- 杉浦 繁
- Atelier繁建築設計事務所 代表
- 愛知県
- 建築家
対象:住宅設計・構造
以前に何かで呼んだことがあるのですが・・
男の人は現在と未来を生きているのだそうで・・
女の人は現在と過去を生きているのだそうです。
だから、男女が出会い一緒になると・・
丁度良くなるらしいです。
何だか何となくなるほど!とも思えるような話でもあり・・
何言ってんの?みんながみんなそうではないっしょ!とも言いたくなるような話です。
そこでなのですが・・
人間とはちょっと違いますが・・
「家」というのは人が現在と未来を生きるための「物」である。
これは間違いありません。
今から建てるその家に過去住むことは決して出来ないのですから。
そこでの過去の思い出をたくさん作ることは出来ますが・・
ですから家を建てる時には今と明日を考えて建てなければなりません。
今こうしたい、そうしたい、というのはすぐにわかる。
自分の望みはすぐに思いつきます。
それをそのように作ってもらうようお願いするだけのこと・・
あるいは、そのようになっている家やマンションを探すだけのことです。
が・・
明日どうなる?
明日のためにどうする?
というのが難しい。
そこには、想像力という物が必要になってきます。
家を建てる時にはたいていの人は要望や希望が・・
そう・・
夢やあこがれが、いっぱいいっぱいある物です。
ああしてほしい・・
こうしてほしい・・
そうしてほしい・・
ああいうキッチンがいい・・
こういうお風呂にしたい・・
そういうデザインのイメージが・・
これは全て、今こうしたいという要望です。
そしてこれは、今出来た家でこのように住みたいということです。
要望というのはとても大事なことです。
この要望を言ってもらえないと我々はどのような家を建てたらいいのかわかりません。
考える元がないのです。
ま・・
この人の建てる家が欲しい!
って思って頼まれるのであれば、それが要望と言えなくもないのですが・・
我々からすると、要望のない家づくりほど怖い物はありません。
適当に考えて、それでいいよと言われて建てたりすると・・
出来上がってから気に入らないと言われることがとても多い!
そして、そう言われても・・
どうにも答えようがないのです。
だって、考える元になった要望が何もないのですから・・
こう言われたのでこうしていますよ・・
と、言えないのです。
そんな要望という物はたいていご主人よりも奥様の方がたくさんたくさん持っていらっしゃる物です。
たくさんの雑誌を山積みにしてたくさんのメモを持ってくるのはほとんどが奥様です。
奥様は女性ですから過去の経験から今をどう生きようかと考える人が多いからなのかもしれません。
では・・
明日はどうしましょうか?
明日は出来たこの家で何をしましょうか?
明日のために家を建てる・・
これはけっこう難しいことなのです。
まず・・
家族のことを考えてみましょう。
今・・
ご夫婦とお子さん2人の4人家族です。
そのお子さん・・
大学に行ったらもういないかな?
結婚したらホントに戻ってきませんよ?
そう思ってたら、今時のことすぐに孫を連れて戻ってくる?
かと思ったらいつまでたってもいい年になってもまだ家でごろごろしてるかも?
わかるわけがありません!
さ!
部屋数はいくつにしましょうか?
寝室と客間用の和室と子供部屋2室で4LDK・・
ほんとにそれでいいの?
そこまで考える?
必要なし!
その通りだと思います。
が・・
それでも考えておく必要はあるのです。
お子さんがたくさんいらっしゃる・・
だから子供部屋がたくさん必要!
・・ではない。
建物の大きさには限界があります、その中に小さな部屋をたくさんたくさん押し込めるてしまうと・・
後の家族構成などの変化に伴って改築しようにもどうにもならない。
後に壁を取ろうにも取れないのです。
そのためには壁を取れるように作っておく・・
あるいは大きな部屋を仕切って小さいたくさんの部屋にする・・
ことが必要です。
将来を正しく推察することは出来ませんが・・
想像して対応できるようにしておくことが大事です。
もっともっと考えておく必要のあることがあります。
それは・・
あなたの老後です。
人であるかぎり誰しも年を取ることは避けられない・・
あなたも年をとり・・
年を取ってからもそこに住むのです。
若いうちはなんともなかったことが年を取ると不都合になってきます。
やたら広い部屋は手をつくところがなくて不安になります。
格好いい階段やレベル差のある間取りは年を取ると苦痛でしかありません。
大きなキッチンは動く距離が大きすぎてしんどくなります。
トイレが遠いと行くだけで大変に。
若い頃には気にもしなかったちょっとした段差に足がひっかかります。
だからそんなことは一切やらない方がいい!
福祉系の方に聞くと、そうおっしゃる方もたくさんいらっしゃるようです・・
だけど・・
それって、逆に若いうちは元気なんだから不便に夢も希望もなしで生活すればいいってことなんですか?
な、わけがない。
それは違う・・
と思う・・
ではどうすればいいのか?
木造以外の建物の場合・・
廊下や便所の壁に手摺りを取り付ける、というのは・・
そう簡単なことではありません。
たぶん、お父さんのDIYでは無理でしょう。
手摺りを固定するための下地、つまりビスを止めるための固い部分がないからです。
あっても穴もあかない鉄骨やコンクリート、あるいはぺらぺらのビスなど効かない壁板やLGSの軸です。
そのため、手摺り1本取り付けるだけのために特殊な道具や材料を持った業者さんにお願いすることになります。
そう・・
今は手摺りはなくても、いつか手摺りが付けられるようにしておく!
いつかバリアフリーに出来るようにしておく!
いつか水廻りを変えられるようにしておく!
いつか、簡単に増改築が出来るように建物をたてておけばよいのです。
ただ、これは今は何の役にも立たないのです。
役に立たないことに・・
今は、やらなくても何の問題もないことに・・
お金が必要です。
だからみんなやりません。
【 このコラムはブログ記事をまとめた物です。詳しくはブログ「よもやま建築日記~家づくりの現場から~」をどうぞ。 】
Blog:よもやま建築日記~家づくりの現場から~
http://ameblo.jp/ateliershigeru/
Atelier繁建築設計事務所HP
http://homepage3.nifty.com/ateliershigeru/
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