カルテットとは四重奏、すなわち4人で演奏するアンサンブルのことです。この作品はある4人家族が紆余曲折を経ながらも音楽によってひとつの家族にまとまり合う、という映画です。もちろん音楽だけではなくその家族に関わる多くの人々とのかかわりも重要な要素になっています。
主人公は将来を有望視されたヴァイオリンの才能を持つ中学生の男の子。家族は父はピアノ、母はチェロを音楽大学で学んだ両親と、フルートを吹いていた高校生の姉の4人。「フルートを吹いていた」姉は才能のある弟にコンプレックスを持ち、周囲の期待が全て弟に注がれていると思い込んでいたため生活自体がドロップアウト気味になっていました。その姉はある出来事をきっかけに再びフルートの演奏を再開することに。父や母もそれぞれ問題を抱えていたのですが、気持ちがバラバラな状態で崩壊寸前だった家族が緩やかに心のアンサンブルを取り戻していく姿を描いた映画です。
この作品は千葉県浦安市の全面サポートの下、ロケのほとんどを浦安市で行いました。その浦安市、撮影準備を進めていたさ中に東日本大震災が発生し、市域の86パーセントが液状化被害を受けました。本作も制作が危ぶまれましたが、被災された市民を含め700人以上がエキストラとして参加したなど、多くの人々の復興を願う気持ちが映画に息を吹き込み、本年、上映を迎えました。本編では震災の被害については触れていませんが、映画制作の背景に多くの人々の熱い思いが込められていることを知ると感慨深いものがあります。
出演者について2題。1つめ、特別出演として東京交響楽団桂冠指揮者の秋山和慶さんが出演しています。日本を代表する指揮者界の重鎮の秋山さん、指揮だけでなく台詞もばっちりあります。
2つめに、主人公の姉役には今年大ブレイクが予想される剛力彩芽(ごうりき あやめ)さんが熱演しています。今年に入りテレビのCMで姿を見ることが多くなった彼女ですが、フルートを演奏するフォームやアンブシュアを見ていると「吹く真似」では無いような気が…。
昨年12月に浦安先行公開、今年1月から東京を皮切りに全国順次公開となっています。長野県内は長野ロキシーにて上映。お近くで上映の折にはぜひ映画館に足をお運び下さい。
★カルテット!
・浦安市市制30周年記念作品
・第7回ウラジオストク・ビエンナーレ オープニング招待作品
・第24回東京国際映画祭 特別招待作品
このコラムの執筆専門家
- 成澤 利幸
- (長野県 / 音楽家、打楽器奏者)
- 成澤打楽器音楽教室
音楽はみんなのもの
楽器の演奏は専門家からのちょっとしたアドバイスによりスムーズに上達したり音楽の奥深さに触れることがあります。ドラムやマリンバ、いろいろな打楽器のレッスンを通して皆さんのお力になれればと思います。
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