中国商標評審規則案のポイント~中国商標法改正に伴う評審規則改正~ - 特許・商標・著作権全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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中国商標評審規則案のポイント~中国商標法改正に伴う評審規則改正~

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中国商標評審規則案のポイント

~中国商標法改正に伴う評審規則改正~

2014年3月28日

河野特許事務所

弁理士 河野英仁

 

1.概要

 2014年2月10日中国国家工商総局は中国商標法及び実施条例の改正に伴う改正評審規則案を公表した。

 

 改正評審規則案は、改正後の商標法及び実施条例に適合するよう改められ、また審理をスムーズに進めることができるよう各種規定が改正された。現在規則案に対する意見が募集されている。意見提出期限は2014年3月11日である。

 

 評審規則は異議申立、拒絶査定に対する審判、不使用取消審判、そして新たに設立された無効宣告請求等、実務上重要な審判に関する手続を多数規定している。

 

 以下、日本企業が評審委員会に対し審判、無効宣告請求を行うにあたり重要な改正ポイントを解説する。

 

2.評審案件の明確化(評審規則第2条)

 中国商標法改正に伴い審判(復審)、異議、無効宣告及び取消の各制度がそれぞれ設けられた。これに対応して、評審規則第2条では評審委員会が受理する案件を明確化している。

 

 (二)号では、予備的査定され公告された商標について異議申立がなされ、商標局が異議申立を認め登録拒絶査定を行った場合に、審判を請求することができる旨規定している。なお、商標法改正により、商標局が異議申立を認めない旨の決定に対しては審判を請求することができなくなった(商標法第35条第2項)。この場合、(三)号に規定するように無効宣告請求を行う必要がある。

 

 商標法改正により無効宣告請求制度が新設されたため、無効宣告請求に関しては(三)号、取消決定に対する審判は(五)号にそれぞれ対応する規定が設けられた。(四)号は商標局自身が絶対的無効理由に関し無効宣告請求を行うことができるようになったため(商標法第44条第1項)、当該無効宣告決定に対する不服申立を認めたものである。

 

第2条 商標法及び実施条例の規定に基づき、国家工商行政管理総局商標評審委員会(以下「商標評審委員会」という)は、次の各号に掲げる商標評審案件を処理する。

(一)国家工商行政管理総局商標局(以下「商標局」という)の商標登録出願拒絶査定に不服があり、商標法第三十四条の規定に基づいて審判を請求する案件。

(二)商標局の登録拒絶査定に不服があり、商標法第三十五条第三項の規定に基づいて審判を請求する案件。

(三)登録済みの商標に対し、商標法第四十四条第一項、第四十五条第一項の規定に基づいて無効宣告を請求する案件。

(四)商標局の登録商標無効宣告決定に不服があり、商標法第四十四条第二項の規定に基づいて審判を請求する案件。

(五)商標局の登録商標取消決定又は不取消決定に不服があり、商標法第五十四条の規定に基づいて審判を請求する案件。

 

3.補正通知に対する応答期限の短縮

  評審規則第13条第(四)及び(五)では以下のとおり規定している。

 

第十三条 商標評審を請求するには、次の各号に掲げる条件を満たさなければなら

ない。

(四)規定に合致する請求書及び関連資料を法により提出すること

(五)明確な評審請求、事実、理由と法的根拠があること

 

 これらの要件に合致しないまたは実施条例に従い関係証明書類を提出していない場合、或いは、補正を要する場合、評審委員会から補正命令がなされる。改正案では補正命令を受け取った日から15日以内に補正しなければならないと規定されている。従来の30日から15日に短縮された点に注意すべきである。

 

 日本企業にとって15日という期間は非常に短く、公証及び認証手続が必要な場合等では間に合わない恐れがある。補正命令を受けた場合には速やかに対応することが必要となる。

 

第十七条 商標評審請求が本規則第十三条第(四)、(五)号に規定される条件のいずれかに合致しない、又は実施条例、本規則の規定にしたがって関係証明書類を提出していない、又は補正を要するその他の事情がある場合、商標評審委員会は請求人に補正通知を送付しなければならない。請求人は補正通知を受け取った日から15 日以内に補正しなければならない。

 

 同様に被請求人が提出した答弁書及び関係証拠書類に対し補正命令がなされた場合も補正通知を受け取った日から15日以内に補正しなければならない。従来の30日から短縮されている。

 

