早わかり中国特許:第20回 分割出願 (第2回) - 特許・商標・著作権全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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早わかり中国特許:第20回 分割出願 (第2回)

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早わかり中国特許

~中国特許の基礎と中国特許最新情報~

第20回 分割出願 (第2回)

河野特許事務所 2013年2月12日 執筆者:弁理士 河野 英仁

(月刊ザ・ローヤーズ 2012年12月号掲載)

 

5.時期的要件

(1)知識産権局での継続時と登録後の一定期間

 出願人は、知識産権局から原出願に対して特許権を付与する旨の通知書を受領した日から2ヶ月の期間(即ち登録手続きの期限)の経過前までに分割出願を提出しなければならない(審査指南第1部分第1章5.1.1)。

 当該期限が満了した後は、原出願が拒絶、取り下げ、または原出願が取下げとみなされかつその権利を回復することができない場合、すなわち知識産権局への継続を終えた場合、分割出願を再び提出することができない。

 

(2)拒絶査定後の分割

 審査官により拒絶査定がなされた原出願に対して、出願人は拒絶査定を受領した日から3ヶ月以内に、復審請求の有無に拘わらず分割出願を提出することができる。復審請求の提出後および復審決定を不服とし、行政訴訟を提起している期間中でも、分割出願を提出することができる。

 

 ここで、拒絶審決を受けた場合、北京市第一中級人民法院に行政訴訟を3月以内に提起することができるが、分割出願の条件として行政訴訟の提起が必要であるか否かが問題となる。この点に関しては、行政訴訟の提起が可能な期間であれば、行政訴訟を提起することなく分割出願をすることができると解される。2006年審査指南改訂時における国家知識産権局の解説によれば、後の行政訴訟手続期間あるいは出願人が人民法院へ起訴することができる期間内においては、拒絶審決は未だ効力が発生していないことから、依然として分割出願を提出することができるというものである。参考図1は分割出願の可能な時期をまとめたものである。

 

  

特許出願係属中(拒絶確定、取り下げ後は不可、細則42条)

(1)特許権付与通知書を発する前

(2)特許権付与通知書受領後2月以内(細則54条)

(3)拒絶通知書受領後3月以内(復審請求期間内・・審判請求不要)

(4)復審請求手続き中

(5)復審委員会の拒絶決定に対する行政訴訟中

 

   参考図1 分割出願の可能な時期

 

(3)時期的要件違反

 分割出願の提出日が、上記要件に反する場合、方式審査において審査官は分割出願を未提出とみなす通知書を発行し案件終了の処理を行う。

 

(4)孫出願の分割時期

 出願人が分割出願した出願について更に分割出願を提出する場合、再度提出される分割出願の提出時間は、依然として原出願を基に審査される。すなわち、審査指南によれば、二次分割出願(孫出願)の出願日が上記の規定に合致しない場合、一次分割出願(子出願)が知識産権局に継続しているとしても分割出願をすることができない。

 

 ただし、一次分割出願(子出願)に単一性の欠陥があるため、出願人が審査官の審査意見に基づき再度分割出願をする場合は例外とされる。すなわち、審査官の指摘に従い、単一性要件違反を回避するために孫出願を行う場合、原出願(親出願)が知識産権局に継続していなくとも、分割出願を行うことができる。このような例外の場合、出願人は再度分割出願をすると同時に、単一性の欠陥が指摘された審査官による審査意見通知書または分割通知書のコピーを提出しなければならない。上記規定に合致した審査意見通知書または分割通知書のコピーを提出しなかった場合は、例外として取り扱うことができない。

 

 上記規定を満たさない場合、審査官は補正通知書を発行し、出願人に補正するよう通知する。期間が経過しても補正されない場合、審査官は取下げとみなす通知書を発行する。出願人が補正した後もなお規定に合致しない場合、審査官は分割出願を未提出とみなす通知書を発行し案件終了の処理を行う。

 

(5)事例紹介

 審査指南には、分割することができる期限は、親出願の特許付与通知後2ヵ月であり、子出願の特許付与通知後2ヵ月ではない旨規定されている。しかしながら、実施細則第54条第1項は、「国務院特許行政部門が特許権を付与する旨通知した後、出願人は通知を受領した日から2ヶ月以内に登録手続をしなければならない。」と規定するのみで、親出願を基礎とするか子出願を基礎とするかは明確に規定されていない。

 

 この論点は、費査爾徳事件[1]において争われた。北京市第一中級人民法院(以下、中級人民法院という)は、分割出願を設けた立法趣旨について出願人側及び社会公衆側双方の観点から検討した。出願人側からすれば,分割出願は、新たな請求項を提出する機会を付与するものである。一方、社会公衆側からすれば,分割出願は原出願の特許権保護範囲に属さない内容を、新たな請求項に転化するか,或いは、原特許の保護範囲をさらに一歩限定して新たな請求項を提出するものである。

 

 中級人民法院は、分割出願を行うことができる時期は、出願人の利益と社会公衆の利益との間のバランスを取らなければならないと述べた。その上で、孫分割出願の提出期限を子分割出願の特許付与日の日から起算するとすれば、出願人に無制限に分割出願を提出することを許すこととなり、社会公衆は原出願の公開範囲において特許の保護範囲を判断する術が無く、関連する権利を始終不確定な状態に置くこととなると述べた。そして、これは明らかに専利法の立法趣旨に反するとした。

 

 以上のことから中級人民法院は子出願の特許付与通知後を基準に判断すべきという原告の主張を退け、原出願(親出願)の特許付与通知後を基準に分割提出時期を判断した復審委員会の判断を支持する判決をなした。このように、審査指南及び判決の双方において分割提出時期が明確にされていることから、中国では日本との違いを適切に把握した上で権利取得を行う必要がある。

 

                                                                            以上



[1] 北京市第一中級人民法院2010年6月8日判決 (2010)一中知行初字第329号

 

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