活動を手伝いました。
目の当たりにした惨状や多くの被爆経験者の証言をもとに1950年に夫婦共同制作で「原爆の図」の第1部となる「幽霊」を発表しました。
以降、30年以上の歳月をかけて全15部の「原爆の図」を完成させました。
描かれている絵を見て最初に思ったことはその絵の大きさです。
横長の屏風に原爆投下直後の人々が描かれています。
屏風の大きさは縦1.8メートル、横7.2メートルあるそうです。
位里の技法である水墨を基に、油絵や絵本を多く手がけた俊のわずかに色を載せた絵が、見るものに強いメッセージを伝えてきます。
ご夫妻の強い信念と未来への警鐘を感じ取ることができました。
15作のタイトルは「第1部 幽霊」「第2部 火」「第3部 水」というように名づけられておりこの美術館には14部が展示されています。
「第15作 長崎」は長崎市原爆資料館が所蔵しています。
丸木美術館にはお二人の多くの作品が展示されています。
常設展の中には「南京大虐殺の図」「アウシュビッツの図」「水俣の図」「沖縄戦の図」の大作が展示されています。
これらの作品は「原爆の図」よりも大きな絵画ということもあり、絵の力に圧倒されました。
尚、「沖縄戦の図」の本物は沖縄の左喜眞美術館が所蔵しています。
展示されているお二人の作品だけではなくライフワークということ、生涯を懸けて成し遂げることの素晴らしさや尊さ、もちろん素晴らしいだけではなく苦しいことや辛いこともあります。
むしろそちらの方がはるかに多いでしょう。
私自身の生き方について、音楽への向き合い方についてを見直す機会となりました。
美術館は都幾川(ときがわ)のほとりにあり、晴れた日の眺めはたいへん美しいようです。
私が訪れたのは冬曇りで遠くの山々の風景は見られませんでしたが、川の流れや冬木立は趣がありました。
暖かくなりましたらぜひ訪れてみてはどうでしょうか。
◇原爆の図 丸木美術館◇
【住所】埼玉県東松山市下唐子1401
【電話】0493-22-3266
【URL】http://www.aya.or.jp/~marukimsn/
このコラムの執筆専門家
- 成澤 利幸
- (長野県 / 音楽家、打楽器奏者)
- 成澤打楽器音楽教室
音楽はみんなのもの
楽器の演奏は専門家からのちょっとしたアドバイスによりスムーズに上達したり音楽の奥深さに触れることがあります。ドラムやマリンバ、いろいろな打楽器のレッスンを通して皆さんのお力になれればと思います。
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