- 杉浦 繁
- Atelier繁建築設計事務所 代表
- 愛知県
- 建築家
対象:住宅設計・構造
何かの専門誌で読んだ話なのですが・・
昨今は職人さんが極端に減っていて、実に困ったことになっているのだそうです。
大工さんとか板金屋さんとか左官屋さんとかが・・
私は設計の方の仕事なので、実工事で人の手配などをするわけではないので・・
あまり実際の所はわからないのですが。
確かに工務店さんなどからは、どこかに左官屋いませんか、造作屋さんはいませんか?
なんてよく聞きます。
この不景気なのに。
昔は職人さんっていうのはどこにでもいたものでした。
と言うか・・
建築の関係の現場業者さんというのは皆々全員が職人さんだったのです。
ですから・・
たとえば、今のように震災復興などに人手が取られても、現場から離れていた残った人がまたやるだけのことでした。
ところが・・
今は職人さんの数が少ないので、その人達がどこかに行ってしまうと・・
もう、お手上げ!
らしく・・
でも、震災復興をしないわけにはいかないので・・
てなことになって来ているようなのです。
なんでこんなことになったのでしょうか?
実は・・
職人さんの仕事というのは「腕」によって出来に差が出てきます。
当然、何十年もやってきた職人さんと、見習いの職人さんでは腕がまるで違うのです。
そして、高度成長期からのバブル期に、あまりの仕事量などから人手が足りなかったりスピードばかりをお金にまかせて求めたために、ろくに修行を積んでもいない半人前の職人さんが世にあふれ、出来の悪い建物や手抜きの建物が増えたらしい。
そのために、日本では建築の品質管理が強く求められるようになりました。
品確法とかPL法とか・・
そう、1軒1軒建っている場所の違う建築において・・
現場で品質管理をするのは難しいことなので、出来るだけ工場で作ってしまおう!
としたわけです。
このこと自体は悪いことではないと思うのですが・・
その面における品質管理は完璧に出来ますので。
ただ、このことが職人さんの働く場所をどんどん減らしてしまい・・
職人さんはみないなくなり・・
工場で働くようになってしまったのだそうです。
品質管理を求めるあまりに、職人さんの働く場をうばってしまい・・
次の世代の職人さんを育てることをしなくなってしまった・・
そして、残念なことに建築というのは車や家具と違って・・
全部が全部を工場でつくることは出来ません。
だって、そこに建てるのですから・・
家丸ごと地面から持ってくることは出来ないのです。
間違っている方が多いようなのですが・・
工場で作って持ってくる建物というものを建てているのは・・
職人さんではありません。
いえいえ・・
大きな意味ではもちろん職人さんではあるのですが・・
ここで言っている、手に特別な技能を持つ職人さんではありません。
彼らは大工さんではないのです。
最近は家具屋さんで家具を買うと、完成した物を持ってきてくれる、なんてのは少なくなってきました。
部品や部材だけを自分で持って帰ってきて自分で組み立てる、組み立て家具ってやつですか。
そうすることで、組み立て費用も運送費もいらなくなり安価に家具を買うことが出来るわけです。
実は、工場せ作ってきた家はこれと同じようなもんです。
ただ、家は家具ではないだけのこと。
言ってみれば、現場ではなく工場に職人さんに近い人はいるのです。
工場で造った部品を現場で組み立てる・・
つまり、そんな技術などなくても誰でも組み立てられるようしたから品質が確保される。
説明書を読めば、誰でも出来ることをやっている人は職人さんではありません。
一人前の職人さんになるのには技術が必要です。
長年の修行と経験が必要です。
若い者には、指導する人が必要です。
うまい人だろうが、下手な人だろうが、初めてのやつだろうが、やる気のないやつだろうが・・
誰がやっても同じ品質になる・・
そこに意味があったのですから。
昨今、そういった工場で作った建築もだんだんと古くなってきました。
壊れたり古くなったら建て直せばいい、というわけには当然いきません。
そこで、直したり修繕したり、リフォームしたり増改築したりする必要がたくさん出てきました。
今までは修繕が多かったのは、昔に大工さんや工務店さんが建てた建物だった・・
ですから、また作った人が大工さんや工務店さんが直せばすむことだった。
ところが、内装などのリフォームはとにかく・・
工場で作った建物は直せないのです。
家具や家電と違って、建物というのは何十年も建っています。
30年前に工場で作った建物は・・
とっくの昔に部品がない。
1軒だけのために同じ物は工場では出来ない・・
そこで、直すために必要とされるのが・・
職人さんです。
1つ1つ手で造り直すことの出来る職人さん。
今、職人さんの必要性が大きく叫ばれるようになってきました。
今更、とも思うのですが・・
ものつくり大学などを作って職人さんを育てようとしていますが・・
そもそも、昔はそんな学校などなくても、そこらじゅうに師匠がいたのに。
なんだかな・・
考えちゃいます。
という話でした。
【 このコラムはブログ記事をまとめた物です。詳しくはブログ「よもやま建築日記~家づくりの現場から~」をどうぞ。 】
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