中国商標判例紹介:中国における指定商品及び役務の類似範囲(第2回) - 特許・商標・著作権全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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中国商標判例紹介:中国における指定商品及び役務の類似範囲(第2回)

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中国商標判例紹介:中国における指定商品及び役務の類似範囲(第2回)

~区分表における類似範囲と係争時の類似範囲との相違~

河野特許事務所 2013年1月24日 執筆者:弁理士 河野 英仁

 

                          杭州啄木鳥靴業有限公司

                                                      再審請求人

                                  v.

              国家工商行政管理総局商標評審委員会、七好集団有限公司

                                                    再審被請求人

 

3.最高人民法院法院での争点

争点 《区分表》において非類似とされる商品及び役務を争議紛争時にどのように取り扱うか

 中国商標登録出願の審査においては《区分表》に基づいて指定商品及び役務の類否判断が行われる。しかしながら、商品及び役務の概念は日々変化しており、また出所混同防止及び取引秩序の維持を図るという商標法の趣旨に鑑みれば、《区分表》の類似群に固執することなく個別具体的な状況に応じて柔軟に対応する必要もある。本事件では《区分表》において非類似とされている商品及び役務を争議紛争時にどのように取り扱うかが争点となった。

 

 

4.最高人民法院法院の判断

結論:機械的に《区分表》をもって依拠してはならず,実際の要素,個別案件の状況を結合して類否を認定しなければならない

 

 最高人民法院は出所混同を防止することが商品の類否判断を行う上で重要となると述べた上で、権利付与を行う際には、商品の機能、用途、生産部門、販売チャンネル、消費者群等が同一あるいは比較的大きな関連性を有するか否かを考慮しなければならず,2つの商標の共存が容易に関連公衆に商品あるいはサービスは同一主体が提供するものと認識させるか否か,または、その提供者間に何らかの特定の関係があると認識させるか否かを考慮しなければならないと述べた。

 

 そして、本事件においては、争議商標の指定商品は靴、引用商標の指定商品は衣服等であり、2つの具体的な原料、用途等の方面においては一定の相違点があるが,2つの消費対象は同一であり,かつ、現在の商業環境下において,一業者が同時に衣服及び靴類の製品を生産しており,衣服及び靴は同一チャンネルを通じて販売されていると認定した。例えば同一の専門店、専門のディスプレイにて、これらの商品が、販売されることが散見される。

 

 同時に,争議商標と引用商標中の“鳥図形”は細部において若干の差異があるが,両者の基本的形態は同一であり、かつ引用商標は使用を通じて比較的高い知名度を有している。このような状況下においては,2つの商標が衣服及び靴類の商品上に共存するとすれば,容易に関連公衆に2つの商品が同一主体による提供するものと認識させ,または、その提供者間に特定の関係があると認識させることになる。以上の理由により、争議商標と引用商標は類似商品上の類似商標を構成すると結論づけた。

 

 また、《区分表》については審査登録の段階では統一性及び効率の面から、これを基礎として商標登録及び管理を行うことは,商標登録審査の規律に符合すると述べた。

 

 しかしながら,商品及びサービスに関する市場取引状況は絶え間なく変化しており,商品及びサービスの似関係は不変のものではない。また、商標の異議、争議は商標登録申請審査の制度とは異なり,特定の民事権益保護に関連しており、とりわけ訴訟過程に入った案件では,より個別案件の救済性を考慮しなければならない。

 

 最高人民法院は、《区分表》を用いて一致性及び安定性を擁護する立場を取り,実際の状況及び個別案件の特性を考慮しないとすれば,制度設置の目的及び機能に背くことになると述べた。そして商標異議、争議、行政訴訟及び侵害訴訟中において商品類似関係を判断する場合,機械的に、簡単に《区分表》をもって依拠または標準としてはならず,より実際の要素を考慮しなければならず,個別案件の状況を結合して認定しなければならないと判示した。

 

 最後に最高人民法院は、商品類似判断を行う際には、個別案件の状況を考慮するため、関連商品が類似するか否かは必ずしも絶対的なものでなく、また不変のものでもなく、異なる個別案件事情により異なる結論が出る可能性があるということを強調した。従って、本事件によっても《区分表》中の商品の類似関係に対する確定及び区分けに必然的に影響を与えるものではなく,人は申請登録時に依然として《区分表》に依拠でき、また、本事件のような個別具体的な認定によっても、既に登録された商標の権利安定性に影響を与えるものでもないと述べた。

 

 

5.結論

 最高人民法院は、北京市高級人民法院の判決に誤りが無いことから、被告の再審請求を却下した[1]。

 

 

6.コメント

 中国において商標登録を行っていたとしても、関連する指定商品または指定役務について第三者に登録される場合がある。全く無関係な指定商品または役務であれば問題ないが、関連する商品または将来的にビジネスを行う分野にて第三者に商標を登録されれば、出所混同が生じるほか、逆に商標権の侵害となりかねない。

 

 このような場合、中国商標法第31条[2]に基づく取り消し請求も考えられるが、中国本土における一定以上の使用実績が存在しない場合は、第三者の登録を取り消すことはできない。本事件では、登録商標に係る指定商品と、争議商標に係る指定商品とは区分表によれば非類似であるところ、実際の状況を考慮すれば出所混同が生じることから類似商品であると判断された。

 

 出願の場合は区分表に従う必要があるが、異議申し立て、争議、訴訟の段階においては本事件の如く区分表の類否基準を突破することができる場合がある。

 

 

判決 2011年7月12日

                                                                            以上



[1] 最高人民法院2011年7月12日 (2011)知行字第37号

[2] 中国商標法第31条 商標登録の出願は先に存在する他人の権利を侵害してはならない。他人が先に使用している一定の影響力のある商標を不正な手段で登録してはならない。

 

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