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河野 英仁
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中国商標判例紹介:中国における指定商品及び役務の類似範囲(第1回)

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中国商標判例紹介:中国における指定商品及び役務の類似範囲(第1回)

~区分表における類似範囲と係争時の類似範囲との相違~

河野特許事務所 2013年1月22日 執筆者:弁理士 河野 英仁

 

                          杭州啄木鳥靴業有限公司

                                                      再審請求人

                                  v.

              国家工商行政管理総局商標評審委員会、七好集団有限公司

                                                    再審被請求人

 

1.概要

 中国へ商標登録出願を行う場合、国家工商行政管理総局商標局が発行する「類似商品及びサービス区分表」(以下、《区分表》という)に従って指定商品または指定役務を選択する必要がある。

 

 この中国の区分表はニース協定に基づくものであるが、日本のものとは大きく異なり、商品及び役務がより細分化されている。その他、中国独自の商品及び役務も含まれており、指定商品及び役務の選定に当たっては十分な注意が必要とされる。

 

 本事件では衣服の分野で著名な登録商標と類似する商標が第三者により、指定商品を靴とする範囲にて権利が付与された。評審委員会及び北京市第一中級人民法院は衣服と靴とが非類似商品であることから取り消しを認めなかった。最高人民法院は再審にて混同を生じる恐れがあることから類似商標に該当すると判断した。

 

 

2.背景

(1)登録商標の内容

 取り消しの対象となった杭州啄木鳥靴業有限公司(被告)の登録商標(以下、争議商標という)は2000年5月26日商標局に商標登録出願された。指定商品は第25類2507群の靴(短靴、長靴)である。商標は,黒色のキツツキであり、嘴の下部を緑色とするものである(参考図1)。商標局は争議商標について、2001年8月7日商標登録を行った。登録番号は1609312号である。

 

参考図1

 

(2)引用商標の内容

 七好集団有限公司(原告)は、被告の登録商標の取り消しを求めて、2004年2月3日評審委員会に裁定を請求した。原告が提出した引用商標は以下のとおりである。

 

 引用商標は七好公司(原告)が1993年1月3日に商標局へ第25類衣服商品を指定商品として申請し、“鳥図形+TUCANO”とする商標を登録したものである(参考図2参照)。商標局は1994年3月7日に登録し,登録番号は680928である。権利期間は2014年までである。

 

参考図2

 

(3)評審委員会の判断

 評審委員会は、争議商標は指定商品が靴であり、引用商標の指定商品は衣服等の商品であり、両商品が非類似であることから、争議商標の取り消しを認めなかった[1]。指定商品を非類似とすべく《区分表》に依拠した理由は以下のとおりである。

 

 《区分表》は商標主管機関が、世界知識産権組織が提供する《商標登録用商品及びサービス国際分類》を基礎としており、中国の長期の商標審査実務と国情とを併せて形成した商品及びサービスの類否を判断するための専門の規範文書である。区分表は公開性、一致性及び安定性という特徴を有する。当該区分表は類似商品の区分に対し本来商品の機能、用途、生産部門、販売チャンネル、販売対象等の要素を総合的に考慮して作成されたものである。商標の権利を確定する過程において類似商品判断基準の統一性を保つ必要がある。もとより,商品及びサービスの項目は更新され、市場取引状況も変化するため,類似商品及びサービスの類似関係は定まって動かないということはない。

 

 しかしながら,《区分表》の修正に対しては一定の過程を経て統一的に行い、かつ、公布しなければならず,判断基準の相対的安定性及び商標審查の公平秩序を確保することにより,商標申請人が申請登録時の混乱を避け,登録商標の権利安定を保障するものである。本案に関して言えば,争議商標は指定商品が靴であり、引用商標の指定商品は衣服、ネクタイ等の商品であり、製作する材料、生産加工技術、機能・用途、販売チャンネル等の方面において明確な区別があり,類似商品とはいえない。それゆえ争議商標及び引用商標は必ずしも同一種あるいは類似商品上での使用を構成する類似商標とはいえない。

 

 北京市第一中級人民法院は評審委員会の判断を支持する判決[2]をなしたが、北京市高級人民法院は逆に評審委員会及び北京市第一中級人民法院の判断を取り消す判決をなした[3]。

 

 北京市高級人民法院は争議商標と引用商標との両者の指定商品は同一類似群に属するとはいえないが、両者は共に着飾る類の商品であり,商品及び商品を生産する企業間の関連性は極めて強く、両指定商品を関連商品と認定した。そして、市場において共同で使用すれば容易に消費者にその商品に対する出所の混同、誤認を招くこととなるから、争議商標と引用商標は類似商標に該当し、中国商標法第28条[4]の規定に反すると結論づけた。

 

 被告はこれを不服として再審請求した。



[1] 商標評審委員会裁定 商評字(2009〕第2577号

[2] 北京市第一中級人民法院2009年12月31日判決 (2009)一中行初字第1068号

[3] 北京市高級人民法院2010年12月2日判決 (2010)高行終字第743号

[4]中国商標法第28条 登録出願にかかる商標が、この法律の関係規定を満たさない、又は他人の同一の商品又は類似の商品について既に登録され又は初歩審定を受けた商標と同一又は類似するときは、商標局は出願を拒絶し公告しない。

 

(第2回へ続く)

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