米国改正特許法逐条解説(第1回) - 特許・商標・著作権全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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米国改正特許法逐条解説(第1回)

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米国改正特許法逐条解説(第1回)

~第1回 先発明主義から先願主義へ~

河野特許事務所 2011年11月22日 執筆者:弁理士  河野 英仁

 

1.概要

 2011年9月16日オバマ大統領の米特許法改革法案「America Invents Act」への署名に伴い、約半世紀ぶりに米国特許法が大改正されることとなった。改正内容は先発明主義から先願主義への移行、及び、特許付与後レビュー制度の導入等を含め非常に多岐にわたり、全部で37項目にも及ぶ。

 

 とりわけ重要なのが先発明主義から先願主義へ移行したことに伴う、新規性及び非自明性に関連する規定の改正である。第1回では日本企業が米国へ特許出願を行い、権利化を図る場合に、特に注意すべき改正事項(先願主義への移行、ベストモード要件、特許表示)をピックアップして説明する。なお、第2回では、付与後レビュー、当事者系レビュー、追加審査、情報提供、及び先使用権等について説明する。

 

2.先願主義への移行

 先願主義への移行に伴い、新規性(米国特許法第102条)及び非自明性(日本でいう進歩性:米国特許法第103条)の判断基準が発明日ではなく、出願日となる。ここで判断基準となる出願日は、「有効出願日effective filing date」であり、米国にて特許または出願された最先の現実出願日、または、最先の外国・PCT出願に係る優先日である(米国特許法第100条(i)[1])。

 

(1)米国特許法第102条(新規性)の改正

 米国特許制度を理解する上で困難であった先発明主義に基づく米国特許法第102条(a)~(f)の規定が大幅に改正され、新たに先願主義をベースとする米国特許法第102条(a)、102条(b)、102条(d)が新設された。また米国特許法第102条(g)(先発明を決定するインターフェアランス)は削除された。以下、重要な改正点に着目して解説する。

 

(i)米国特許法第102条(a)

改正前

改正後

第102 条 特許要件;新規性及び特許を受ける権利の喪失

次の各項の一 に該当するときを除き,人は特許を受ける権利を有するものとする。

(a) その発明が,当該特許出願人による発明の前に,合衆国において他人に知られ若しくは使用されたか,又は合衆国若しくは外国において特許を受けたか若しくは刊行物に記載された場合,

第102 条 特許要件;新規性及び特許を受ける権利の喪失

次の各項の一 に該当するときを除き,人は特許を受ける権利を有するものとする。(1)クレームされた発明が、有効出願日前に特許されるか、刊行物に記載されるか、または、公然使用、販売、その他公衆に対し利用可能となった場合

(2)クレームされた発明が米国特許法第151(特許の発行)の規定に基づき登録された特許に記載されるか、または、米国特許法第122(b)(特許出願の公開)の規定に基づき公開された出願に記載されており、当該特許または出願が、場合によっては、他の発明者を挙げており、かつ、クレームされた発明の有効出願日前に有効に出願されている場合

 

 改正米国特許法第102条(a)では新規性の判断基準が発明日から有効出願日へと改正された。また改正前は公知・公用は米国内に限定されていたが、改正により米国のみならず世界中で公然使用、販売、その他公衆に対し利用可能となった場合も、新規性なしと判断されることとなった。

 

 改正米国特許法第102条(a)(2)は、日本国特許法第29条の2に規定する、所謂拡大先願の地位について規定している。すなわち、未公開の先願が特許または公開された場合に、後願の新規性を否定するものである。ただし、先願と後願との発明者が一致する場合は、米国特許法第102条(a)(2)に基づき新規性を否定されない。


[1] 米国特許法第100条(i)の規定は以下のとおり

(i)(1) The term ‘effective filing date’ for a claimed invention in a patent or application for patent means--

 

‘(A) if subparagraph (B) does not apply, the actual filing date of the patent or the application for the patent containing a claim to the invention; or

 

‘(B) the filing date of the earliest application for which the patent or application is entitled, as to such invention, to a right of priority under section 119, 365(a), or 365(b) or to the benefit of an earlier filing date under section 120, 121, or 365(c).

(第2回へ続く)

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