第22条 被請求人は答弁に参加するには、適法な主体資格を有していなければならない。

 商標評審答弁書及び関係証拠資料は、所定の書式と要求にしたがって記入、提示しなければならない。

 第二項の規定を満たさない又は補正を要するその他の事情がある場合、商標評審委員会は、被請求人に補正通知を出す。被請求人は、補正通知を受け取った日から15日以内に補正しなければならない。補正後も規定を満たさない又は法定期限内に補正しなかった場合、答弁しなかったとみなし、商標評審委員会の評審に影響を及ぼさない。

 

 

4.関係証拠資料の補充期間の短縮

 実務上は評審請求後に証拠書類を提出することが多い。特に異議申立により登録が認められなかった場合、拒絶査定を受けた場合等は法定期間内にとりあえず評審請求をおこない、追って証拠を補充することが多い。

 

 従来は証拠補充期間として3ヵ月が認められていたが、今回の改正により30日に短縮された。30日という期間は外国企業にとっては非常に短く、説得力のある証拠を収集しきれない恐れがある。今後は、評審請求にあわせて速やかに証拠収集作業に移ることが大事となる。

 

 また提出された証拠の副本は相手方当事者に送達されるが、当該当事者は副本受領後30日以内に尋問を行わなければならない。法改正前は当該期間に定めはなかったが、30日と明記された。

 

 副本受領後、翻訳を行い証拠の真実性・有効性を検証すると共に、尋問を行う必要があるが、翻訳期間などを考慮すると30日という期間は外国企業にとっては非常に短いといえる。

 

 今回の法改正により評審の審理期間が短縮されたため、当事者側の手続期間も併せて短縮されている。評審請求手続の際には今後はチームを組んで迅速に対応することが必要となる。

 

第二十三条 当事者は、評審請求を提出した後又は答弁した後に関係証拠資料を補充する必要がある場合、請求書又は答弁書にその旨を声明し、請求書又は答弁書を提出した日から30 日以内に一括して提出しなければならない。請求書又は答弁書にその旨を声明しなかった又は期限内に提出しなかった場合、証拠資料の補充を放棄したとみなす。ただし、期間満了後に提出した新しい事実により形成された証拠又はその他の正当な理由がある証拠については、尋問を経て、商標評審委員会はそれを採用することができる。

 当事者が法定期限内に提出した証拠資料については、相手当事者がいる場合、商標評審委員会はその証拠資料の副本を相手当事者に送達しなければならない。当事者は証拠資料の副本を受け取った日から30 日以内に尋問を行わなければならない。

 

5.商標が譲渡された場合の声明

 事業譲渡等により商標を譲渡する場合がある。評審手続中に譲渡または移転が行われた場合、譲受人または承継人は速やかに書面にて「関係主体の地位を受継ぐ」との声明を行う必要がある。そして譲受人または承継人が審理手続に参加する事となる。譲渡等が行われた場合の手続について規定が新設された(評審規則第26条)。

 

 ここで、書面により声明を行わない場合、請求人としての評審主体資格を失い、評審委員会は評審請求を却下または評審請求について結審する。例えば商標局の拒絶査定に対し審判請求を行っている際に、商標の譲渡人が声明を行わない場合、請求が却下されることとなる。

 

 ただし、評審案件の審理に影響を及ぼさない場合、書面にて声明を行わなくとも譲受人または承継人を当事者として、評審委員会は決定を下すことができる。例えば、商標権に対し無効宣告請求がなされており、評審審理中に商標権が移転されたものの、権利有効との判断をなす場合、声明が無くとも評審委員会は、譲受人を当事者として商標維持の審決を下すこととなる。

 

 今後は、評審手続中に権利の譲渡を行う場合、原則として書面にて声明を行う必要がある点に注意すべきである。

 

第26条 第二十六条 商標評審手続において、当事者の商標が譲渡、移転された場合、譲受人又は承継人は、速やかに書面にて「関係主体の地位を受継ぐ」と声明し、その後の評審手続に参加し、それ相応の評審結果に責任を持つ。

 書面にて声明しなかったが評審案件の審理に影響しない場合、商標評審委員会は、譲受人又は承継人を当事者として、決定又は裁定を下すことができる。書面にて声明しなかったことで請求人が評審主体資格を失った場合、商標評審委員会は本規則第十九条の規定に基づいて、評審請求を却下するか、又は本規定第三十条の規定に基づいて結審しなければならない。

 

