食品小売業及び不動産業を中心に事業を行ってきましたが、不動… - 民事事件 - 専門家プロファイル

東郷 弘純
東郷法律事務所 代表
東京都
弁護士

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対象:民事家事・生活トラブル

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食品小売業及び不動産業を中心に事業を行ってきましたが、不動…

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こんにちは、弁護士の東郷弘純です。
今日はよくあるご質問を事例形式で紹介致します。


Q:食品小売業及び不動産業を中心に事業を行ってきましたが、不動産業が振るわず、本業の食品小売業に専念して事業の立て直しを図りたいと思っています。会社全体では、営業赤字を計上していますが、食品小売業のみでみれば、営業黒字です。金融機関からの借入が大きく、利息の返済に苦しんでいます。食品小売業だけ分離して経営を立て直したいのですが、その際の注意点を教えてください。



A:

本件における事業再生の手法として、第二会社方式を適用する余地があります。第二会社方式とは、会社(旧会社)の優良事業部門を事業譲渡や会社分割によって切り離し、別会社(第二会社)に移転することで事業の継続を図ることをいいます。この主要な形態として、自主再建型とスポンサー型が挙げられます。


まず、自主再建型とは、旧会社から新会社に優良事業部門を移転する際、新会社は資産だけでなく旧会社の負債の過剰債務部分を除いた部分を承継する形になります。新会社は承継した負債について、その後の事業継続で上げた収益から返済していきます。新会社は旧会社から承継した負債のみ返済すればよく、承継しない旧会社の過剰債務部分については返済を免れます。したがって、実質的には債権をカットしたのと同様の効果が得られます。

旧会社から新会社への優良事業(本件の場合は食品小売業)の移転にあたっては、原則としては事業継続に不可欠な資産及び従業員全員を承継します。負債についても、金融機関の債務のみカットして、その他の債務はすべて新会社に承継する場合が多いです。したがって、この場合は負債をカットされる金融機関に対する十分な説明のもと理解を得ながら手続きを進める必要があります。

債権をカットされる金融機関にとって重要なのは、新会社への負債の承継額が適正であること、新会社の再生計画の実現可能性が高いことです。すなわち、事業の立て直しに必要最小限度の過剰債務がカットされて、カットされた後の債務については、新会社が再生計画に従って収益を上げ、返済されることが求められているということです。

では、どの程度、新会社は旧会社から債務を承継するのが妥当でしょうか。

もちろん個々のケースによって異なりますが、原則として第二会社方式を採用せずに直ちに会社を整理した場合に債権者に分配される配当額(清算価値)を上回る必要があります。なぜなら、清算価値より承継する債務額が低ければ、債権者にとっては第二会社方式などとらずに直ちに会社を清算した方が多くの弁済を受けることができるからです。清算価値より承継する債務額が低いことを前提とした再生計画では、債権をカットされる債権者は納得しません。

また、新事業部門の事業価値や新会社が将来にわたって獲得できるキャッシュ・フロー等を考慮して、承継する債務額を算出する必要があります。


次に、スポンサー型とは、優良事業部門の対価を支払えるスポンサーが存在する場合を指します。例えば、会社分割で優良事業部門を旧会社からスポンサー(第二会社)へ移転し、その分割の対価をスポンサーから現金やその株式で支払うようなケースがこれにあたります。原則として優良事業部門の移転にあたって、旧会社の債務は引き継がれません。通常、旧会社は特別清算で整理されますが、旧会社の債権者はスポンサーから支払われた対価から配当をうけることになります。

スポンサーが新会社を設立し、そこに旧会社から優良事業部門を移転することもあります。会社分割で優良事業部門を移転し、分割の対価として新会社の株式が交付された場合、旧会社は新会社の100%親会社になりますが、この株式全部を旧会社からスポンサーが有償取得すれば、新会社はスポンサーの100%子会社となり、旧会社は新会社の株式を譲渡した対価を受け取ることになります。

新会社は旧会社の債務を引き継がず、スポンサーの傘下で事業再生を目指すことになります。

以上のような流れになりますが、旧会社の優良事業部門の事業価値をどう評価するかが重要です。旧会社の債権者にとっては、優良企業部門を移転した際の対価(または新会社の株式を譲渡した時の対価)が配当を受ける唯一の原資となることが多いからです。不当な対価で優良事業部門が移転されるようなことになれば、旧会社の債権者は詐害行為取消権を行使したり、法人格否認の法理を主張したりして優良事業部門の移転を争ってくるおそれがありますし、旧会社の特別清算手続において債権者の同意が得られない可能性が高く、旧会社につき破産手続をとった場合も破産管財人から否認権を行使されるおそれがあります。このような事態を防ぐため、移転する優良事業部門等のデューデリジェンスを徹底し、債権者への十分な説明のもと理解を得ながら手続きを進める必要があります。





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