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河野 英仁
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中国特許判例紹介:中国における均等論侵害と間接侵害(第2回)

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中国特許判例紹介:中国における均等論侵害と間接侵害(第2回)

~中国企業が日本企業を間接侵害で訴えた事件~

河野特許事務所 2012年12月18日 執筆者:弁理士 河野 英仁

 

                              愛国者電子科技有限公司

                                                            原告

                                      v.

                               東芝(中国)有限公司、

                        東芝パソコンネットワーク(上海)有限公司、

                              百脳滙(西安)実業有限公司

                                                           被告

3.中級人民法院での争点

争点1:被告Cが販売する連接ケーブルが222特許請求項1の均等論上の侵害となるか否か

 被告Cが販売する連接ケーブルの構造は222特許の請求項1で規定する構造とは一部異なっていた。文言侵害は成立しないが、均等侵害が成立するか否かが問題となった。

 

争点2:被告Aが製造するパソコンが222特許請求項1の間接侵害となるか否か

 被告Aは問題となった連接ケーブルのインターフェースを有するパソコンを製造している。このような場合に、被告Aに間接侵害行為が成立するか否かが問題となった。

 

 

4.中級人民法院の判断

争点1:被告Cが販売する連接ケーブルは均等侵害に該当する。

 被告Cが販売する連接ケーブルの構成は以下のとおりである。

 

SATA連接器プラグであり,当該プラグは本体及び本体両端からそれぞれ延びる端子部和ケーブル部を含み,

端子部は端子搭載部及び複数の端子を含み、

端子は7つのデータ端子及び2つの電源端子を含み,両者は電気特性上隔離されており,かつ同一の端子搭載部上に分布しており、

ケーブル部は、端子に対し電性接続されるケーブルを含み,

端子搭載部は一つの絶縁本体と,絶縁本体を囲む一つの収容空間とを有し、

前記データ端子は絶縁体の内壁上側面にあり、電源端子は絶縁体の内壁下側面に設けられている。

 

 222特許の請求項1はデータ端子を絶縁体外壁上側面に設けている点で、内壁面側面にデータ端子を設けている被告Cの連接ケーブルとは相違する。従って、文言侵害は成立しない

 

 中級人民法院は続いて均等侵害の有無について検討した。均等論に関しては司法解釈[2009]第21 号第7条が以下のとおり規定している。

 

 人民法院は、権利侵害と訴えられた技術方案が特許権の技術的範囲に属するか否かを判断する際、権利者が主張する請求項に記載されている全ての技術的特徴を審査しなければならない。

 権利侵害と訴えられた技術方案が、請求項に記載されている全ての技術的特徴と同一または均等の技術的特徴を含んでいる場合、人民法院は権利侵害と訴えられた技術方案は特許権の技術的範囲に属すると認定しなければならない。権利侵害と訴えられた技術方案の技術的特徴が、請求項に記載されている全ての技術的特徴と比較して、請求項に記載されている一以上の技術的特徴を欠いている場合、または一以上の技術的特徴が同一でも均等でもない場合、人民法院は権利侵害と訴えられた技術方案は特許権の技術的範囲に属しないと認定しなければならない。

 

 また具体的な均等論の条件については、司法解釈[2001]第21号第17条第2項に以下のとおり規定されている。

 

 均等な特徴とは、記載された技術的特徴と基本的に相同する手段により、基本的に相同する機能を実現し、基本的に相同する効果をもたらし、且つ当該領域の普通の技術者が創造的な労働を経なくても連想できる特徴を指す。

 

 中級人民法院は、データ端子を絶縁本体の内壁上側面に設けることにより,実現する機能及び達成する効果は,データ端子を絶縁本体の外壁上側面に設けることと基本的に同一であり,また、当業者であれば、創造性労働を経ることなく容易に相当し得る手段であると判断し、均等侵害の成立を認めた。

 

争点2:被告Aが製造するパソコンは間接侵害に該当する。

 続いて、人民法院は侵害製品である連接ケーブルに対するインターフェースを有するパソコンについて、間接侵害が成立するか否かを検討した。

 

 被告Aが製造するL536型、L600D-09B型ポータブルコンピュータはSATAインターフェースを有している。当該インターフェースには端子搭載部及び複数の端子が設けられており、2つの電源端子及び2つのデータ端子が分布している。

