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対象:特許・商標・著作権
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米国特許判例紹介: 同一文言に対する権利範囲解釈の相違(第1回)
~同一文言に対し異なる解釈が成立するか否か~
河野特許事務所 2012年7月6日 執筆者:弁理士 河野 英仁
Digital-Vending Services International, LLC.
Plaintiff-Appellant,
v.
The University of Phoenix, Inc. et al.,
Defendants-Appellees.
1.概要
クレームの文言解釈にあっては、クレーム、明細書、図面及び審査経過等の内容が総合的に考慮される。クレーム中の特定の文言については、明細書を通して統一した意味内容で使用されるのが原則である。
本事件においては2つのカテゴリーの異なるクレームに同一の文言が使用されていた。アーキテクチャークレームには当該文言を限定する用語が付加されており、方法クレームには当該限定する用語が付加されていなかった。
CAFCはクレームの文言、明細書及び審査経過等を総合的に勘案し、アーキテクチャークレームについてなされた限定解釈を用いて、方法クレームに対しても同様の限定解釈を行った地裁の判断を覆す判決をなした。
2.背景
(1)特許発明の内容
Digital-Vending Service(以下、原告)は、U.S. Patent No. 6,282,573 (以下、573特許という)を所有している。573特許は、コンピュータネットワークを通じて配信されるコンテンツへのアクセスを制限する技術に関する。
573特許は、共有使用環境におけるコンテンツに対するアクセスを規制する方法及びコンピュータアーキテクチャーをクレームしている。参考図1はコンピュータアーキテクチャーの概要を示す説明図である。
参考図1に示す多層レベルコンピュータアーキテクチャーは登録サーバ108が属する層102、コンテンツサーバ110が属する層104、及び、クライアント114が属する層106を含む。アーキテクチャーは、コンテンツをコンテンツサーバ110に保持する。一方、登録サーバ108には、コンテンツを含ませないようにしている。
(2)訴訟の開始
原告はPhoenix、 Capella Education Company、及び Walden University, Inc.の3社が、573特許を侵害するとして、バージニア州連邦地方裁判所へ提訴した。Capella 及び Waldenの2社は原告と和解したが、Phoenix(以下、被告)は引き続き争った。地裁は、被告のイ号製品は特許を侵害しないとする略式判決をなした。原告はこれを不服としてCAFCへ控訴した。
3.CAFCでの争点
争点:同一特許のカテゴリーの異なるクレームに用いられる文言に対して、異なる解釈を行うことが可能か否か?
573特許のクレーム23-37はコンピュータアーキテクチャーのクレームであり、以下の限定がなされていた。
「各登録サーバはさらに、アーキテクチャーにより管理されるコンテンツを含まない」
すなわち、管理コンテンツはコンテンツサーバに記憶され、登録サーバは許可されていないユーザのアクセスを防止すべく、管理コンテンツを含まないことを特徴としている。
一方、573特許のクレーム1-12はカテゴリーの異なる方法クレームであり、「アーキテクチャーにより管理されるコンテンツを含まない」との限定はなされずに単に、「登録サーバ」と記載されている。
アーキテクチャークレーム23における登録サーバについての限定事項が、同様に方法クレーム1における登録サーバにも適用され、限定解釈されるか否かが問題となった。
(第2回へ続く)
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