- 岡田 誠彦
- 東京都
- 税理士
対象:会社設立
ADめぐみ「タイトルにある『見せ金』ってなんでしょうか?」
D税理士「会社を設立するときに、会社を大きく見せようとして、無理をしてしまう経営者がいるんだ。本当は、自己資金が少ないのに、一時的に他から資金を用立てることで、多くの自己資金があると見せかける行為のことを言うよ。」
AD「つまり、資本金をなるべく大きく見せようとする・・・ということですね。」
D「そういうことになるね。資本金、つまり自己資金の額というのは、(このシリーズで後に解説していきますが、)融資の際に重要な要件となったり、(すでにこれまでの回で説明しましたが、)『資本金の額の大きさこそが会社の信用力』と考える人が現在でもいる。だから、無理をしてしまう経営者がでてくるんだ。」
AD「資本金の回でも私、強調しましたが、男も資本金も中身だと思います!無理をして資本金を大きくするなんて、意味がないと思うのですが・・」
D「意味がないどころか、その会社にとって良いことは何一つないよ。絶対にしてはいけない行為の一つとなる。たとえば、融資を受ける際に、もし「見せ金」が判明した場合、金融機関の信頼を失って融資が受けられないだけでなく、将来にわたっての融資の道も閉ざしてしまう可能性もあるんだ。言ってみれば、銀行を「だましている」ことになるからね。」
AD「資本金を会社のためにすぐに使いきってしまうことと意味は違うのですか?」
D「全く違うよ。たとえば資本金500万円があって、それをたとえば会社の運営のために1か月で使い果たしてしまう、これは『はじめに500万円という資金があった』からこそ可能な行為だよね。」
AD「そうですね。お金が実際になければ使うことはできません。」
D「ところが見せ金の場合は、たとえば、500万円のうち、本当は200万円しか自己資金がないのに、残り300万円を友人から一時的にお金を借りることで、500万円を通帳に用意し「資本金500万円」で会社を設立する。しかし、300万円は設立登記後すぐに返金してしまうから、実は、会社が実質的スタートを切る時点では200万円しか手元にないことになる。」
AD「そうか。やはり一時的な「見せるためだけのお金」だったというわけですね。そこには実態がない。」
D「そうだね。でも、意外と多くの経営者が「見せ金」をしてしまう現実もあるんだ。その行為の深刻な意味にあまり気づいていないのかもしれないね。だからこそ、こういった記事をもっともっと、新しく事業をはじめる人に向けて積極的に書いていかなければいけないと思う。」
AD「仮に、この行為をしてしまった場合、税務ではどう扱えばいいのですか?」
D「その分は、社長への貸付金として考えるしかないだろうね。社長が会社に対して「見せ金」分をきちんと返済する必要がある。もちろん、利息をつけてね。」
AD「設立時にあったはずの資本金を社長が勝手にプライベートで使ってしまったと考え、会社に返金する必要があると考えると分かりやすいかもしれませんね。」
D「資本金の額というのは、本来深く考えて設定するものなんだ。「手軽だから1円」だとか、「とりあえず○○円で」だとか「実力以上に大きくする」といった感じになってはいけないと私は考えているよ。私の事務所では新しく会社を設立する経営者の方に、資本金についての『適正額チェックシート』をつけてもらうことにしている。」
AD「資本金はまさに会社のスタート。はじめからつまづかないようにしたいものですね。」
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