 

 被告Cが販売する連接ケーブルを被告Aが製造販売するパソコンのインターフェースに接続することにより、外部電源がなくとも、パソコンとその他の周辺機器との間で、SATAプロトコルに基づくデータ伝送が実現される。すなわち、222特許の技術的範囲に属するSATA連接ケーブルは、この種のインターフェースを利用する場合においてのみ機能を実現することができる。

 

 被告Aは、原告が所有する222特許を明らかに知りながら、L536型、L600D-09B型パソコンに、侵害製品である連接ケーブルのプラグにマッチするインターフェースを設け、他人に222特許の効果を実施するよう誘導し、幇助している。以上のことから人民法院は被告Aには222特許の間接侵害が成立すると結論づけた。

 

 

5.結論

 中級人民法院は、被告が販売する連接ケーブルについて均等論上の侵害を認め、また当該連接ケーブルに接続されるパソコンの製造及び販売行為については間接侵害を認める判決をなした。

 

 

6.コメント

(1)間接侵害の適用

 侵害製品にのみ使用される製品の製造及び販売等の行為について間接侵害を認める判決がなされた。中国では間接侵害については専利法、実施細則及び司法解釈のいずれにおいても明記されていないが、数多くの事件で特許権侵害の成立を認める判断がなされている。

 

 北京市高級人民法院が公布した「特許権侵害判定における若干の問題に関する意見(試行)」[1](以下、北京高裁意見という)(2001年9月29日)には、間接侵害に関し以下のとおり述べている[2]。

 

「第73条 間接侵害とは、行為者が実施した行為は、特許権に対する直接侵害を構成しないが、他人に特許の実施を誘導、慫慂、教唆して直接的に侵害行為を起こし、行為者は、主観上、他人に特許権の侵害を誘導又は教唆する故意があり、客観上、他人による直接侵害行為の発生に必要な条件を提供している場合をいう。

第74条 間接侵害の対象は専用品に限り、通用品を含まない。専用品とは、他人の製品の実施のみに用いられるキー部品又は方法に係る特許の中間製品であって、他人の特許技術(製品又は方法)の一部の実施を構成し、他の用途がないものをいう。」

 

 本事件において原告は連接ケーブルのみならず、当該連接ケーブルに接続されるパソコンに対して、間接侵害を主張した。出願当時から「請求項1に記載の連接ケーブルに接続されるパソコン」とする請求項を作成しておけば、直接侵害を主張できたであろう。

 

(2)原告の訴訟戦略

 原告は複数の被告に対し警告後、速やかに権利行使している。最近では、警告後2ヵ月ほどで訴訟を提起するケースが多い。しかも、本事件において原告は、日本企業にとって訴訟対応しにくい西安の中級人民法院にて3被告を提訴している。中国民事訴訟法の規定によれば、特許権侵害訴訟の管轄権は、被告の所在地または権利侵害行為地の人民法院が有する(民事訴訟法第29条)。

 

 原告は、連接ケーブル及びパソコンを販売している西安の販売業者を共同被告として組み入れ、西安の中級人民法院にて戦略的に提訴したのである。

 

(3)特許調査及び競合他社特許対策の重要性

 愛国者の特許出願は2006年頃から増加し始め、2010年では137件もの特許出願を行っている。このように中国企業の出願件数が急増しており、また権利行使にも積極的であることから、中国にて製品を製造及び販売する場合には十分な他社特許調査が必要である。中国はプロパテントの方向へ向かっており、今後さらなる注意が必要である。

 

 また競合他社特許を発見した場合は、技術的範囲に属するか否かの分析、技術的範囲に属し、迂回が困難と判断した場合は、速やかに無効資料調査を行うべきである。中国では第三者名で無効宣告請求を行うことができることから、紛争が起こる前の早い段階で無効宣告請求を行うのも一つの手である。

 

判決 2011年9月

                                                                            以上



[1] 司法解釈ではないため、普遍的拘束力がなく、北京市の人民法院のみに対して指導的意義がある。

[2] 詳細については拙著(張嵩との共著)「中国特許民事訴訟概説」発明協会を参照されたい。

 

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