6.差し戻し審の審理範囲

 行政訴訟により人民法院が評審委員会の審決を取り消す場合、差し戻し審(原文は「重審」)が行われる。今回の改正により、差し戻し審の審理範囲についての規定が新設された。差し戻し審においては、原審にて審理した事項に基づき再度審理が行われ、当事者が新たに提出した請求及び法的根拠は審理範囲に含まれない。例えば、無効宣告請求における差し戻し審において、新たな無効理由を当事者は主張することはできない。この場合、別途新たな無効宣告請求手続を行う必要がある。

 

 ただし、評審委員会は、案件の審理結果に影響しうる新たな証拠については当事者間の尋問を経て採用することができる

 

第35条 商標評審決定、裁定が人民法院の発効判決により取消された場合、商標評審委員会は、改めて合議体を結成して、速やかに審理し、差し戻し審の決定または裁定を下さなければならない。

 差し戻し審の手続において、商標評審委員会は、当事者が新たに提出した評審請求と法的根拠を差し戻し審の審理範囲に入れない。当事者が補充として提出した、案件の審理結果に影響しうる証拠を採用することができ、相手当事者がいる場合、尋問のために相手当事者に送達しなければならない。

 

7.証拠

 評審手続において提出することができる証拠の形態を明確化する改正がなされた。具体的には、中国行政訴訟法第31条と同じく書証、物証等が証拠に含まれる旨明確化している。

 

 また、近年では電子データ形態での利用、保存が主流となっていることから提出することができる証拠にも「電子データ」が含まれる旨明確化した。従って、過去の商標の使用状況を示す動画データ、PDFデータ等を証拠として提出することができる。ただし、デジタルデータであるためデータの生成時・保存日時・改竄の有無等が問題になる恐れがあるため、これらデジタルデータについては適宜公証を取得しておいた方が良い。

 

第三十六条 当事者は、その提出した評審請求の根拠となる事実又は相手側の評審請求に反駁する根拠となる事実について、証拠を提出してそれを証明する責任がある。

 証拠には、書証、物証、視聴覚資料、電子データ、証人証言、鑑定意見、当事者陳

述等を含む。

・・・

 

8.当事者から評審委員会への書類提出

 第51条は、当事者が評審委員会に各種書類を提出する場合の提出日の確定について規定している。特に郵便以外の宅配業者を利用した場合の提出日について議論があったことから実施条例案第9条と同じく評審委員会が業者から書類を受け取った日を提出日とする旨、明確化している。

 

 またインターネット等の電子文書方式で提出した場合は、評審委員会の電子システムが受け取った日が提出日となる。

 

第51条 当事者が商標評審委員会に提出した文書又は資料の提出日については、手交した場合、手交日を提出日とする。郵送した場合、差出しの消印の日付を提出日とする。消印の日付がはっきり見えない又は消印が無い場合、商標評審委員会が実際に受取った日を提出日とする。ただし、当事者が実際の消印の日付の証拠を提出できる場合、この限りではない。郵便局以外の宅配業者を通じて提出した場合、受け取った日を提出日とする。電子文書方式で提出した場合、商標評審委員会の電子システムが受け取った日を提出日とする。

 

9.評審委員会から当事者への書類送達

 今回の規則改正により評審委員会がインターネット等の電子的方式により送達した場合、送信日から、15日満了の日を以て送達したと推定される。評審委員会から当事者へ送信する場合は、送信後15日間である点で、受信日が提出日となる当事者から評審委員会への提出と相違する。

 

 一方、郵送の場合は、受け取った消印の日付が基準日となる。このように送達形態により基準日が相違するため期限管理には十分注意する必要がある。

 

第五十二条 商標評審委員会の各種書類は、郵送、手交、インターネット等電子的方式又はその他の方式によって当事者に送達することができる。当事者が商標代理組織に委託した場合、書類を商標代理組織に送達したのを、当事者に送達したとみなす。

 商標評審委員会が当事者に各種書類を送達する送達日については、インターネット等電子的方式により送達した場合、送信日より15 日満了をもって当事者に送達したと推定する。郵送した場合、当事者が受け取った消印の日付を基準日とする。消印の日付がはっきり見えない若しくは消印が無い場合、又は郵便物が郵便局から戻されなかった場合には、書類を発送した日より15 日満了をもって当事者に送達したとみなす。手交した場合、手交日を基準とする。上記方式により書類を送達することができない場合、公告をもって当事者に送達することができ、公告を発布した日より30日満了をもって当事者に送達したとみなす。

 

 評審規則は第3次改正商標法と同じく2014年5月1日より施行される(評審規則第57条)。

 

以上



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